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対抗戦 その2

すみません短いです

 ヴィロナ視点


 トウヤ・ロローシュという少年と別れてから少し。いよいよ私たちの初戦が始まろうとしていた。


 いつも身に付けていた聖剣は無い。だけどそれを不安には思わなかった。


 使い魔を呼び出すのは魔力は当然として、時間もかかる。それは相手の技量によって消費魔力量を抑えたり、呼び出す時間を短縮することだって出来る。しかし今回の相手はただの学生。同レベルの相手だったらまだしも、仮にも勇者パーティの私たちに勝つことは相当難しい。


 試合開始の合図からすぐさま耐久力上昇が付与された剣をいつでも抜けるように準備しながら飛び出した。


 使い魔を呼び出す必要は無い。最初から呼び出しておけるのならともかく、試合が始まっているのに、みんながみんな動かないのは悪手過ぎる。


 私は同じタイミングで飛び出していたハロフィムとアイコンタクトを取り頷き合うと相手チームの前衛であろう生徒をスルーして使い魔を呼ぼうとしている生徒に向けて振り下ろした。


 当然のように走りながら剣に雷属性を付与した一撃は魔法の障壁(マジックバリア)に大ダメージを与える。


 私たちが勇者パーティなのは対抗戦の選手や観客にとってはもはや周知の事実。だからなのだろう。今の攻撃をもろに受けても尚、相手の魔法の障壁(マジックバリア)はまだ残っている。


 一方、ハロフィムが攻撃した生徒の魔法の障壁(マジックバリア)は粉々に砕け散っている。


 いくらハロフィムが剣聖だからって私とそんなに攻撃力は変わらないはず。単なる相手の魔力量が違っただけ?


 魔法の障壁(マジックバリア)は試合の直前に注ぐことになっている。魔力を分け与えるのが不可能とは言わないけれど、仮にそうだとすれば、事前に打ち合わせでもしていたのだろう。


 一撃を防いだ生徒はギリギリ使い魔を呼び出すことに成功していた。


 彼女と私の間に現れたのは天井に届きそうな程大きな金属製のゴーレム。これが彼女たちが稼いだ時間で呼び出した言わば切り札的な存在なのだろう。


 私とゴーレムが相対していると、私とハロフィムが無視した前衛であろう生徒がユティナスとウィレムア目掛けて突っ込んでいた。


 ユティナスは既に自身とハロフィムを覆う結界を展開しており相手は近づくことさえ出来ていない。そこにハロフィムが火の1級魔法──燃えたぎる結晶(フレアプリズム)を放ち2人同時に倒す。


 もはや相手になっていない。その後すぐにゴーレムを退けるとたった1人になった女子生徒は降参し、私たちは初戦を勝利で飾った。



「なんだかあっという間だったねぇ」


 ハロフィムの言う通り初戦はほんの十数分で終わってしまった。警戒されていたとはいえ、何か対策することと言えば先ほどの彼女たち同様、守りを固めて使い魔を呼び出し、数的優位を作る程度のものしかない。私たちの戦闘データなんて聖剣や文字級の魔法ありきなのだから対策と言っても難しいので当然と言えば当然か。


「でも、多分だけど初戦が次のチームだったら負けてたかもしれないわよ?」


 普通に速攻を仕掛ければ終わりかねない対抗戦のルールは私たちからすれば使い魔を呼び出すなんて時間の無駄でしか無い。しかし、次の試合は去年優勝したラティアスという人物がいるチーム。それもお飾りではなく、エースだと言うのだから相当強いに違いない。


「……最初から最強が来るなら本気で挑んだとは思うけど、慢心だったのはその通り」

「なら、次の試合からは本気で行くためにもまずは休憩しましょう?」


 ウィレムアが反省するべきことを言うとユティナスが控え室に戻るように促した。


 控え室に戻って他の試合を観戦する。もしかしたら明日か明後日にでも対戦するチームがいるかもしれないのと暇潰しになるだろうということでボーッと観ている。


 自分たちのところが既に終わっているのは当然として、他にも暗転している組み合わせがあった。


 そう言えば、トウヤも今頃試合だったはずだけど……。


 食堂で聞いたことを思い出して彼の姿を探す。しかし、画面に映るのは女子生徒と多種多様な使い魔のみ。彼と一緒にいたチームメイトすら見当たらない。


 もう終わったのかしら?あんな見た目しても強いのね。


 いや、もしかしたら逆かもしれない。彼は私たちのことをお姉さん方と言っていた。私たちの年齢を知ってなお、そう言ったのなら彼は飛び級していることになる。明らかに背が低いのでそう言うことなら納得できた。


「トウヤって子いないね」


 ハロフィムも私と一緒で彼を探していたようだった。彼が話しかけてくるまでの会話を知らなくてもあの時間に昼食を取っていたことで今頃試合を行っていると思ったのだろう。いや、普通に聞いていたのかもしれないけど。


「……そう言えば見てない。てっきり同じ時間に試合だと思っていたけど」


 ウィレムアが軽く画面を探してからそう言った。


「もう終わったのでしょうね。結果は分かりませんが、きっと勝利してるはずです」

「確かにそうだね、多分だけどあの子強いもん」


 ユティナスの言葉にハロフィムが賛同する。


「分かるの?」

「なんとなくね。佇まいと言うか、雰囲気がそんな感じだった」


 分かる気がする。私がちょっと見ただけでも気づかれたし、何よりも試合前でもあまり緊張していたように見えなかった。負けてもいいと思って参加するようなイベントではないので、ハロフィムの言うとおり強いのだろう。これで1つ楽しみが増えた。


「でもまぁ今は次の試合に集中しないとだね」


 もはやこの対抗戦の目玉と言っても過言ではない組み合わせ。各ブロックにそれぞれの学院のチームが1チームいるようにしか調整していない完全にランダムの抽選みたいなので仕方ない。チーム毎に相性もあるだろうし、組み合わせを弄るのは流石にフェアじゃない。


 特にこれといった興味を引かれる試合がある訳でもないので簡単に作戦の打ち合わせをしてから控え室を後にした。


 会場に着くと床や壁がすっかり元通りになっていた。優秀な土魔法の使い手がいるのだろうか。


「貴様が勇者か」


 どうやら先客がいたようだ。試合まで後15分はあるだろうに。


「そうだけど。そう言う貴方はスカイ学院の生徒会長。名前は確か……ラティアスで合ってるかしら?」

「その通りだ。まさか、名前を覚えてもらっていたとはな」

「去年優勝したみたいだから少し楽しみだったわ」

「ハッ!そうか。その程度の認識だったか。あまり舐めていると痛い目に合うぞ」

「ご忠告どうも」


 それから私たちは距離を取ってから魔法の障壁(マジックバリア)に魔力を注ぐと定位置に着いた。

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