聖剣エルメドート
キリが良いので切ってしまいました。今回は少し短いです。
エヴァン視点
「ようやく聖剣を抜いたか。どうせなら剣聖の方も抜いたらどうだ?」
エマモネスの言葉にラミューラが聖剣に手をかけるが、それを僕が制して前に出る。
「その必要は無い。ラミューラ。君はリリアーナを近くで守ってて」
「……ああ。そうさせてもらう。頼んだ」
ラミューラは悔しいことを隠しきれずに大人しくリリアーナの下へ向かった。
「待ってもらって悪いね。こっちは準備OKだよ」
「ふん!勇者が聖剣を抜いたんだ。俺だってそれ相応の準備がいるってだけの話だ」
ユレイニアにはその言葉通り、これまでよりも濃密な魔力が込められている。
僕はエルメドートに魔力を流し構える。
「魔法剣スチームエレクトロ」
大量の水蒸気が発生しエルメドートの刀身を隠しバチバチと雷も発生している。
エマモネスはユレイニアで魔法剣を無効化しようと試みるが、それは叶わず挙げ句の果てにはユレイニアを伝い雷が走りダメージを負ってしまう。
「はぁ……はぁ……んだよ。そのイカれた火力は!さっきのユレイニアは俺の込められる最大の魔力だったんだぜ?」
「ねぇ。そのユレイニアは本当に魔剣なのか?」
質問を投げかけた際にユレイニアの表情がピクリと動く。
「……どういう意味だ?」
「確かに魔剣のように強い能力があるけど、どうにも違和感がある。それがなんなのかずっと考えていたけど、ようやく分かった。そう、ユレイニアは強すぎるんだ。魔法の無効化と補助魔法の効果を奪い取る。更に魔力の密度変化。流石に君の実力とは、かけ離れている」
言ってしまえば僕たちが苦戦していたのはユレイニアの能力が厄介だから。魔法が通用しないというのはかなりのアドバンテージとなる。
「それに、ユレイニアは糸の魔剣らしいけど、攻撃が単調なんだよ。やるのは精々ユレイニアのスペックに頼りきったもの。そんな戦い方をする魔族が魔剣を出せるはずがない」
僕らだって武器の使い分けをしていて、常に同じ武器という訳ではない。確かに剣しか使わないのは変わらないのだが、魔法剣は僕の能力だし、ラミューラの二刀流だってそうだ。しかし、エマモネスはこれまで糸を使った戦い方なんてしてこなかったはずだ。それを自身を鍛える時間とユレイニアを使いこなす時間を合わせて6年というのはあまりにも短い
「あーあ。バレちゃったかぁ」
蕩けるような声が響き甘い匂いが充満する。何故かその声の持ち主を直視してはいけないと僕の勘が警告をする。
僕は振り向いて仲間たちの様子を確認すると、2人ともボーッとどこかを見つめている。
「わりぃ。レネッフェ」
「謝る必要は無いわよ。バレるのも時間の問題だったでしょう?」
「君は一体何者なんだ?」
「私はトウヤと同じ研究施設の傑作。レネッフェ・ニーヴェルハックよ。これからよろしくね?勇者エヴァン」
トウヤ視点
5月の第三土曜日。
僕はエヴァンからの報告を読んでいた。
どうやらエマモネスが手を引いてると思っていたが、何も関与していないようだ。だとしたら本当に腐った貴族の陰謀なのか?
そう考えていたところ。ネクミスが声をかけてきた。
「トウヤ様。急ぎ報告したいことがございます」
「話してくれ」
手紙を机に置きネクミスの方を見る。
「他のみんなからの報告なのですが、どうやら魂の繋がりとは命や長所と短所、好き嫌いだけではなく、精神にも影響があるみたいです」
「それって!」
すぐに思い浮かぶのはナフルルと調べてるあの街だ。謎の雨と霧。十中八九それの影響で街の人々がおかしくなっている。これは偶然なのか?
「恐らく関係があるでしょう」
ネクミスがこちらの思考を読んでいるかのような返答を聞くと少し考え込む。
「そうだよねぇ」
「どうかしましたか?」
「レネッフェがエヴァンたちの前に現れたって」
「あのクソビッチですか?」
「汚い言葉を使わないの。全く、なんか僕の眷属って彼女に対しての扱いが酷いよね」
「老若男女問わず魅了してる時点でビッチです。トウヤ様を誑かすゴミ「ねぇ。それ以上は怒るよ?」
「すみませんでした」
「反省してくれるなら良いよ。次から気を付けてね。それで、話を戻すけど、レネッフェは全てを無意識で魅了する能力がある。それに対抗出来たのは僕しか居ないんだ」
正確には僕の眷属なら意識を保つことは出来るが、それは僕の命令のお陰でなんとかなっていただけだ。今のエヴァンでは長時間目を合わせたり耳元で囁かれると流石に無理だろう。
だから、唯一レネッフェの魅了が効かない僕と入れ替わることで解決しようと思ったのだが……
「私は反対です。入れ替わったとしてもトウヤ様のお身体では無いのです。トウヤ様が魅了されてしまったらあなた様の眷属である我々にとっては辛すぎます」
僕たちはお互いに依存しあってる。トウヤが死ねば眷属も死ぬ。眷属が全滅してもトウヤは死なないが眷属がいれば死ぬことはない。
それに、眷属になった者は皆魔王軍と人間たちとの戦争の性で滅びた村や町の生き残りだったり、仲間たちから出来損ないと言われ追放された、などの過酷な人生を歩んだ者ばかり。誰1人としてもう捨てられたく無いのだ。
「大丈夫。僕とネクミスたち眷属は僕の魂を共有しているのは知ってるよね?」
「はい。それのお陰でソフィアが眷属になることで生きながらえたと聞いています」
「多分それが原因だと思うけど、エヴァンが使えないはずの影、闇魔法が使えたんだよ」
「……だから問題無いと?」
まだネクミスは納得してくれないか。
「それじゃあ僕の能力が使えなかったらすぐに戻ってくる。これでいい?」
「確かにエヴァンなら意識を保つことは出来ますか。……なら、仕方ありませんね。でも、約束してくださいよ?必ず無理はしないって」
「大丈夫だよ。必ず戻って来るから」
僕はナフルルにこれからはネクミスと調査してほしいことを伝えるとエヴァンとの入れ替わりを実行した。




