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アルアリン砦

 エヴァン視点


 トウヤと入れ替わりのルールを決めてから数日後。僕を含めた勇者パーティはアルアリン砦に到着した。


 この砦は魔王城に最も近い砦。つまり人間が最後に拓した場所であり、戦争の最前線であろう場所だ。


 何故わざわざレネッフェが宣戦布告をしたのか。これは僕の予想だが、それはトウヤが生きている可能性を考えたからではないだろうか。


 トウヤの(人間の)身体を王様に渡してしまったが、魔王軍はトウヤが吸血鬼(ヴァンパイア)上位皇族(ハイロード)の身体になっていることを知っている。死体がないなら死んだと決めつけるのは早計だ。何よりトウヤとリリアーナはトウヤからの情報がなければたどり着けなかった魔王軍の研究施設でエマモネスと戦ったのだ。なら、トウヤが僕らに味方してると考えてもおかしくない。


 それとも、既にトウヤがこのロノアではなく、ルフトにいて僕と入れ替わっていることも分かっているのか。


 しっかり情報交換しておけば良かったなぁ。


 トウヤとの入れ替わりを僕から(おこな)ったときはトウヤからの情報は無かったし、入れ替わりのルール決めでも情報交換をしていなかった。


 トウヤが何をしていたのか。一応レネッフェと接触しようとしたのは想像がつく。それが入れ替わった理由だから。だが、何があったのかは分からない。まあ、実は特に報告するような内容では無いだけなのかもしれないが。


 まあ、理由はなんであれ、彼女を仕留める必要があるのは確かだ。


 あのとき、僕は何も出来なかった。


 レネッフェと初めて出会ったとき。彼女を見てしまったラミューラとリリアーナは魅了された。エマモネスだけならともかく、レネッフェと同時に相手をするのはあまりにも無謀だった。


 あそこで撤退を余儀なくされた僕はレネッフェに勝てるのかな。それに、エマモネスの魔剣はレネッフェが何かして与えたものみたいだったし、まだ切り札がある可能性はある。


 全ての敵が魔剣を所持しているとは考えにくいが、エマモネスだけとも思えない。

 それに、レネッフェの魔剣もまだ見れてない。


 そんなことを考えながらアルアリン砦に入ると見知った顔を見かけた。


「イージスさん!来ていたんですね」


 僕が声をかけるとイージスさんはこちらに近寄って来た。


「勇者御一行か。久しいな」


 僕ら勇者パーティを師事した一人。既に50近い年齢なので全盛期には程遠いが、その技量は随一で僕やラミューラが産まれるまで今最強の剣豪と呼ばれていた。


「お久しぶりです。一緒に戦えるなんて嬉しいです!」

「ハッハッハッ。勇者殿にそう言われるとは光栄よな。嫁さんが羨むに違いない」

「おひとりですか?」


 師匠はイージスの他にも1人いる。剣を担当していたイージスと魔法を担当していた彼女はタッグを組んでいたと思うが。


「……ああ。アヤツは別行動でな。詳細は明日でもよかろうて。馬車での生活はさぞストレスだったであろう?しっかり休まれよ」


 なんでイージスさんは前衛なのにわざわざここに残ったんだろ?レネッフェは僕が殺らないといけないのは変わらないけど、魅了されている沢山の魔族や魔物を相手取るのには向いていないのに……。


 まあ、エマモネスの接断魔糸ユレイニアに対してはイージスさんの方が相性が良いので相手の幹部を倒していくのには向いている。ただ、それを踏まえても単独行動はイージスさんの方が良いと思うが。


 イージスさんと別れると僕は1人でアルアリン砦の上に来た。


 見張りの者に席を外して貰い魔王城跡地の方角を見る。


 宣戦布告を受けてから一切魔物の襲撃は無い。魔王城との間には荒野があり、その先には禍々しい死の森が広がっている。荒野には生き物はおらず、死の森は木々が揺れる様子すらない。宣戦布告したとは思えないほど静かな光景は正直不気味である。


 それが何故かは分からないけど、レネッフェの仕業だろう。


 日が暮れた6月の今は少し肌寒い。これから戦場になるであろう場所を少し見に来ただけなので長居するつもりはない。


 戻る前に何気なく、折角だからと僕は性転換のスキルを発動させた。


 長くなる金色の髪。膨らむ胸。中性的な顔の僕だが、発育のお陰で明らかに女性だと分かる見た目になる。


 僕は──私は左目に魔力を集める。わざわざ()()姿()になったのも、とあるスキルを使う為だ。


「さあ。視せて。神々の視るその景色を」


 神々の義眼(左)


