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鋭い者

短くてすみません。

「すみません。先生。少しやり過ぎてしまったみたいで……」

「はぁ……何をどうしたらこうなるのよ……」


 超級魔法によって半壊させられた練習場を見て呆然と立ち尽くすミシュノ先生。


 まさかただの学生が超級魔法を使えるとは思わなかったのだろう。それに、学院が使っている魔宝石(マジックジュエル)の強度ならば下手な超級魔法ならば堪えられる程の良質な魔宝石を採用している。なので僕が相当魔力が高く超級魔法を上手く扱えることは理解しただろう。それに、今の僕の肉体年齢は12歳だ。飛び級はまだしも超級魔法を発動するのは異常としか言えない。


 ミシュノ先生はなんとか心を落ち着かせて口を開いた。


「やったのはトウヤで間違いない?」

「は、はい」

「ならほぼ確実にお咎めなしね」

「え?」


 まさか大事な訓練場を半壊させて何も罰則が無いなんて……男性の魔法使いに対して甘すぎるとは聞いていたけど、ここまでとは……。


 僕が首をかしげているとミシュノ先生が補足してくれる。


「当たり前よ。貴方は貴重な男性魔法使いなのよ?それに加え高い能力を持っているのだから大抵のことはペナルティ対象にはならないわ」


 やりたい放題じゃないかっ。まあ、これはトウヤの実力も鑑みているからこんなに緩々なのかもしれないけど。


 年齢、性別、能力の3つの要素のお陰で罰則こそ無かったものの、それならそれでやりようはあるのだ。


「一応生徒指導部の先生に確認を取るけど、多分何も無いから帰っても良いわよ?」

「いえ。それなら僕も着いていきます。ナフルルは……」

「待っててあげるわよ。だからできるだけ早くしてね」


 実はまだ僕たちは校舎に入っていない。理由は訓練場から出てきたところをミシュノ先生に発見されて事情を話すことになり今に至るからだ。


 ミシュノ先生と一緒に生徒指導部の先生にお咎めなしの確認を取ってから僕は寮に帰ることはせずに靴を回収してから探索する。


 校舎は職員室や移動教室がある特別棟と普段生徒が授業を受ける各クラスの教室のある教室棟の2つある。2つの棟は繋がっているので、そのどちらかに侵入出来れば後は透過スキルでなんとかなる。


 何故最初からそれをやらなかったと言うと透過は万能ではない。魔力で覆われた校舎に入ることは出来ないのだ。故にこうして無理にでも校舎に入る必要があった。


 透過と飛行のスキルを同時使用して調べること数刻。


 人気が無い場所は調べ終わり、後は職員室や校長室など主に特別棟で何かしてる先生がいたので後回しにした場所のみだ。


 教室棟には特に異常は見当たらなかったし、特別棟にあるのか?


 魔力関知が得意な職員にバレないように細心の注意を払いながらだったのでゆっくりなペースでじっくり調べ回ることが出来た。だから他のところで見落としがあるとは思えない。しかし、ここ、特別棟のどこかにあるという確証もない。


 やることが無いが故にこのただ待つしかない時間はやるせない気持ちで一杯だった。



 時刻は既に真夜中といっても過言ではない。最後の職員、ミシュノ先生が中々帰らなかったのだ。


 僕が他の調べていなかった校長室や玄関窓口などを調べ終わってもまだこんな時間まで残っているなんて、一体何をやっていたのだろう?


 ミシュノ先生がしていたことは気になるが、そんなことより優先することが僕にはあるのだ。


 校舎は隈無く探した。にも拘らず何も見つからない。


 持ち運びが可能な物だったのか?だとしたら犯人を特定する必要がある。しかし、容疑者はこの学院の関係者すべてだ。それをあと5日で見つけ出すのは難しい。


 帰ろうと思い適当な窓を開けて飛び去ろうとするその直前。空間把握スキルに反応があった。


 微かな魔力反応。それは確かに校舎から感じた。


 地下は全域訓練場で、丁度ここの下は僕が半壊させた辺りかなぁ……ん?地下?


 僕はてっきり校舎のどこかにあると踏んでいた。だが、地下という可能性もあったのだ。


 そう言えば今日はあの雨が降っていない。単なる偶然かもしれないけど、もしかしたら……。


 夜中の訓練場は完全予約制である。仕方なく今日は切り上げた。



 翌朝。僕は登校するために身支度を整えていた。

 訓練場を利用するにしても僕が半壊させてしまった為ここしばらくは───といっても明後日までだが───(ミスト)クラスは使えなくなってしまった。別に休んでも構わないが、時間を無為にするよりも学院で情報収集をする方が良いだろうと思ったのだ。


 ネクミスからはひとつ離れた義理の姉妹がいることを聞いているのでボロが出ないか心配だ。何せ一緒に登校するのだから。


「あれ?トウヤ兄様いつもと何か違いますね?」

「そうかな?何が違って見える?」

「すみません。具体的には……。ただ私の第6感スキルが反応したので……」


 朝から冷や汗が止まらない。シノンの第6感のことは耳にしていたけど、実際目の当たりにしてしまうとその凄さが分かる。


 まるで生きた心地がしなかった登校と言う名の軽い地獄を終えて教室に入ると大勢の女子生徒に囲まれた。


 え?何々っ!一体何事!?


 トウヤが普段使っている存在隠蔽スキルを僕は使えない。登下校はシノンとシオンがいてくれるのでなんとも無いが、1人になってしまえば話し掛けない女子生徒の方が少数派だ。


「悪いけど、トウヤのこと貸してくれる?」


 もみくちゃにされている僕を助けてくれたのは同じクラスの唯一の男子生徒でイニヒブル公爵家の直系のギーランだった。


「ギーランっ!ありがとう」

「気にしないでいいよ。それにしても珍しいね。トウヤがこんなミスをするなんてさ」

「あはは」

「今回は僕がいたからなんとかなったけど、これからは注意してね?」

「そうする」


 とはいえ、注意した結果がこれなのでどうしようも無いのだが。


「……早めに来る必要がありそうだな」ボソッ

「え?ギーラン今「何も言ってないよ。ほらそろそろホームルームの時間だよ」

「あ、ああ」


 帰ったのは午前1時頃だったはずなのに元気に挨拶をするミシュノ先生のことを凄いなぁと思いながら眺めていた。

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