間に合ったようで、そうでないような
イシェニアとの遭遇から4日後の放課後。
今日も今日とて街に繰り出し、その様子を確認していた。
「ようやく活気が戻ってきたか」
「早めに解決しておいて正解でしたね」
ナイトメアを倒せば即解決、なんて都合の良いことは起きない。
確かに、負の感情を糧としていた存在がその力を使い果たしたのだから街の人の精神が浄化されて元通りになっても良いと思うが、あくまでナイトメアは負の感情で活動していただけで、ナイトメアをどうこうしただけではどうにもならないのが現実だ。実際に精神汚染を促していたのは、あの雨だったのだからそれが無くなった今。徐々にその効力が薄れていってるのだ。
「明日もあればなんとかなると思うけど、入れ替わりがトウヤだけしか切り替え出来ないのが残念だったね」
「本当です。トウヤ様との貴重な時間が減るのですよ?」
「それ僕に言う?トウヤとはもう直接会えないこの僕にさ」
「……すみません。その通りでしたね。……とでも言うと思いましたか?幼なじみとして昔から仲良くしていたのでしょう?トントンですよ」
「はぁ!?んな訳無いでしょ!これから先もまだ傍にいられるんだから圧倒的にそっちが良いに決まってる!」
そんな他愛もない話をしながら街を見て回り、学院に帰ってきたのだが、何やら騒がしい。
僕とネクミスは共に存在隠蔽スキルの所持者なので誰かに気付かれることは無いのだが、ネクミスは透過や飛行のスキルを持っていない。
まあ、縮地スキルで空を渡れば良いだけの話だけれど、コスパが悪いことは確かだ。何せ何度も発動しなければならないのだから。
「僕が抱えて飛ぼうか?」
「……いえ、止めておきます。トウヤ様の声、身体でも中身がそうではないのは、やはり裏切り行為ですから」
「……それもそうだね。ごめん。僕が悪かった」
とはいえ、遠回りすれば寮には戻れるはずだ。
僕たちが迂回しようとした矢先にとある言葉を耳にした。
「ねぇこれほんとなの!?うちの学院が原因なのは間違いないみたいだけど……もし本当ならうちの学院終わりよ?」
「ああ。貴重な男子が減っちゃうわ」
「戦争になるのかしら」
何やら不穏な気配がする。
取り敢えず情報収集をしてみないことには始まらないので僕は存在隠蔽を解いて適当な人に話しかけた。
「すみません。何かあったんですか?」
「え!かわっ。……ん゛ん゛。それが……」
「あーあー聞こえるかね?」
先輩が説明する前に風魔法を使って拡散することで聞こえてきた声に反応して他の生徒たちも静かになった。
誰だろ?こんな渋い声なら普通は男性男性だけど……。
「スカイ学院の理事長として今後の対応について説明しよう。まずは──」
どうやらこの騒動の原因はスカイ学院の警備が甘すぎると魔王から言われたことみたいだ。
元々先月にリオとリナが拐われたことで問題になったのだが、あれは2人の不注意だったし、学院の外で起こったことだから、ということでそこまで大きな問題にはならなかった。
しかし、今回はミシュノ先生が操られていたことが発覚した為こうして大問題へとなってしまったようだ。
訓練場の修復をしていたら下に続く穴があることに気が付き、ミシュノ先生が頻繁に訓練場に出入りしていたことが複数の生徒から証言されて、といった具合にトントン拍子で事が運び今対応に追われているのだとか。
確かに今回の一件が世間にバレたら学院側に落ち度があるのは明白だろう。それほど禁断の果実が厄介な組織なのだが、仕方ない。
先生の増員、か。教員を増やすことで警備を強化するって話だけど、ほんとに上手くいくかなぁ。
例えば今月のようなケースだと……中々に不安だ。あれは人を増やしたところで解決しない。
それに、リオが帰国するみたいだし、これは相当荒れるな。まあ、僕には直接関係ないけど。
今月は明日までなので、来月に何もないとトウヤが知るだろうから、あと2日で入れ替わるのだ。
まあ、この騒動がどのくらい影響しているのか分からないけど。
トウヤ視点
王様とは久しぶりに会う。最後にあったのは10年以上前だったはずだ。
僕は礼儀作法を思いだしながら膝を就いた。
「楽にしてくれ。勇者よ」
「では、遠慮なく」
立ち上がり王様を見据える。それを確認した王様から話を切り出した。
「……実は魔王軍の残党が宣戦布告をしてきたのだ」
王様の顔色は優れない。それも当然だ。頼みの綱である勇者に対して咎人などという末路を容認したのだから。
「それを僕に話してどうするつもりですか?」
僕の王様への評価はかなり低い。王様からすればどうしようも無かったかもしれないが、それは自らの国をコントロール出来ていないことと等しいことだ。
「今日の零時に転移しなかったことから、既にそなたは何か対策をしていたのだろうな。だが、再びここに来たのならばそれはこの国を見限っていないと思いたい。どうか今一度力を貸して欲しい」
え?エヴァンは既に手を打ってたの?なら僕の入れ替わりは何だったんだよ!
でも、指名手配されるだろうから、どのみちこれで正解だ。やって後悔するよりもやらずに後悔する方が嫌いなのだ。
「……それを僕の一存で答える訳にはいきません。仲間たちのこともありますから」
本心である。
僕としてはエヴァンの意見を尊重したいが故の発言だが、どのみちリアやラミューラの意見も聞くだろう。そこに僕の意見はいらない。
「その通りだな。では、日を改めて返答を聞こう。それで、ここに来た理由は他にあるのだろう?」
「その通りです。今となってはもう確認するだけですが、咎人の件は無くなったのですよね?」
「勿論だ。数日前にビフスマ公爵を筆頭に咎人賛成派の全員が間違っていたと言って来たのだ」
「そうですか。では、そろそろ仲間の元へ戻ります」
「そうか。良い返事であることを期待しよう」
2章はこれでおしまいですかね。閑話休題としてギーラン視点で入れ替わり状態のエヴァンとの関わりとか書いても面白そうですね内容ペラペラかもしれないけど。(書くかどうかは別の話)
3章の導入っぽいのも踏まえているので次回は閑話か、2ヶ月以内に始めたい3章のどちらかになりそうです。
個人的に大体の作品の2章は他の章と比較すると面白くないと思ってしまうので、物凄く不安でした。が、なんだかんだで2章は入れ替わりがあったし、そこそこ面白い要素があったと思います。(トウヤの覚醒とか使い魔とかシオンとシノン出番が無かったけど)
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