波乱の予感
サブタイトルっていつも的を射てるのをつけにくいんですよね。正直大変
ナフルルの実質、僕に貢ぎます宣言を聞いた後、昼食代を渡してから放課後に合流する約束をして別れた。
無論、これらのお金は僕が稼いだお金だ。
別れたのは決してナフルルと一緒に登校したくない訳ではなく、シオンとシノンを待つ必要があるのだ。
さっき追いかけた理由はあくまでもなんとなく、というか暇潰しに近い。ナフルルからしたら傍迷惑な話だが、結果的にハンター試験を受けることが出来そうなので、トントンだと思いたい。今度アイス食べに誘うか。
ナフルルと別れてから1時間後にシオンの部屋へと向かった。
シオンはいつも7時半に起きる為、それを見計らって部屋へ入る。
「シオン義姉さん、入るよ」
シオンの寝室に3回ノックしてから扉を開ける。中は薄暗く辛うじて家具の位置が分かる明るさだった。が、僕の魔眼を使えばそんなこと関係なく余裕で見える。
「ぅん?トウヤ?」
寝ぼけているのは確実だろう。なんともまあ無防備な姿で寝てることか。いや、睡眠中はしょうがないけどさ。というか、僕が非常識なだけで、女性が寝てる最中に寝室に入るのは家族とか恋人くらいのはずだ。あれ?それなら僕はセーフじゃない?
シオンが微睡みの最中、僕を見つける。
「あれ?でも、なんでここにトウヤが?もしかしなくても夢かしら?」
「え?いや、夢じゃ」
夢じゃないことを伝えようとしたのだが、それよりも早く使い魔である黒色の妖精であるフローシュを呼び出した。
妖精とは色に応じて得意魔法が違う。赤は火、青は水といった感じだ。そして、黒は闇を得意とする。闇はデバフを最も得意とする魔法だ。
「フローシュ、力を貸しなさい」
シオンが命令したと同時にフローシュが魔法を発動させる。
身体が重い。僕をどうするつもりだ?
嫌な予感しかしない為、全力でシオンを起こすことに決めた。
僕がシオンに知られている魔法は水、風、闇、雷の四種類(細かく分類すれば氷や影もあるが)。その中以外の魔法を使うことはSPを消費し習得した、または特殊スキルの効果の二択で回答を迫られることになる。魔法具を使って対処しようにも出せと言われたら困るのは僕だ。
殺傷能力の高い雷は選択肢から除外して、とりあえず風を身に纏うことで身体を風で支え、機動力の低下を誤魔化すことにした。
最優先なのはシオンの眼を覚ますこと、その為に効果的なのは水を顔にかけるしかない。
シオンは寝ぼけている為、ベッドから出る訳ではないが、魔法を放ってこない訳ではない。つまり主な相手はフローシュになるだろう。
フローシュは次々にデバフを僕にかけてくる。お陰で力はどんどん入らなくなっていくし、魔力の出力も低下していっている。まぁ、魔力は元が桁違いなのでどうでもいい。
闇魔法は攻撃系統なら相殺、防御なら破ることが簡単に出来そうなのだが、付与やデバフ系統は相殺出来ないし解除しようにもそれは主に光魔法の仕事である。
下手に低火力の水魔法を射つのは悪手か?連射すればなんとかなるかもしれないが、後処理が面倒だ。でもここは工夫さえ出来ればそれは悪手にはならないはず。そして、それは既に準備完了だ。
まずは普通にシオンへと水を射つ。が、案の定フローシュは闇に質量を与え水を静かに弾く。
彼女は主人に気を使って対処しているのか。中々に優秀だな。僕の眷属にも妖精姫がいるけど彼女と比較するのは可哀想か。そもそも上位種だし。
フローシュの評価を上げてから弾かれた水を僕が纏っている風を操作することで、シオンの顔へ水をかけることに成功する。勿論水は少量だ。
フローシュがやられた!と言っている様な驚いた顔をしている。
「冷た!もうなんなのよ!……ってあれ?トウヤじゃない?もしかしなくても夢じゃ無かった?~~~ッ!」
僕を掴まえて一体何をしようとしていたのか。
眼が覚めたシオンは僕を見ると顔を赤く染めて枕に顔を押し付けて隠す。
「ほら、シオン義姉さん。準備してきて」
恥ずかしがる義姉をお構い無しに強引にベッドから起こす。
「う~分かったわよ~」
30分程度で支度を終えたシオンと一緒にシノンの部屋へ向かう……なんてことはしない。シオンに一人で呼んでもらい。僕は食堂で待っている。
数分後、2人が食堂に着いたので存在隠蔽などのスキルを解除する。
「おはようございます。トウヤ兄様」
「おはよう。シノン」
それぞれ朝食を注文すると料理を受け取り席に着いた。
「今日はどうなされたのですか?」
