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晴れない視界

「はぁ。痛かった。いくら自己再生があるとはいえ、痛いものは痛いからなぁ。まあ、時短のためには仕方ないか」


 半日以上かけて死の森上空を通過し、その間ずっと霊にぶつかり続けた僕。怪我をしては治りまた怪我をして、の連続で気分はなかなかどうして拷問だった。


 痛みを堪えるあまりに飛行は安定せず、必死に平衡感覚を頼りに地面に突っ込むことはしないように飛んでいた。次々にぶつかるため少しずつ方向が変わっていくのでその調整もしなければならなかった今回の飛行は今まででもトップクラスの難易度だった。


「ここら辺だったと思うけど、おかしな」


 魔王城跡地に来たのはいいが、城内からの入り口だった場所は既に塞がれていた。地下の構造を完全に弄ることはしていないだろうけど、探すとなればそれ相応の時間が必要だ。故に時間を消費したくない今、選択肢などひとつしかない。


 敵に気付かれないように、とか慎重に行動するのではなく、堂々と僕は入り口を塞いでいる瓦礫を眼前に魔法を発動した。


煌めく神雷の刀身(スパークルエスパーダ)


 この超級魔法は使い勝手が良い。武器を用意せずとも魔法で造り出せるし、そこらの物よりも高品質だ。何も付与されていないのと魔力消費が多いことが玉に瑕だが、強力な雷が付与されていると考えればあまり欠点だとは思えない。


 たったの一太刀で瓦礫が粉々に砕け散り砂埃が視界を覆う。予想通り大きな音が出たので敵に侵入したことはバレたはずだ。


 敵地で前が見えないのは少し危険だが、姿が見えないのは皆同じ。それなら侵入する僕の方が多少有利なのではないだろうか?それに魔眼のお陰で魔力を視ることが出来るので襲撃も対処可能ということも踏まえれば答えはもう決まったようなものだ。


 飛行スキルを使うことで何かに躓く可能性を排除し存在隠蔽で身を隠しながら静かに先に進んだ。



 数分くらい飛んでいるが、まだまだ砂埃が晴れない。そんなに沢山壊したのだろうか?それにしたって、もう収まってもいいはずだ。

 風魔法で吹き飛ばしてもいいが、その為に魔力を使うよりは今のところデメリットどころかメリットの方が強い。


 結構魔力使っちゃったと思ったけど、必要経費だったかな。


 ただ壊すだけなら適当な魔法を使えば良かったかなと後悔気味だったが、下手な魔法を連発するよりは結果的に良かった。


「此度の侵入者は空を飛ぶのか。それに、姿を隠しているようだが、丸わかりだぞ?」


 前方から声がする。しかし未だに視界を覆う砂のお陰でその姿を捉えられていない。本来ならそれは相手も同じなのだが、何故僕が飛んでいることが分かるんだ?


「もしかしなくても、今代の勇者か?お仲間を助けにでも来たのか。フッフッフ。ハッハッハッ!この僕を置いていくなんて、レネッフェも見る目が無いと思っていたが、そういうことか!」


 コツコツコツと響く足音や魔眼で魔力を視たところ1人だけだ。魔力は明らかに強敵だと言わんばかりの量がその人物から視える。


「どうやらこの僕が勇者を倒す栄誉を貰えるようだ。レネッフェに着いて行ったらこの機会は無かっただろうな」


 僕は一度退避し砂埃が収まってから出直そうと前を向きながら後ろに移動する。が、僕の後ろには先ほどまでは無かったはずの壁がそれを許してくれなかった。


 質感的には植物かな?魔力があるから透過スキルじゃ無理か。


「どこへ行くつもりだ?勇者よ。まさか、逃げる、なんてことはあるはずないか。仲間を置いて逃げる勇者など聞いたことがない」

「……君の姿が見たくてね。視界が回復するまで待とうかと思ってさ」


 恐らくだが、敵は僕のことが見えている。それがハッキリとなのかぼんやりとなのか、はたまたなんとなくなのかは分からないが、ここで無視するよりは時間を稼いで魔法の準備をした方がいいと判断した。


