愛の重さ
要素の【学校メインではない】を無くしました。本来は勇者との入れ替りがメインで世界を旅する感じにしたかったんですけど、何だかんだで学校の要素が絡んでくるので少なくとも主人公であるトウヤは学校メインになりそうです。
さて、エヴァンは僕からの贈り物を見て喜んでくれるだろうか?自らの血液をあげるって客観的にみてかなり性格が歪んでるよね?しかし、僕は吸血鬼なのだ。眷属になら僕の血液はもはやご褒美なのだ。あれ?これは危ない発言なのでは?
そんなことをああだこうだと考えながらベッドの上でのた打ち回る。そんなことをしていると控えめなノックの音が聞こえてきた。「どうぞ」と言うとネクミスが入って来る。
「トウヤ様。眠れないのですか?」
「まあ、少しね」
枕を携えた寝間着のネクミスをみれば一緒に寝たいことが窺える。
僕を心配して……ということかな?可愛い眷属だな。まぁ、僕の眷属は皆可愛いのだが。
「僭越ながら、私と添い寝をして頂けないでしょうか」
「良いよ。おいで?」
起き上がって端により布団を持ち上げると頬を染めながら布団に入って来る。
「それで、先程恋する男性のように、のた打ち回っていらした理由をお聞きしても?」
「……ネ、ネクミス?」
冷たい声で僕の耳もとで囁いてくる。
こいつ、逃げ場の無いベッドでそんなことを聞いて来るのか。まあ、何一つやましいことなんて無いのだからこれは良い経験になったな。次回からは要注意しなければ。
「い、いや、恋なんてしてないよ。ただ、エヴァンの身体でも何故か収納魔法が使えたから僕の血液を置いてきたんだけど、それって客観的に見てどうなのかな?って思って」
「ふふ。そんなことでしたか。何も問題ありませんよ?トウヤ様の眷属たる我々がその血を貰って喜ばない訳がありません」
「そ、そっか」
それまで向かい合って囁きながら話してしたけど、羞恥心が限界に至り背中を向けてしまう。
「とりあえず今日はもう寝る」
「はい。お休みなさいませ」
翌日。朝食を済ませてから早速入れ替わる。
「今日は男性なのか」
いや、残念とか思ってないよ?
机を見てみると案の定手紙が置いてあった。
『トウヤへ
君の血液は助かったよ。ありがとう。ある程度自由にしていいけど、絶対に変なことしないでね。もし、性別が変えられたとしても基本的には男性でお願い。
追伸
裏に使える魔法剣の技を書いといたよ
エヴァンより』
裏を見れば技名、やり方、その効果などが書かれていた。
ありがとうエヴァン。さて、では早速散策にでも行くかな。
特に目的地を決めていないのでとりあえず外に出ようとしたのだが、扉を開けた途端1人の女性とぶつかってしまった。
「すまない。大丈夫?ってリリアーナ?」
スラッとした体型だが、出るところはしっかり出ている大人びた姿。見覚えがある。彼女は勇者パーティで聖女を務めていたリリアーナ・シャーノルンだと思う。
「こちらこそ、ごめんなさい。どうしたの?エヴァン」
「い、いや何でもないよ」
「それなら良いのですけど」
「それじゃまた」
ボロが出る前にそそくさと退散しようとする。しかし、何を悟ったのかリリアーナはそれを許してはくれなかった。
「ちょっと待ってください。私も一緒に行きます」
「え?」
「ラミューラは既にどこかへ行ったみたいなので私達2人ですが、トウヤを探しに行くのでしょう?」
僕を探す?どういうことだ?もしかして人間の方の身体のことかな?なら場所くらい分かると思うし、どうせなら回収しておくか。
「勿論。それじゃあ行こうか」
外へ出てみると、ちょうど僕が人体実験の被験体になっていた魔王軍の研究所の隠し通路が近くにある町のようだった。
6年も経過したのに、雰囲気は変わらないな。
「どうかしたのですか?そんなにキョロキョロと見回して」
「いや、何でもないよ」
危なかった。確かに見慣れた(?)町でそんなことしないよね。
僕は町から出ると迷わず近くの森……ではなくて、町を囲む壁に沿って西側へ行く。この町は南北にしか門が無い。その理由は東には森が、西には広い湖があるからだ。どちらも魔王軍の影響で出来たものである。
ここは僕が勇者パーティを抜けることになる直前の町。だからこそ、ここの地形は未だに覚えている。何故なら長い間ここら辺で魔王軍の仕事をしていたのだから。
確か、このあたりだったはず……。
僕は記憶を頼りにして魔王軍の研究所へ行く為に湖の中へ入っていく。勿論風魔法で空気は確保してある。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
慌てた様子でリリアーナがついてくるのが見えたので、空気の確保と服が濡れないようにする為に風魔法を使う。
僕の記憶が確かならリリアーナは光、聖霊、結界などのサポートが得意な魔法を主に使っていたが、こういったトラップ?は僕が対応していた。僕が抜けてからはエヴァンと協力してやっていたという話を耳にしたことがあるから何もおかしい事では無い……はずなんだけど。
「まるでトウヤみたいな魔法の使い方ですね」
「……え、使い方?」
随分昔のことなのになんで覚えてるんだろ?というか、大前提として、使い方って差があるの?