 これは私の産まれた頃からあるスキル。勇者の使命と共に授けられた瞳。一見普通の瞳だけれど非常に強力な能力を秘めている。


 この力を使ったのは伏兵がいないかを調べることもそうだけれど、奥に生い茂る死の森が気になるから。


 死の森はそこで開拓が止まった理由がその森にあったからいつの間にか人々からそう呼ばれていた。


 特に興味は無かったけど、折角だからと視てみたくなっただけ。


 そんな軽いノリで視たものは私の知りたいことを教えてくれた。


 真実を。


「何……これ」


 神々の義眼は鑑定の上位スキルのようなものだ。鑑定で得られる情報はステータスくらいだけれど、相手の状態がまるで無機物を鑑定したときのように分かる。他にも幻術の見極めだったり、嘘を見破ることなども出来るが、今回重要なのは相手の状態が分かることだ。


 死の森は魅了されていた。


 死の森が魅了!?あの森は生きているとでも言うの?


 見間違いかと思い一度目線を外す為に、そして能力を再確認する為に下を向くと更に信じがたい情報が視える。


 門には兵士が2人立っており、その2人は既に魅了状態だった。


 見間違いかと思い何度も確認するが、視える情報は変わらない。スキルの誤作動や幻覚はあり得ない。神々の義眼はそれすらも凌駕し的確に情報をもたらすのだから。つまり──


 アルアリン砦はもう陥落していたのだ。


 宣戦布告から既に数日が経過している。相手が仕掛けて来ていないと何故思ったのか。相手の能力を考えれば想像出来たはずなのに。


 すぐさま性転換するとラミューラとリリアーナを探す。


「おや。勇者殿ではないか。そんなに慌てて如何された?」


 イージスさんは既にアルアリン砦にいた。魅了されているかどうかは分からない。だけどアルアリン砦の様子を視る限りもう手遅れだろう。


「少し用事が出来まして。ラミューラとリリアーナはどこにいるか知ってますか?」


 剣を抜くのはまだ早い。2人と合流するまでは気がついたと知られるのは得策ではないから。


「お二方なら入浴中ではないかな?アルアリン砦の魔法士がわざわざお湯を沸かしてくれてな。もう少ししたら勇者殿も入ってきたら如何かな?」


 僕が決して立ち入ることの出来ない場所かつ合流に時間がかかる理由。


「そうさせて貰います。それで、場所はどこに?」

「時間が来たら声をかけよう。どうせなら一緒にどうかな?」

「お誘いは嬉しいのですが、僕は誰とも一緒に入る気はないんです。どうしても他人に裸体を見せるのは抵抗がありまして」

「……そういえば、勇者殿はいつもそうだったな。それは失礼した」


 浴室の場所を教えて貰った僕はあえて遠回りをしてそこへ向かう。その場所は浴室などではなく屋外訓練場のようだ。


「覗き見でもするつもりだったかな?勇者殿」

「いい歳になっても男なら興味は尽きないませんよ。それに、2人とも美しいですから。それより、これはどういうことですか?イージスさん。それと、2人はどこです?」


 僕の足止めはもう無理だと悟ったのか。イージスさんは腰に提げている刀の鯉口を切った。


「どうもこうもあるまいて。勇者殿ならもう気付いているだろうに。2人のことは……勇者殿の戦利品としよう」


 僕は聖剣エルメドートを抜く。彼相手に手を抜けるほど僕は強くない。


「そうですかね。それは過大評価もいいとこだよ。でも……戦利品くらいは貰うつもりです」

「ほう。それは楽しみだ」


 僕がエルメドートに魔法を込める。それを見たイージスさんが居合を繰り出す。明らかに僕の首を狙ったもの。


 咄嗟にエルメドートを合わせるが、簡単に弾かれてしまった。


 くっ、流石に速い!それに防御も読まれてたか!


 明らかに体制を崩す僕だが、それには保険をかけていた。イージスさんは初手居合いから始めるだろうと予測していたからこそ、始めに魔法を込めたのだ。


 中級風魔法の乱れ狂う風(ハイウィンド)を発動し追い討ちをかけるイージスさんの刀に再びエルメドートを合わせた。それと同時にエルメドートの刃から風が吹き荒れイージスさんを吹き飛ばす。


 イージスは難なく受け身を取るが、その間に僕は距離を詰めながら別の魔法を込めていた。

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