助言と不吉な予感
「うーん。中々難しいな」
スキルポイントを消費することを決めたのだが、肝心のスキルまたは魔法をどんなものにすればいいのかが思い浮かばない。
「無難に異世界転移とかで良いのでは?」
「いや、その場合だと消費SPが足りなくなるみたいだ。なんとかして効力を抑えないと」
ただ漠然と世界を渡る能力ってなると、複数の世界に行けることになるから難しいのか?
僕には四天王の頃のレベルは500で、その分のSPもあるから大丈夫だと思っていたけど、文字通りの意味で消費するSPの桁が違い過ぎる。
「どうすれば効力が落ちるんだ?」
「1度行ったことのある、という制限を付けるのは如何でしょう?」
「なるほど」
早速ステータス画面から操作してスキル習得しようとするが……。
「……4桁か」
先程よりはだいぶ少ないが、足りない事に変わり無い。
その後、ネクミスと一緒に考えていたのだが、良い案は出ずに翌朝を迎えることになってしまった。
放課後。僕は部屋に閉じ籠って考えるよりも外で考えた方が良い案が浮かぶと思い街をぶらぶらと歩いていた。林檎味のソフトクリームを片手に。
「そういえば、エヴァンはどうやって僕を転移させたんだろ?」
確か、僕の時間を遡って幼児化させレベルもリセットし、最も魔力が満ちる時間帯で行っていた。
「……膨大な魔力が必要ってことか」
僕の種族補正は魔力×100。それでも足りずレベルを下げたり体を巻き戻すことで更に魔力を抽出してなんとかってところだろう。
魔法技能やスキルがリセットされていない理由は魔力にならなかったから。密度に関しては恐らくレベルを下げた影響だろう。
「エヴァンと同じ方法は不可能。だけど、後少しのはずなんだ」
世界の指定だけでは不十分。危険を知らせる為にやるんだから僕自身が転移しなくても良いかもしれないが、物を転移するとなると座標の指定をどうするののか。という問題が出てくる。
「6年たった今、全く街並みが変わって無い訳がないし、そもそもエヴァンの居場所がわからないから座標の指定は不可能に近い」
くっ……手詰まりか。
「まだ可能性が無い訳ではないよ?」
「え?」
耳元で囁くようなソフィアの声が聞こえた。
振り返ると黒いスーツを身に纏っているソフィアの姿が見える。
元々人気の無い場所ということと日が沈み暗くなって来たことも相まって周りには僕とソフィア以外誰もいない。
ソフィアは僕のソフトクリームをひと口食べると僕にヒントをくれた。
「私達眷属と、その主人であるトウヤ君はトウヤ君の眷属との命約というスキルで意識の入れ替わりが出来る」
「……?それがどうか……そういうことか!」
眷属との命約を強化するスキルを作れば確かに僕の意識だけが入れ替わる形で世界を渡れる。
「分かった?」
「多分、これで正解のはず」
ステータス画面から操作してスキル作成を試してみた結果、無事にスキルを作れた。
「よし。ありがとうソフィア。助かったよ」
「良いよ。トウヤ君が喜んでくれるならそれで」
「それにしても、どうしてここに?それに、僕が何を悩んでいるかなんてどうやって分かったの?」
「……そういえば、トウヤ君は私が何をしてるか知らなかったっけ?私は今、闇ギルドのトップなんだっ」
「へぇー闇ギルドの…………え?」
「数ヶ月前になったばっかりだけど、どう?凄いでしょ?」
闇ギルドは非合法の取引が行われるギルドで、ここで手に入らないものは無いと言われている。何でもありのギルドのトップ。それもたったの約6年で。これは恐らく僕が想像するより遥かに凄いことなのだろう。
未来を視て姿を変えたり消したり転移すら出来るし魔法だって沢山使える。レベルだってこの世界の人達からすれば物凄く高い。ハイスペックなのは認めるけど、本当に凄い。
「ああ。凄いよ。おめでとう」
「ありがとう。それで、質問の答えはもう良いよね?」
闇ギルドには数多くの情報が入るし、レニーナとのコンタクトも取りやすいだろうからってことかな?
