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禁断の苺

テストがあるのに土曜潰して書いてしまった。

 放課後。僕は(ミスト)の教室で机に突っ伏していた。


 トウヤって毎日こんな生活してるの?ハード過ぎるでしょ。


 色々調べ回るつもりが、どんどん近寄ってくる同級生(女性限定)から身を隠すことで精一杯だった。毎放課付きまとわれる身としては堪ったものじゃない。


 これはナノルルに何か作って貰うしか無さそうだけど、すぐに出来る訳じゃないからなぁ。


 それに、そんなに長期間入れ替わったままでいるつもりは無い。そんなことになれば他の眷属(みんな)がどんな行動を起こそうとするだろう?もしかしたら、生命全て皆殺しにしようとするかもしれない。

 そうなればレベル125が最大値のルフトは簡単に滅びるだろう。精神が繋がっているからこそ起きるシルンでの貴族の難癖という問題もすぐに解決出来る。


 シルンでの安全を手に入れる為に今回の騒動を何とかする時間は今日合わせて後5日しかない。


 訓練場が怪しいことまでは分かってるけど、つい昨日破壊したばかりで、修復されるまでにはまだ時間がかかる。


 飛行と透過スキルを使えても、あそこは魔宝石で出来てるからすり抜けは無理……いや、待てよ?すり抜けなければ良いのでは?


 僕が破壊したのは(ミスト)の訓練場のみ。校舎は中央にあるので全ての練習場の一角は校舎の地下に該当する。


 (レイン)はシノンがいるから論外として、行くとしたら(クラウド)かな?知り合いのいないクラスだと動きやすいし。


 シノンの第6感というスキルは発動するときとしないときがあるのだが、それに賭ける勇気は無い。別にシオンがいる(ストーム)でも良いけど、それは(クラウド)が外れだったときでも構わない。


 僕は早速(クラウド)の訓練場へと足を運ぶ。

 そこには適度にバラけて沢山の生徒が魔法の練習をしている姿があった。


 いくら透過スキルを使っているとはいえ、魔力にはぶつかるので上手く避けながら目的の場所へと飛んでいく。


 ?何だろう?この柱。何か違和感を感じる。


 見つけた場所は校舎の真下ではなくその対角に位置する場所。ひと1人分くらいの大きさのこの柱。一見すると普通の柱なのだが、魔力反応が他の柱より少ない。隅っこだったので魔宝石の質が低いだけかもしれないが、それにしては違い過ぎる。


 他の訓練場も調べてみたところ全ての訓練場の隅に同じような柱があったので、こういうものか。と思ってしまったその時。ふと周囲を見渡せば誰1人として訓練場いなかった。


 ミシュノ先生を除いて。


 彼女は迷うことなく真っ直ぐ僕の方へと歩いてくる。


 !?バレてる、のか?


 一瞬焦ったが、少し移動するとその心配は無くなった。彼女が向かっていたのは僕がつい先程まで調べていた隅にある柱だったからだ。


 ミシュノ先生が柱に触れると魔宝石が少し奥へ引っ込むとゆっくりスライドした。入り口は人が1人通れるくらいの大きさで中は明らかに下へと続く穴が空いていた。


 そこへミシュノ先生が飛び降りる。


 ミシュノ先生が飛び降りると同時に扉が閉まり始めたので急いで中へ入った。



 中は案外狭い。2人並んで歩くのがギリギリの一本道で学園の中央へ伸びている。


 特に灯りがある訳ではないが、コツコツと暗闇の中をどんどん進むミシュノ先生。


 目的地に着いたのか、ガチャン。と音がした。その先には何も無い空間があった。四方の壁にはここと同じように扉があるだけ。


 そんな空間の中心に立ったミシュノ先生は魔力を練る。それに呼応するかの如く床から天井まで魔力が駆け巡った。


「貴女が犯人だったんですか。ミシュノ先生」

「……」


 彼女の瞳は虚ろで濁りきっていた。僕の方を一瞥するだけで話しかけようともしてこない。


 操られている、のか?だとしたら術者は誰だ?