「それで時間を稼いで魔法を放つつもりか?浅はかだな。そんな戦法がこの僕に通じるとでも思ったか?それとも、この僕を前にして手を抜いているのか!」


 魔法を用意しようとした途端、敵が走りだし跳躍。僕のいる場所に迷わず細剣を突き出した。


 咄嗟のことに思わず魔法を中断し、右に回避する。もしも回避しなかったのなら奴の細剣は僕の心臓を貫いていたことだろう。


 この視界の悪さでどうやってかは分からないが、僕の位置を正確に特定している。それなら存在隠蔽はただ魔力を消費するだけだとスキルを解除した。


「悪かったよ。それにしても、強いね。魔王軍にまだ君みたいな人材がいたんだ?」

「ふん。この僕が誰かの下につくものか。これは契約で仕方なく……まぁいい。それよりも、僕の名前はグラスだ。覚えておけ」


 またしても露骨な時間稼ぎを試みるが、今回の目的は視界の確保。僕は魔力が視えるのでそれで対処出来なくはないが、金または銀製の武器は魔力がなくとも僕に傷を負わせることが出来る。見えない状態では魔力がどこにあるかで判断するしかないのでリーチが見えない武器、なんてことになったら厄介極まりない。

 風魔法で一気に吹き飛ばしてもいいけど、半日以上飛んでいたのだ。魔力消費を少しでも抑えておきたい。それに、強い相手がどんな奴なのかは知っておいて損はない。


「契約、ね。さっきグラスも言ってたけど、僕は仲間を返して貰いに来たんだ。居場所くらい教えてくれないかな?」

「それは無理な相談だ。まあ、この僕を倒せば教えてやらんでもないがな」

「それは残念だね。グラスを殺したら教えて貰えない訳だから結局虱潰しに探すことになりそうだ」

「ハッ!出来るものならやってみるといい。だが、確かに僕が死んではどうせすぐに見つけるだろうからな。そのくらい今からでも教えてやろう。今頃は地下2階層の一番奥の部屋にいるはずだ。気を失っているが、問題ない。いずれ目を覚ます」

「ラミューラに何をした!?」

「脱走しようとしたから少し気絶させただけだ。流石に何もしようとしてこなければ僕も危害を加えることはなかったからな?」

「まあ、律儀にラミューラの居場所も教えてくれたし、その言葉は多分本当なんだろうね」


 まだか。何で一向に砂が舞ってるんだ?


「さあ。時間稼ぎはもう必要ないだろう?魔法もスキルも準備していないようだし、大方視界が晴れるのを待っているのだろうが、無駄だぞ。これはこの僕があえて撒き散らしているからな」

「……!!」


 読まれていた!いや、グラスは問題なく動けているんだ。何もせずにただ時間稼ぎに付き合っていては不利になることくらい分かっていたのだろう。それなのに僕と喋っていたのはこの時間稼ぎに意味なんて無く、ただの暇潰しの雑談気分だったのか!


「そっちから時間稼ぎしてきてくれて良かった。魔法とか準備されると面倒だけど、ただの時間の浪費なら好都合だ。今度は僕から質問しよう。貴様は本当に勇者か?まるで吸血鬼と似た者と混じってるみたいだ」

「勇者、とは確かに少し違うかな。もう、勇者の役割は終わったんだ。時間稼ぎが意味をなさないならお喋りはここまでにしよう」


 僕は距離を取りつつ風魔法で砂を吹き飛ばして視界の確保を試みる。しかし、いくら風を起こしても一向に砂埃が晴れない。グラスが何かしているのだろう。


 その間にもグラスは僕の方に向かって走り、跳んだ。今度は後ろに回避しようとしたが、植物の壁から枝が伸び僕の退路を限定しようとする。


 退路が限定されていてそこに突っ込むことはせず、僕は剣を取り出し細剣を受け流した。


「貴様、見えているのか?それなら何のためにあの時間稼ぎを……いや、何かからくりがあるのか?」


 グラスは一旦距離を取り唯一の通路となった場所を背にした。


「フッフッフ。やはり強いな。それでこそ勇者だ。この僕の相手に相応しい!」

グラスの一人称が「この僕」なのは少しくどいですかね?

グラス戦は少し長くなったので続きを次回にするのか、次回はエヴァンの方にするのか悩んでます。

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