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超級魔法

間に合って良かった

「どうやら、しばらくトウヤ様はエヴァンと入れ替わったままにするそうですよ?」

「それは、僕の為、なんだろうなぁ」


 トウヤが守ろうとしてくれるのはありがたいけど、それで傷つくのは堪えられない。それじゃあ、何のためにロノアからルフトに転移させたのか。


 トウヤが穏やかに過ごす為だったはずなのに。最近厄介事が多いみたいだ。まあ、始めの6年間は何も無かったみたいだし、今年が異常なのだと言えばそうなのだろう。


「ネクミス。すぐに調べに行く。ナフルルって人はどこにいるか分かる?」


 一日中ネクミスとしか会わないように気を付けていたのでルフトからの知り合いは誰一人として面識は無い。当然普段どこにいるのか、なんて分かるはずもない。それどころか、すれ違っても顔が分からないので特徴を聞いていたとしても素通りしてしまうかもしれない。


「すぐに呼びましょう」


 既に太陽が沈みかけているにも拘わらず呼び出すのはマナーがなっていないが、真夜中で無いだけマシだと思って欲しい。


 ネクミスが向かったのは隣の部屋だ。玄関を出て左右どちらかの部屋という訳では無くトウヤの部屋からすぐ隣という意味で隣の部屋だ。


 あれ?ナフルルって女性らしい名前だと思っていたけど、男性だったかな?まあ、女性だったらなんで他の眷属が始末してないの?って話だし、そういうものか。


 一体どんな男性なんだろう?と興味を抱きながらネクミスを待つ。とはいえ、呼び出しただけなのですぐに出てくるので実際は全然待っていない。


 ネクミスと一緒に扉から出てきたのは金の髪に深紅の瞳を持つ美少女だった。


 は?この部屋トウヤの隣だよね?なんでこんなことに……


 説明して欲しい、という視線をネクミスに浴びせる僕。


 それに気が付いているにも拘わらずスルーしてネクミスはこれからの計画を話し始めた。


「唯一の手掛かりである謎の雨と霧を調べたいのですが、前回真夜中に発生したので今回も同時刻で調べる必要があります」

「調べると言っても魔力を辿れる訳じゃ無いでしょ?なら何を調べる事があるのさ」

「効果範囲です。今回の精神汚染にあの雨と霧が関係しているのは間違いないと思います。そうでなかった場合はもう何の手掛かりも無いので間に合わないでしょう」

「……なら、これで終わってくれることを願うばかりだ」


 僕とネクミスがそんなやり取りをしているとナフルルと思われる金髪美少女が口を開いた。


「ねぇ。なんか今日のトウヤの雰囲気。いつもと違うわよね?それに、精神汚染の件はそこまで焦る必要あるの?」

「ナフルル。貴女が知る必要はありません。精神汚染の件は早く止めないといけないのは分かりますよね?」

「……分かったわ」


 ナフルルと呼ばれた彼女はあまり納得した様子では無かったのだが、それでも頷いた辺り立場が弱いのだろうか。


 まぁ、トウヤの眷属ではないみたいだし、対等な関係だとは思って無かったけど。……あとでネクミスに聞いてみよっと。



 真夜中に街をふらついていると、今夜も魔力の雨が降り霧が発生した。


 僕は飛行スキルで空を駆けることで雨雲の範囲を確認する。


 ん?あれは……トウヤが通う学院かな?来た方角と一致するし、それっぽい建物だから間違いないと思うけど……何かあるな。


 僕はネクミスたちの近くに降りる。


「スカイ学院だけ範囲外だった。それに、この雨雲の中心が学院だから何かあるのは確実だね」

「ではナフルルを連れて中心部へ向かってください。幻影魔法でなら気付かれずに犯人に近くことが出来ますよね?」

「えっ!?じょ、冗談よね?」


 ネクミスの言葉に慌てて確認をとるナフルルだが、彼女の思いとは裏腹に……


「落とさなければ問題ありません。ほら早く行ってください」


 バッサリと切り捨てられた。


 可哀想だが、今回は手段を選んで悠長にやっている暇は無い。ナフルルを()(かか)えると雨雲の中心部へ飛翔した。


「ねぇ。何かあったの?」


 数分もすれば到着するのだが、その数分の間にナフルルが話しかけてきた。始めは高いところが苦手なのか、怖がっているみたいだが、結界を張ってあることに気付くと落ち着きを取り戻したようだ。


