表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/83

話し合い

 学院が終わり、日が暮れた時間に入れ替わりをした。


 こういうときのコミュニケーション方法が厄介だ。ルシアとルミナスに頼むか、文通しかないのだから。しかし、以前は時間で区切っていたが、今回からはあちらの話が終わったらエヴァンが入れ替わりをすることで多少楽になった。先月は僕が強引に入れ替わったままにしたから結構面倒なことになったんだよね。


 僕が今いる場所は馬車の中のようだ。向かう先はどこか分からないが、ラミューラかリリアーナに聞く訳にもいかない。だが、ラミューラが装備している二振りの剣をみれば目的地の場所はなんとなく分かる。


 いよいよ、か。


 時間的に宣戦布告を受けたと知らされてすぐに馬車に乗った。王城から出たのなら普通に考えて目的地は戦争が起こる可能性の高い場所──最前線だ。


 レネッフェが魅了を使うことを踏まえればレネッフェが率いる部隊に対しては基本的に僕だけ。他はスタートで目隠しでもしながら方向だけ定めて遠距離で攻撃するなり僕の回復や強化をするしかない。相手が次々とこちらを魅了してしまえば、もはや負けは確定だろうから。

 だが、レネッフェを僕が抑えられるならば、他の魔族をラミューラたちが相手することが出来る。相手に数的優位はあるが、それはレネッフェ限定なのだ。


 それに、相手はあくまでも魔王軍の生き残りだ。魔王どころか四天王すら全滅している。精々エマモネスと同等の奴が何人かいるくらいだろう。この6年間で強くなったのは予想出来るが、最近戦ったから分かる。エマモネス程度が少しいたところで勇者パーティが全滅するなら魔王を倒せていない。


 とはいえ、人間側は平和ボケしており勇者パーティ以外だと全盛期を過ぎた者しかおらず魔王がいなくなったことにより魔物も弱くなったはずかので経験値が足らず、必然的にロノアで言うところのレベル500を満たす者はいないだろう。


 つまり何が言いたいかと言えばお互いに全体的に弱くなった状態かつリーダーは全盛期となった。そして、こちらは援護が遠距離や強化・回復魔法だが、相手はそんなものを気にせずに攻めてくると来たものだ。こちらが圧倒的に不利な状況である。


 この馬車はまるで地獄への特急便だ。


 そんなこと考えていたら視界が切り替わった。


「エヴァンはなんて?」

「提案を受け入れるそうです」

「そう。ありがとう」


 僕がエヴァンの状況確認をしていた間は思いの外短かった。だけど元々話す内容もそこまで多くないのだ。用件はただ1つだけ。入れ替わりの間隔をどうするか、だ。双方向から入れ替わりが出来るなら話し合わなければ戦争どころの話ではない。


 そこで、僕は基本的に1日交代が無難だと考えた。エヴァンではどうしようも無い問題も僕ならなんとか出来るかもしれないし、逆の可能性もある。

 あとは入れ替わることでなんとか出来る問題があったら入れ替わっても良い。その場合は出来るだけすぐにもう一度入れ替わることにする。もしすぐに入れ替われないなら日付変更時に強制的に入れ替わることにする。その時はローテーションがずれることになる。因みにだが、情報交換はこっちのルフトではルミナスかルシアを、あっちのロノアではリリアーナを介して伝える、又は手紙で、となる。


 つまり、困ったら入れ替わって良いしすぐに代わるけど1日交代は守るってこと。破った方は次のターンは強制的に休み。まあ、エヴァンと僕なら約束を破ることは無いから最後のはいらないと思うけど。


「早速明日から?」

「目的地に着くまでは少なくとも数日はかかるみたいなので事が起きた翌日から入れ替わるみたいですよ?タイミングは寝る前に、って言ってました」


 いつも通りか。それでもってレネッフェが仕掛けてくるのを待つ必要があると。


「それじゃあ、まだ学院生活になりそうだね」


 影に入れておけばエヴァンの身体でも取り出せるので何か買い物してもいいかもしれない。



 翌日の放課後。僕は街に買い出しにでも行こうかなと思っていたのだが、ユハナ先生に捕まってしまった。何事かと用件を聞いたところ「いいから、着いてきてください」と言われただけで強引に手を繋いできた。

 ルシアがユハナ先生を鋭い殺気を込めた目で見ていたのは言うまでもないだろう。


 しかし、手を出さなかったのは本当に偉い。恐らく僕がユハナ先生を気に入っているので、ここで手を出したらもう教室まで連れて来なくなるとでも考えたのかな?だとしたらそれは当たっている。


