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王との謁見と魔王軍残党

 トウヤから彼が人間だった頃の肉体を貰ってから、すぐに王都に帰ることにしたエヴァン一行。そこそこ距離が離れていたので数日程かかるが、次の入れ替わりには全て終わり、なんの憂いも無しに過ごせると思うとそんなの大したことでは無い。


 魔王討伐以前の道中は魔物が出ることも多く、魔王軍の幹部や四天王に狙われるケースがたびたびあったので馬車を用いることはしなかったが、今では普通に使っている。いや、今は普通ではなく馬を魔法で強化して疲れても回復させるという荒業を使っている。そうでもしなければ数日でなんて着ける訳が無い。


「それにしても、いつの間にトウヤの身体を回収したんだよ。それに、エマモネスとも殺り合ったらしいし、なんでオレだけ除け者にしたんだよ」

「ラミューラは探してもいつも何処にいるか分からないので仕方ないと思いますけど」

「ハッ!どうだか。エヴァンは身体貸してるからしょうがないと思うが、リリアーナはトウヤと一緒に居たかっただけなんじゃねぇの?」

「元からトウヤ様だと分かっていた訳でもありませんし、不可抗力です」


 馬車の中でラミューラとリリアーナが揉めている頃、馬車をひとりで操縦しているエヴァンも考え事をしていた。


「エマモネスはなんで今頃トウヤの身体を回収しに来たんだろ」


 エマモネスは魔王軍だったし、元々隠し場所は知っているはずだ。トウヤの身体にそこまで価値が無いから回収してなかったのは分かるが、今更なんの用があるのか。


 そんなことを考え馬車に揺られながら王都へ急いだ。


 王都に到着してすぐに王との謁見を願い出るとその当日に機会を与えられた。これは事前にリリアーナが魔法具で伝えてくれたお陰だ。


 玉座の間には前回と同様に勇者であるエヴァンのみが王の前に来ていた。周囲にはエヴァンを咎人にさせろ、と言ってる貴族たちがいた。十中八九野次馬として来たのだろう。

 本来ならばエヴァンたち勇者パーティ全員出席出来るが、トウヤが欠けた時点でそれは勇者パーティは完成していないとリリアーナが主張しエヴァンとラミューラはそれを肯定した為、トウヤが抜けてからは毎回エヴァン1人で王と会っていた。


「遂に戻ったかエヴァン。どれ、見せてくれ」

「はっ」


 王の元へ歩き真っ黒の棺を丁寧に取り出し、その蓋を開け王に中身を見せた。


 既にトウヤの肉体は冷たく心音もしない。決して生きている訳ではないが、状態がかなり良くまるで当時のトウヤそのものだ。


「ほう。確かにトウヤの身体みたいだな。うむ。これならば問題無いだろう」


 幸いにもトウヤの姿が変わったことを知っている者は魔王軍か勇者パーティしか居ない。トウヤが任務で出くわした者は大抵殺しているからだ。だからこそ人間の肉体でもなんとかなる訳なのだから複雑な気持ちである。


「畏れながら、王よ。お待ちください。それは本当にトウヤの身体なのですか?」

「どういうことだ?ビフスマ公爵」


 待ったをかけた四十代前半の男性の方を見て王はその質問の意味を問う。ビフスマ公爵はエヴァンを咎人にしたい貴族の筆頭であまり良い印象はない。


「その死体には目立った外傷が見当たりません。それに、全く成長しておらずまるで子供ではありませんか」

「それもそうだな。勇者エヴァンよ説明せよ」

「はっ。外傷が無いのはトウヤが既に息絶えていたからです。恐らく魔王が彼の体を操っていたのでしょう。これまで姿を表すことがなかったのはその性でしょう。子供の姿だったは死んだのがその年齢だったと推測します」


 エヴァンは真実を口にしていないが、矛盾があるとも思えない。しかし、ビフスマ公爵はそれがお気に召さなかったようだ。


「フンッ!確かに死んでいるようだが、状態が良すぎるな。これも魔王のお陰という訳か。だが、勇者が適当な人間でトウヤに似た者に作り上げたと言われた方がまだ信憑性が高いわ!」