 結界を張ったから会話は出来るけど、正直困るんだよね。トウヤとどこまでの関係なのか分からない以上下手なことを話せないし、違和感を抱かせないように接するのも大変だから話さないのがベストなんだけど、ネクミスのことだし、大丈夫なんだろう。


「……何も無いよ」

「そうなの?でもなんで急に「ほら、もう着いたよ」


 どうやら中心部は教員専用の寮だった。案の定戸締まりはしっかりされており、侵入するのは難しい。


「侵入は難しそうね。でも、教員に犯人がいるって分かっただけでも収穫よねっ」

「まあ、犯人に近づくことが出来るのは確かだね。それが操られている教員だったとしても」

「そっか。精神を弄る相手ならあり得る話よね」

「取り敢えず今日はここまで。明日からは何とかしてここに入れるようにしないと」


 寮に戻ろうとしたところでネクミスと合流した。原因が学院に関係しているから学院にいる間に探ることを話したら力になれないことを残念がっていた。



 翌朝。今日はまだ日曜日だ。当然校舎には入れないのだが、何事も例外というものがある。それが、何かトラブルがあった場合である。


 トラブルとはいえ、明らかに故意だと分かること。例えば殺傷や校舎の破壊はダメだ。一体どうするのか。それは訓練場にある魔法の威力を吸収する石。魔宝石(マジックジュエル)の破壊である。


 魔宝石は色合いさえ合っていれば例え1級の魔法ですら破壊出来ない。それを色合いが合っているにも拘わらず破壊出来ればこれは完全なるイレギュラーだと言い切ることが出来る。何故なら色合いが異なるならともかく、合っているのならば破壊は不可能だとされているからだ。そうでなければ訓練の意味が無い。


「本当にそんなことが可能なの?」

「幸いにも今日は雷だからね。希望はある」


 トウヤは僕の力を引き出せるみたいだが、僕は自身とトウヤが2人とも使える能力しか使えない。だから魔法は風と雷と結界しか使えないのだ。故に風か雷では無かったら本当に無理だった。


「希望って。流石に無理でしょ」

「まぁ、見てて」


 訓練場に辿り着くと数人の生徒が魔法石の壁や床に雷魔法を放っていた。


 ここでどれだけの力を示すかなんだけど。


 ちらりをナフルルを見ると何を悟ったのか残っている数人の生徒の元へ行き僕の方を見ながら少し話をするとみんな訓練場を去っていった。


 これでこころ起きなくやれる。ナフルルに関しては既にネクミスとトウヤが一緒にいる時点である程度バレてると思うし、これ以上気にしていても何とかするのは難しいだろうから全力でやっても良いだろう。


煌めく神雷の刀身(スパークルエスパーダ)


 眩い程の輝きを放つ雷で出来た刀が現れる。


 今の僕の魔力ステータスは精々25倍程度。それだけでは破壊するなんて不可能だ。だが、それを魔法の質で補う。5級と1級では天と地の差がある。1級ですら破壊出来ないのならそれ以上の魔法を使うしかない。


 僕とトウヤが共通して使えるのは超級魔法のみだ。


 僕は他に聖級魔法を、トウヤは魔級魔法を扱うことが出来る。トウヤの眷属には特級を使える者もいるが、とにかく数字ではなく、文字というのはそれだけ使い手が少ない、かつ強力なのだ。


 煌めく神雷の刀身(スパークルエスパーダ)は超級魔法である。


 僕が軽く刀を振るうだけで魔宝石が斬れる。


 切った痕跡だけでは煌めく神雷の刀身(スパークルエスパーダ)を見せる必要が出てくる。なら、雷だけで破壊すればいいだけのことっ!


 刀身を形作る雷が四方八方へと飛び散る。当たった部分が抉れ魔宝石が砕ける。


「これだけやれば十分かな」


 僕たちが出ていく訓練場は半壊していた。

戦闘シーンが無いと書くのが少し楽ですね。

だからと言って更新頻度が上がる訳では無いのですが……

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