「タイミングや魔力の調節などのことです。エヴァンは基本的に大雑把でしたよね?」
「そ、そう?」
湖の底を歩いていくと大きな石が見えてきた。そこから僕たちは湖に住む魔物に注意しながら左に曲がる。
「それにしても、注意の仕方といい、歩き方といい、そんなにトウヤが好きだったんですね」
「……?どういうこと?」
「それだけトウヤに似ているってことです。つい先日まではいつもと変わりませんでした。一体何が違うのでしょうか」
一見何も無いような場所で、僕は手をついて魔力を流し込む。すると音もなく目の前に穴が次第に空いてきた。これは闇魔法と結界魔法を用いたもので隠し通路の出入口にはもってこいの組み合わせだ。
中は日光が届かないが所々に光源として生物の魔力に反応して、ある一定の距離に近づくと自動で光る魔法具が設置されている。なので以前は薄暗い程度の明かりは確保されていた。しかし、もう長い間使用されていなかったからなのか、僕が近づいてもそれが機能することは無かった。故に光魔法の光源を幾つか漂わせる。
「ここは本来私たちは知り得ないはずですよね?何せヒントが何一つ無い状態でこのようなギミックは解けないはずです。現に私ですら分かりませんでした」
「……何が言いたいのかな?」
僕たちは隠し通路を歩いて行くと段々水位が下がり漸く水中を抜け開けた部屋に出た。
「貴方はトウヤなのではありませんか?」
「……そうだと言ったら?」
僕はリリアーナと向き合う。
元々リリアーナやラミューラには隠し通すつもりでは無かった。だからこそ僕しか知り得ないであろうここにも何の躊躇いも無しに来ることが出来た。
「やっぱり!そうだったのですね!」
僕の正体を知った途端に僕に抱きついてくる。
な、なんだ?いきなり。
「ど、どうしたの?リリアーナ」
「リアと呼んでくださいませ。トウヤ様」
「様付け!?」
僕たちは基本的に鎧ではなく動きやすい好きな服に付与が施されたものを着ている。そもそも子供の頃から勇者パーティをやっていて鎧を使うケースが無かったので当然なのだからくっつかれると些か困ってしまう。
リアというのはリリアーナの愛称で、何故かそう呼ぶことを許可されていた。それがパーティを抜ける前日だったから呼んだことなんて数回しかないけど。
「リ、リア?とにかく離れてくれない?」
あくまでもこの身体の持ち主はエヴァン。僕が中にいる状況でこういうことはダメだ。
「だーめーでーすっ。トウヤ様は恥ずかしがり屋さんなんですからっ」
本当にどうしたんだろ?昔からエヴァンに気があるとは思っていたけど、どうしてこれを本人ではなく僕が中の時にやるのだろう?
「こういうのはエヴァンが中の時にやる方が良いんじゃないの?」
「どうしてそんな酷いことをおっしゃるのですか?」
「いや、でも恥ずかしいとかそういうレベルじゃないでしょ?」
「恥ずかしい?……もしかして私がエヴァンを好きだとでも?」
「え?違うの?」
「違います。私が好きなのはトウヤ様ただ1人です」
唐突な衝撃的事実の暴露。
いつもエヴァンの話ばかりするからてっきりそうなのかと思っていたけど。せっかくだから聞いてみるか。
「なら、どうして僕と雑談するときにエヴァンの話ばかりしたの?」
「そ、その、エヴァンはトウヤ様の幼馴染みなので、共通の話題として最適かなと思いまして」
確かにそうかもしれないけど……もっと何か別の話題があっただと思うけど、まあ、そういうものなのだろう。
「そうなんだ。せっかく告白をしてくれたところ悪いんだけど、その気持ちには答えられない」
「そう……ですか」
確かに彼女が僕の初恋だったかもしれない。しかし、恋心という意味では僕にはもう彼女への未練が欠片も残っていないのだ。
「ですが、諦めませんよ?どうしてトウヤ様がエヴァンの身体にいるのか分かりませんが、きっとそれが理由なのでしょう?」
「え?いや、そういう訳じゃ」
「なら!どうしてなのですか?」
「僕はリアを愛してないからだよ」
「フ、フフ、フフフフフ。それなら私がトウヤ様に愛して頂けることが出来たらいいだけの話です!」
あ、リアが壊れた。
「私の魅力を貴方に一生懸命お伝え致します」
「あ、うん。もう、好きにして良いよ」
これは何を言ってもダメなヤツだ。
リリアーナが誰かの名前を呼ぶときに敬称をつけるかどうか、めっちゃ悩みました。違和感あったら修正するので教えてください。




