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ガーディアン

「それで、レネッフェは何が望みなんだ?」

「望み、ね。本来なら貴方が欲しいけれど、勇者の身体となれば話は別なの」


 だから、と続けて世界樹の近くまで来ると高く飛んだ。降りてきたその手には木の枝が握られている。


「世界樹の枝か?そんなことしても襲われるのはレネッフェの方だろうに」

「確かに本来なら世界樹を傷つけた私がガーディアンに襲われることになるわ」


 そうこうする内にガーディアンが大量に出現する。しかし、レネッフェに焦った様子はない。


「ねぇ。トウヤ。貴方がいなくなってからの6年間で成長してないとでも思ったのかしら?」


 既にレネッフェの姿を捉えているはずのガーディアンはレネッフェの方を向いて一向に動く様子がない。


 どうしたんだ?ガーディアンが出現しているにも拘らず何故世界樹に危害を加えたレネッフェの方を向いてるだけなんだ?戦力が集まるまで待ってるにしても、もうガーディアンは出現してないし……まさか!


「気が付いたかしら?そう。既にガーディアンは私に魅了されてるの」

「つまり、今回僕を呼び出したのはただ話し合いをする為じゃなくて僕を始末する為でもあるってことか」

「大正解っ」


 レネッフェが腕を振るうとガーディアンが僕へと襲いかかる。


 ガーディアンは世界樹で出来ており武器は拳か槍と盾、または弓の3種類を使っておりどれも世界樹製なので耐久性を含めた性能は抜群に高い。


 全部でガーディアンは15体。弓3盾槍6拳6で構成されており、そこにレネッフェも加わる。

 さらに霧の影響で魔力関連での遠距離攻撃は無理ときた。魔法をメインに戦う僕にとっては最悪の環境だ。


 6体のガーディアン(拳)が連携を取りながら殴りかかってくる。ガーディアン(弓)の正確無比の弓矢の援護。ガーディアン(弓)の前にはガーディアン(盾槍)が守るように立ちはだかっている。


「眷属も無しで本来の身体じゃなくて勇者の身体。しかも霧が邪魔で視界は悪く魔法は自由には使えない。ガーディアンの性能はそこまで低くないけれど高度な連携を取れる。流石のトウヤも、これは厳しいわよね?」


 全てのガーディアンが攻撃してきてる訳では無い。しかし、ガーディアン(盾槍)がガーディアン(弓)を守っているからこそ、僕はガーディアン(弓)を片付けることが出来ずにいる。


 ガーディアン(拳)を何とかしたいけど、連携して行う一撃離脱(ヒット&アウェイ)と弓の援護の性で中々反撃が出来ない。


 法剣ニルボロフで応戦するが、防ぐことだけで精一杯だ。


 森を出るにしても戦闘の最中に移動するのはこのレベルの相手には難しいし、出来たとしても少しずつだと思うから今すぐの脱出は現実的じゃない。やるとするならある程度ガーディアンを倒した後か。


 そのときにはガーディアンを全部倒した方が楽かもしれないが、まずはガーディアンを始末する必要がある。


 ただ魔法を纏わせるだけじゃダメだ。聖剣は扱えないけど、魔法剣を試してみるしか、無い!


「魔法剣ブラックフレイム」


 漆黒の炎がニルボロフの刀身に吸い込まれる。ガーディアン(拳)からの攻撃を防御するとニルボロフに触れた拳が黒く燃えボロボロと崩れ落ちる。


「あっつぅ。まだ上手くいかないか」


 魔法剣の火力が制御出来ずに刀身だけでなく柄の部分も熱に侵されてしまった。勇者だから火傷程度で済んだが、他の人なら灰になっていてもおかしくない熱さだ。


 本来なら水魔法の1種類だけから慣らしていくのだが、いきなり炎と闇の2種類。しかも相当魔力を込めた魔法剣ともなればこうなることが容易に想像出来るが、半端な魔法剣では何も状況は変化しない。だからこそ自傷を厭わず一か八か魔法剣を使ってみたのだ。そして、その結果は一目瞭然。ガーディアン(拳)1体の片腕が無くなり連携のレベルは下がる。


 下手に負傷したガーディアンを連携に組み込めばそこから瓦解するなんてことは容易に想像出来る。だから今はガーディアン(拳)5体とガーディアン(弓)3体を相手している訳だが、先ほどよりは大分楽になった。


 火傷を治して次々にガーディアン(拳)を退けていく。


 レネッフェはガーディアン(拳)の連携が上手くいかないことが分かると残った3体を捨て駒に自ら接近戦に持ち込む。


 四方にガーディアン(盾槍)が1体ずつ、出口方面には弓と残りの盾槍が僕を逃がさないように配置されていた。


 レネッフェは主に幻影などのデバフ系統や風、音などの魔法、脚を使った攻撃をする。大抵の者はレネッフェを直視するのは難しいので接近戦や視覚を狂わせる系統の魔法との相性は抜群に良い。それに、接近するだけで風を上手く使い匂いを充満させることで魅了される危険性まである。


 直視出来ないから魔力感知でしか居場所が特定出来ないが、魔力なんて幻影魔法でいくらでも騙せるので遠距離攻撃は基本的には当たらない。接近すれば魅了の危険性がある。一番良いのは遠距離広範囲攻撃だが、それはそれで火力が心もとない。目立った弱点の無いレネッフェは実際エヴァンにやられた魔王より遥かに強いだろう。


 先ほどの会話ではお互い離れていたので魅了がかからなかった可能性もあるが、接近戦を避けられる状況ではない。


 レネッフェの蹴りを避けるとニルボロフを使って魔法剣を発動させて反撃する。


「やっぱりエヴァンの身体でもトウヤには効かないみたいね」


 一瞬だけ目が合ったが、何ともない。エヴァンでも目を合わせると魅了されるまではいかずとも魅了に抵抗する為に硬直を強いられる。しかし、僕は問題無く反撃を行うことが出来た。予想通り僕にはレネッフェの魅了は効かない。


「これは流石に不利ね。魔剣を抜かせることが出来なかったのは残念だけれど、ここまでかしら」


 レネッフェは残りのガーディアン(弓)とガーディアン(盾槍)を僕の足止めに使い撤退していく。


「また会う日を楽しみにしてるわ」


 レネッフェが去ったことでガーディアンも世界樹へと吸収される。


「……僕も帰るか」


 これからレネッフェは勇者パーティに絡んでくる可能性が高い。


 打開策が思い浮かばないのでしばらくはエヴァンと入れ替わったままの方が良いだろう。そうするとエヴァンが僕が通うスカイ学院で過ごすことになる。

 別に休んでも構わないけど、勇者パーティのみんなは教育機関に通うことはなかった。エヴァンが望むのなら学院に行っても良い。その為にギーランに声をかけておいたのだし。


 1週間後。


 これといった出来事は何も無かった。強いて言うならラミューラに僕のことを話した程度か。

 夜にはエヴァンと情報交換をして、昼には魔法剣の練習をする。

 何故かみんな練習に付き合ってくれたけど、暇なのだろうか?まあ、実際ありがたいから、そこはどうでも良いが。


 明日は5月ではなく6月になる。エヴァンたちが解決していたのなら僕は元の身体に戻るけど、違うのなら僕は───


 そんなことを考えながら眠りに就く。


 目を覚ますと空は陰り雨音が聞こえる。3人で王城へと向かう。要件は咎人の件の結果だ。風魔法で雨を避けながら地面を結界魔法の応用で足場を作り綺麗なまま王様がいる玉座の間に足を踏み入れた。

次回はエヴァン視点です。

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