「無駄無駄。今の彼女は私の命令を聞くだけの忠実な奴隷なの」


 向かい側の扉から姿を現したのは白衣を着た幼い女の子だった。


「君は?」

「私は禁断の果実(フォビドンフルート)の苺担当、イシェニア・クミフィーユちゃんだよ?」


 彼女はどこからか苺が詰まったパックを取り出してひとつだけ食べた。


「ぅーん♪美味しい。私、やっぱり果物は苺が一番美味しいと思うの」


 ミシュノ先生にも苺を分けてあげる辺り少しは良心があるのだろう。だが、今やっていることは間違いなく悪意だ。


「何故こんなことをしたんだ?」

「こんなこと?……あ!あの雨のこと?よくわかんないけど、レシェルが言うには重要なことらしいよ?私の研究にもレシェルにも役に立つなんて、凄く魅力的でしょっ?」


 満面の笑みを浮かべるイシェニアはゆったりとした足取りで歩いてくる。レシェルが誰なのかは気になるがそれよりも優先すべき事がある。


「止めてくれないかな?僕の大切な人が困ってるんだ」

「うーんと、あとちょっと待って欲しいの。レシェルが今月一杯まで雨を降らせて欲しいみたいだから」

「それじゃあ遅いんだ。来月に持ち越せないかな?」

「ごめんなさい。それは無理みたいなの。時間が無いってレシェルに言われてて」


 またレシェル、か。まあ、今は情報収集に徹するのも悪くないか。黒幕は目の前にある訳でだし。


「レシェルって一体どんな人なの?」

「レシェルは私達のリーダーだよ。なんの研究をしてるかは分かんないけど、とにかく凄いの!」

「慕ってるんだね」

「うん!だから、ごめんね。苺あげるから」


 そう言って苺を僕の口に入れてくれる。咀嚼して飲み込んだ瞬間。身体に異変を感じた。


 状態異常は効かないはずなのに、あの苺はなんなんだ?


「あれ?お兄さんは効かないのかな?まだ意識があるなんて、ビックリだよ」

「僕に、何を食べさせたんだ?」


 膝を付き床に手をつく僕。


「アレルギー反応って知ってる?異物に対して身体が過剰に反応するやつ。あれと同じような事だよ。耐性が強い人にはアレルギー反応を起こさせて、そうじゃない人はこの人みたいに忠実な奴隷になっちゃうの」


 苺を食べさせる必要があるけど、それが出来れば強力だ。それに、彼女の見た目が幼いから油断して苺を食べやすいというのも噛み合って完全に初見殺しだ。


 イシェニアは「まあ、私は関係ないけど」と言って、ミシュノ先生の方に近づく。


「ほら、こんなことされても何も抵抗しない。可愛い奴隷さん」


 イシェニアはミシュノ先生の服の下から手を入れて身体を弄る。喘ぎ声が漏れるがイシェニアは気にせず続けている。


「まだ今日を入れたら5日あるの。それまでは大人しくして欲しいの。そうしたらこの女で好きなことさせてあげる」

「それは、無理な相談だ」


 トウヤの身体で眷属(僕たち)以外の異性と触れ合うのはダメだ!


 無理にでも身体を起こし、収納庫から一振りの剣を取り出す。


「まだそんな力があるなんて、貴方は何者なの?」

「ごめんね。お喋りしてあげる余裕は無いんだっ!」


 雷魔法で自身を加速させて接近する僕。しかし、イシェニアが行ったのは指を鳴らしただけに見えた。


 どこからか悪寒がした。


 見渡せば実体の無い膨大な魔力だけの大きな人型の何かが僕を見ていた。


 まるで負の感情を集めたかのような邪悪な存在。恐らくだが、精神汚染によって負の感情が大きくなり、それをエネルギーとしている魔法生物なのだろう。


 イシェニアを庇う魔法生物にダメージを負わすことは出来なかった。すぐに再生してしまうのだ。


「この子は私の自信作なんだっ。ほら、行ってナイトメア」


 ナイトメアはイシェニアの声に従いこちらに向かって来る。


 普段なら大したことない相手だが、今の体調は最悪と言っても過言ではない。それに、聖剣がないことや、トウヤの身体だから能力が制限されることを踏まえると状況はこれ以上ないくらい悪い。


 なんとかナイトメアを外に出せればネクミスが協力してくれるだろうけど、ここは訓練場の下。出入口を破壊して出るしか方法は無い。


 (ミスト)の方を破壊すればどうせ修理するんだ。少しくらい増えても変わらない。


 問題なのは、その出入口はイシェニアの背後ってことくらいか。


 ナイトメアは闇魔法と魔力を纏わせた身体での攻撃しかしてこない。


「ぐぅっ、くっ。はぁ!」


 上手く動けない僕は相手の攻撃を喰らっては反撃しているのだが、ちょっとやそっとの火力では再生されてしまう。


 動けないと言ってもいつもより鈍い程度だ。魔法ならば避けきれないのは受け流したりするのだが、ナイトメアの腕(?)をつかった攻撃はすり抜けたりするので直撃することだってある。


 もっと火力が必要だ。そして、それを実行出来るだけの余力が僕には無い。


 何も今ここで倒す必要は無い。外に連れ出せば良いのだ。しかし、それを分かってはいても、今の状態では相手の隙を作らなければ不可能だ。


 このままではダメだ。長引けばそれだけ不利になる。仕方ない、別の出口から出るか。


 踵を返し走ろうとする僕を見て慌てて先回りしようとするイシェニアとナイトメア。しかし、それを利用して雷魔法で一気に加速し、ミシュノ先生を回収してから(ミスト)の方から脱出した。

最近1話1話を場面ごとで切ることを意識してたけど、そんなこと気にせず自分が書きたいように書くことが大事ですよね。やっぱり自分が面白いと思わなくちゃ。

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