 作り話なのでそう言われても堂々と否定するのは難しいが、誰にも真実は分からないだろう。


 そもそも誰がトウヤかそうでないかを判断出来ると言うのだという話になる。任命した王が勇者を信じないのはどうなのだろう。と王へ目を向ける。


 他の貴族もビフスマ公爵に同意をしており王としてもこれだけの意見を覆すのは難しいのだろう。


 せっかくのトウヤの気持ちが台無しになるけど、これじゃ仕方ないか。


 僕の意見を信じる貴族はいない。王は信じているようだが、何の確証も無しに無理にでも意見を押し通せば周りに暴君と思われてしまうだろう。


 渋々王は僕へ向けて重い口を開いた。


「済まない。勇者エヴァンよ。そなたの言い分は些か現実味に欠けるとのことで今月末に咎人とする。猶予としてそれまでは自由にするがいい」


 王がなにやら手を上げると衛兵が僕に腕輪を着けてきた。


「それは来月になると装備した者の居場所を指定の場所に強制転移させる。結界や罠を駆使すれば勇者であるそなたでも突破するのは難しいだろう」


 実際はそうでも無いが面倒なことになるのは避けられないだろう。


 来月からは姿を消してひっそりと生きることを考えながら王との謁見は終了した。



 エマモネス視点


 エヴァンから逃げた後エマモネスは魔王城の跡地に来ていた。この城は既に廃墟となったというのが人間の共通認識だが、その地下では元魔王軍の実力者の溜まり場となっていた。


「全く、なんで勇者があの場所の入り口を知ってたんだよ。あれは魔王軍でも限られた奴しか知らないんじゃ無かったのかよ」

「知らないはずよ。今となってはもう私と貴方しか、ね」

「あ?レネッフェか。だが、現に俺はエヴァンとリリアーナに出くわして撤退を余儀なくされたぜ?」


 話しかけて来たのはエマモネスがつい先程行ってきた研究施設の()()であるレネッフェ・ニーヴェルハック。

 彼女が何故生き残れたのか全く想像がつかないが四天王に、いや、魔王にすら匹敵する力を持つと言われている。それでも四天王にならなかったのはその能力が厄介だからだ。


 レネッフェはサキュバスなのにも関わらず誰とも交わらない欠陥品であった。その魂を歴代唯一の女性の魔王の身体に入れたところ、魅了スキルが更に強力になった。これを使えば直視した生物は勿論、抵抗力の無い者は声を聞いただけでも彼女に屈服するだろう。しかし、魔王は自分が魔王たらんとする為にそれを良しとせず決して表には出さなかった。彼女がいればもしかしたら勇者も敵では無かったかもしれないのに。


 レネッフェはピンクの髪に金と真紅のオッドアイで耳の少し上には立派な角が生えている。身体つきは出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる理想の身体。声も脳が蕩けるように甘い。


 何故見えるのか。それはレネッフェがこの六年間で力を抑えられるようになったからだ。それでも目を合わせたり十秒以上見れない。


「貴方は覚えているかしら?トウヤが突然行方不明になったことを」

「それがどうかした……って。まさかまだ生きているのか?」

「その可能性が高いわね。あの場所を知ってる人物は貴方と私を除けば彼以外死を確認してる」


 エマモネスは誰にも話してないし、レネッフェに関してはそもそも伝えることも難しいだろう。何よりメリットが無い。


「俺らが人間に歓迎されるってことはあり得ねぇだろ」

「それもそうね」


 魔王軍の残党とはいえ四天王の内トウヤ以外が討たれたということはその実力者も倒されたということなので、ここのトップはレネッフェで2番手がエマモネスだ。まあ、レネッフェは表に出たくないのでエマモネスがトップだと思っている者が殆どだが。

 今回エマモネスが動いたのはレネッフェの頼みだったからだ。


「それより、なんで今頃トウヤの身体なんて欲しい、なんて言い出したんだ?」

「……何だっていいでしょ?貴方には関係ないわ」


 レネッフェの顔が若干火照っていることに直視していないエマモネスは気が付かないのだった。

まだまだ終わらない勇者の危機。


 余談なんですけど、ローファン書こうと思ったら帝国とか皇国とか貴族を取り入れることが難しいことに頭を悩ませています。

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