「そうだね。それにしても、どうしてここに?」
「トウヤ君が困っていたら助けるに決まってるでしょ?」
ソフィアは僕に微笑みかけてなんとも頼もしいことを言ってくれる。僕はソフィアに助けられてばかりだな。
「そっか」
「そういえば、トウヤ君」
「どうした?」
「ナフルルとかいう女を奴隷にしたって聞いたんだけど?」
ソフィアが碧瞳で僕を突き刺すように見てくる。一見、笑っているように見えるけど、目が笑ってない。
「い、いや、そのソフィアが懸念しているようなことは一切無いよ?」
「女を奴隷にしたことは真実なんだ」
「……」
「ねぇトウヤ君。他のみんなは優しいから許してるけど、それに甘えて相談せずにそんなことして。本当は悪いって思って無いんじゃないの?」
「それは……」
「今回は経緯が経緯だから見逃してあげる。誰かの為に行動するのはトウヤ君のカッコいいところの1つだからね。でも、これからは気を付けて、ね?」
「ああ。勿論分かってるよ」
この世界で僕の立場を考えると婚約とかが殺到するだろうから、念を押して来たのだろうか?僕はもう身内(眷属)だけで十分だから、わざわざそんな災いの種を蒔くようなことなんてしないけど。
「それはそうとトウヤ君。私に何かご褒美があっても良いと思うけど?」
「な、何が良いの?」
本来ならばその月を担当する眷属以外は僕と接触することはダメなのだが、助けられたことには違いないので、食いぎみにご褒美を所望してきたソフィアに少し戸惑いつつも普段通りに何が良いのか聞いてみる。
「いつもなら自分の月まで待つけど……。トウヤ君まだ夕食取って無いでしょ?一緒に食べよ?」
僕もそろそろ夕食を取ろうかと思っていたところなので特に異論は無いけれど。どうも違和感を覚えてしまう。
せっかくのご褒美をあまり時間を取れない今、それも要望が夕食を共にするというものだ。
もしかしたらソフィアが僕の悩みを知っていたのは僕が勝手に闇ギルドの情報網(恐らくレニーナのお陰)に引っ掛かったからそれを見かねてアドバイスをしに来たとばかりに思っていただけで、他の理由があるのかもしれない。
まあ、何の証拠も無い空想なのだが。
「そのくらいならわざわざご褒美にしなくても構わないと思うよ?」
「ううん、ただの夕食とは少し趣が違うので問題ないよ?」
「え?」
普段の夕食とは違うって凄く不安なんだけど。
今、僕とソフィアはスカイ学院入試の帰りにシオンとシノンと行った夜はレストラン、昼は喫茶店のお店、理想に来ていた。
「ソフィアもこのお店知ってたんだね」
「ギルドの大半の人がこういうところに興味無いだけで興味のある実力者の中では有名なところだから」
なるほど。だからミシェルが噂を耳にしたのか。
あれからちょくちょくアイディアルに寄っているけど、あまり他のお客さんを見なかったから一体どこから聞いたんだろ?ってずっと思ってた疑問がようやく解消された。
今の時間帯ならレストランなので夕食はここでも問題無いだろう。
ソフィアに促されるままにアイディアルへに入店する。
他のお客さんはいない為結界を張れば内密な話でも問題無いだろう。
向かい合わせの席に座り適当に注文して料理が運ばれて来てから防音結界を張るとソフィアが意を決した雰囲気で口を開く。
「ごめんね、トウヤ君。先に謝っておく。私が今日君に会いに来たのは予知夢を視たからなんだ」
半分にするようにスプーンで切るオムライスを見ながら僕に語りかける。
「知っての通り私の予知夢は確実に起こる出来事で私ではどうしようも出来ない。断言するよ。トウヤ君がエヴァンと入れ替わって真実を知るとき、――――――――――。って」
ふわふわとろとろの半熟卵が切り口から流れる。
ソフィアの言葉でなければ「そんなことない」と言えたことだろう。だけど、何の根拠も無くソフィアの言葉は真実なるって心のどこかでは思ってしまっていた。
「だから、今日なんだよ。いつも通りの君との最後の晩餐になるのかな?って思っちゃったから。さあ、食べよ?」
ひと口サイズにすくったオムライスを僕へと差し出す。
「……そうだね」
確かな不安を胸に今はただソフィアとの夕食を楽しもうと思うのだった。
なんだかダークファンタジーっぽい展開ですね。まあ、今のところトウヤが闇落ちすることはありませんから杞憂に終わると思いますが。