 僕は部屋の鍵をルシアに投げて「先に帰ってて」と言っておく。僕だけと手を繋ぐということは僕だけに用事があると思ったからだ。


 ユハナが僕をどこに連れていくつもりなのか全く見当がつかない。


 僕は悪い事をしていない、とは言わないけれどわざわざ放課後に、それもユハナ先生が逃がさないように手を繋いでまで連れていく程のことをやった記憶は無い。……昨日と今日、ルシアがクラスメート気絶させてるけど、あれは手を出してないからセーフのはずだ。ただの視線だけでは人は殺せない。魔力も込めてないし、暴力も振るっていないから……大丈夫のはずだ。


 どことなく足取りは重い。ゆっくり歩いているのは僕の歩幅が小さいからだろうか?それに何故か指を絡めてきた。


 一体どういうつもりなのかと顔色を窺うが、彼女が何を考えているのか僕には分からなかった。


 え、なんでこんなにゆっくり歩くの?目的地は?それにこの手……逃がさないようにってこと?もう嫌な予感しかしないなぁ。


 もしかしたらユハナ先生の私的な用事かもしれないけど、それは希望的観測かな。


 着いたのは生徒指導室。ユハナ先生が鍵を取り出して僕に先に中へ入るように促した。やはり逃がさないようにする為なのだろう。

 まぁ、ここは魔力で覆われていないから廊下に脱け出すことくらい余裕だけど。


 ユハナ先生が後から入り鍵を閉めた。


 生徒指導室はそこまで広くなく、椅子が数脚壁に並び、扉の方を向いてソファーと、その前に机がある。奥には窓らしきものがあるが、黒いカーテンがその存在をかくしている。暗いかと言われれば暗いが、天井に吊るされている灯りのお陰で何があるかは分かる。

 僕は魔眼のお陰で普通に見えるけど。


 ……もしかしたら体罰とかあったのかな?多分この椅子、拘束用だよね。対して先生が座るのはソファーか。


 恐らく指導する生徒が複数いる場合に対処出来るように生徒が座る椅子が壁に寄せられているのだろう。ユハナ先生は椅子を持ってきて僕に座るように言った。


 僕が椅子に座ると案の定、椅子が魔力を吸って僕の腕と足を拘束した。トリガーは恐らくすわること。座った者の魔力に応じて拘束が強力になる仕様かな?そうじゃないなら、もしかしたら複数ある椅子は生徒の危険度で変えているのかもしれない。


「……あの、用件って何ですか?」

「まだ分かりませんか?少し悲しいですね」


 ユハナ先生は足を組む。タイトスカートなのでつい目線が太もも辺りに向かいそうになるが、僕はしっかりユハナ先生の顔を見つめる。


「……ルシアさんと授業中にイチャイチャしすぎです」

「?何か問題がありましたか?」

「問題しかありません!他の生徒が気になるでしょう!」


 それもそうか。今度からは存在隠蔽のスキルを使う必要がありそうだね。


「今、バレなければ良いと思いましたね?」

「……」

「黙秘は肯定と判断しますよ?」

「すみません」

「ですが、私もそう思います」

「え?」


 何故か肯定的なユハナ先生。なら、わざわざここに連れて来なくても忠告だけで良かったのに。


「バレなければ先生と生徒でもイチャイチャ出来ると思います」

「……」


 これが理由か。簡単には納得しないだろうと予測して、バレなければ、という考えを持たせないようにしてるのか。でもそれには欠点がある。


「僕が訴えればユハナ先生は牢獄行きですけどね」

「貴方にそんなことが出来ますか?」


 ユハナ先生は僕が自分のことを気に入ってることを逆手にとるつもりだ。


「……降参です。ユハナ先生にそんなこと出来るわけない。ルシアには説得しておきます」

「そうですか。良かったです」

「これ、外して貰えますか?流石に少し疲れてきました」


 無抵抗でも少しではあるが魔力が吸われるのだ。抵抗すればもっと吸われることになるだろう。出来ればもう触りたくもない。


「い・や・ですっ」

「は?」


 聞き間違えかな?でもあんなにハッキリと否定されたんだ。それはないだろう。


「ですから。嫌です、と言いました。鍵がかかった暗い教室に男女が……当然何も起こらない訳、ないですよね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