「それは私も気になるわ。何故か起こしに来るし」
まあ、2人が気になるのも無理はない。僕はあまり目立ちたくない(僕の眷属たちのヘイトが簡単に貯まってしまう為、結果的にそういうことになっている)のでいつも存在隠蔽を使って気配とか姿を隠しているのだから。
「ああ、ナフルルにハンター試験を勧めてたんだよ。中々仕事が見つからないらしくて」
嘘ではない。しかし、それが原因で朝早い訳でもない。が、たまたまということなら信憑性が全く無いはずがない。
「まだトウヤ兄様が養っていたのですか?追い出してしまえば宜しいのに」
「シノンは厳しいわね。まあ、私もそこまですることはないと思うけれど」
まぁ、僕だって普通の人間だったらそこまで面倒を見なかったけど、ナフルルは優秀だし、僕の秘密を知ってるし、立場的にも眷属の下位互換みたいなものだから、別にいいかな?って思っていた。
「うーん。同じ霧の栄光の天気だから、何かあってもカモフラージュ出来そうだから僕にもメリットはあるんだよ」
「トウヤ兄様は目立つことを嫌いますよね。トウヤ兄様にメリットがあるなら構いません」
「お金についても、これから稼がせるつもりみたいだし、私もそれなら構わないわ」
2人の許可を得てから登校し、教室に入り席に座るといつも通りホームルームの連絡等を聞いてからいつも通り授業が始まった。
学院生活に特に不満は無い(女子生徒のアプローチを除く)のだが、ひとつだけ悩み事がある。それは、
「ん?どうかした?悩み事があるなら力になるよ?」
黒髪に紫の瞳を持つ美少年でイニヒブル公爵家の長男であるギーラン・イニヒブルだ。そして、僕の悩み事の原因でもある。
クオリティの違いはあるが彼も僕と同様にこっそりと登校している。僕は誰にもバレてないけど、ギーランは唯一、ナフルルにだけバレてしまっている。
僕はあくまでそれに困っていた話を聞いただけで、僕がそれを解決しようと動いた訳ではないのだが、副産物としてなんとかなってしまったのだ。
しかも、僕は「たまたまだから気にしないで」と正直に話しているにも関わらず「借りを作っちゃったね。何かあれば僕に言ってよ」と言われている。僕の悩みとはこれのことだ。ギーランには真実を見抜く真実の瞳を持っているはずなのに何故こうも容易く借りを作ってしまうんだよ。
僕はそんなこと別にどうでもいいのに。
……まあ、友人としてなら好ましく映るのは確かだ。
「いや、何でもない。そう言えば、明後日だったよね」
「明後日?……ああ生徒会か。まさか、不安なの?」
以前役割決めの為に生徒会の集まりがあったのだが、生徒会室へ入ると役割が書かれた紙を顧問の先生から貰っただけだったのだ。
集まりとは一体?まあこれといった用事は無いのかもしれないけれど。
つまり、明後日、漸く初の顔合わせという訳なのだ。
「不安がない、と言ったら嘘になるかな」
男の中で百万分の一の確率で魔法が使えるというこの世界、約120人しかいない男性の魔法使い。
僕は外部から来た為、その確率には当てはまらないが、貴重であることには変わりない。
昔々の魔王が何を思ったのか男性の魔法使いが産まれにくくする魔法を世界中に使ったことが原因らしい。それで基本的には女尊男卑だが、男性でも魔法使い限定で男尊女卑の世界だ。
世の中には長寿種が存在する。人間以外の上位種がそれに当たり、僕と眷属のほとんどがそうだ。例外は身近なところで言うならレニーナの幽霊が分かりやすいだろう。
上位種とは主に突然変異によって起こる。産まれながらに上位種な者もいれば突然上位種になる者(進化した者)もいる。進化のきっかけは未だに解明されていない。
それから、貴重な存在というのは甘やかされるものだ。ギーランのイニヒブル公爵家は例外だったが、もっと性格が歪んでいる奴がいてもおかしくない。まぁ、ギーランも相当闇が深そうだが。
その相当稀有な存在が生徒会長であるラティアス・ノルザンシル。彼は産まれながらの白虎という上位種らしい。
そして、白虎という名に相応しい白い髪に翡翠の瞳を持つイケメンだし、実力もあるのだが、彼はいわゆるナルシストなのだ。別にそれ自体は構わないのだが、そこに悪い貴族特有の自分が一番偉い、みたいな思想を持っていて、生徒会で暴れているとか。
はっきり言って生徒会に入りたくない。
「分かるよ。会長でしょ?」
ギーランも僕と同じ思いなのかどこか遠い目をしていた。
次回はナフルル視点ですかね。




