お金の使い道
もし既にお金の価値とかランクを書いていたとしたら教えてください。一応さらっと読み返したのですが、見落としがあると思うので。
レニーナと別れた翌日。レニーナと入れ替わる様にやって来たのは鬼人のネクミスだ。
ネクミスは今この国、の第6騎士団の副団長を務めている。
それぞれの騎士団には特色がある。
オールラウンダーで全てに優れる第1騎士団。
純粋な戦闘能力に優れる第2騎士団。
魔法に優れる第3騎士団。
様々な魔法具を使いこなす第4騎士団。
魔物を使役する第5騎士団。
曲者だが、実力者を集めた第6騎士団。
第1騎士団以外は皆平等な地位でその末端である第6騎士団だが、ここは中々にフリーダムな騎士団で、主に暇らしい。そもそも騎士団が存在する理由としては魔物の始末くらいしかないのが現状だ。
まぁ、魔族とも和解して平和な世の中になったから良いことだろう。
それが原因なのか第1騎士団はたったの12人しかおらず、第2、第3騎士団だって数百、第4騎士団は百数十人、第5騎士団は数十人、第6騎士団は十数人しかいない。つまり全部で千人程しかいないのだ。その分皆実力者だが。
しかし、完全に無意味という訳ではない。冒険者やハンターのお陰で魔物の処理は楽だが、あまり人気がない魔物を狩る必要があるのだ。
具体的には石や土で出来た人形や呪いを持つ魔物などだ。
これらの魔物はドロップアイテム(魔物を倒した時に現れるアイテム)も経験値も美味しくない。加えてそこそこ強いし、倒すのが面倒な魔物という訳でそれぞれの騎士団から派遣し対処しているのだ。
因みに、基本的にはそういう魔物を第2~第5騎士団が主に処理して第1と第6は緊急時の対処に分担(?)されているだけで、第1と第6以外はそこそこ忙しい。
そんな暇な騎士団の副団長を務めているネクミスは今、僕に金貨が入った袋を差し出していた。
因みに、お金は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四種類で、銅貨一枚でパンがひとつ買える。銀貨は銅貨の100倍の価値で、金貨は銀貨の100倍の価値があり、白金貨は金貨の100倍の価値だ。
「主様、今年の分です」
黒髪ロングの紅眼で額から一本の角が伸びているかなりの美人がこうして養ってくれることを憧れる人は少なくないと思う。だけど、いざ実際にその立場になると申し訳無さが凄い。
「い、いや毎回お金はいらないって言ってるでしょ?ネクミスに使って欲しいな」
「いえ、私達眷属は主様の所有物の様なものです。故に、私のものは主様のものです」
本当に忠誠心が強い。僕の言うこと聞いてくれないけど。あれ?これって忠誠心が強いのか?
「じゃあ、僕の為にネクミス自身が使ってくれないかな?」
「主様の為に私が、ですか?」
「うん。ほら、世の中には眷属を奴隷みたいに扱う奴だっているでしょ?」
「以前、主様が消していった奴らですね?」
吸血鬼とは自身の眷属への絶対的な命令権を持つ為、眷属を奴隷としている吸血鬼は一定数存在する。そんなゴミの様な奴は大抵雑魚なので四天王の時に駆逐していった記憶がある。
「金貨とか貢いでくると、そんな奴とやってることがあんまり変わらないんだよ」
「強制されているのなら同じですが、そうでないなら忠誠心です」
た、確かにそんな気がする。でも、それは僕の望みじゃない。
「でも、そのお金をネクミスが使うことで、みんなが羨ましく思われるってことは僕の評価も上がるってことでしょ?」
「……その通りですね。では、主様の眷属としてありがたく使わせて頂きます」
ネクミスは深くお辞儀をした。
「あと、これはネクミスから貰ってた分ね」
僕は影から金貨の詰まった袋を3つ程取り出した。
3つの理由としてはネクミスから預かっていた金貨を入れていた袋にまとめた結果だ。騎士団は入ってすぐに副団長になれる程甘くないのだが、一袋約250枚くらいある。まぁ、二年間で副団長だから甘いのかもしれないが。
よし、これでようやくみんなが僕にお金を貢ぐことを防ぐことが出来そうだ。
初めはみんなお金を貢いでくれていたのだけど、僕が拒否していることを理解すると止めていってくれていたのだが、ネクミスだけ中々止めてくれなかったところを今日、なんとか出来たのだ。
その成果として、主に服やシャンプーなどの自身を綺麗にするものに使ってくれている。何故か娯楽には使うことが無かった(オシャレは娯楽かもしれないが)。
ネクミスの気が変わらない内に金貨を渡すと、いつもより早いが、足早に食堂へ向かった。
この学院の寮は男女で別れていない。一応男子生徒は最上階になっていて、それぞれのクラスに10部屋ずつ与えられている。
そして、ここの寮は一年生のみなので、今は僕しかいない(正確にはナフルルと同居している)。
ナフルルは必ず僕より早く起きて身だしなみを整えてからすぐに部屋から出ていく。学院の校舎が開くのは6時半なので、それに合わせているのだ。(8時半までに登校)
これは僕と同居しているのがバレるとかなり面倒だからだ(既にシノンとシオンにはバレているが)。
そして、今はナフルルが出ていった直後。いつまでもこの階層に留まっていては結局部屋にいることと等しい為、どこかへ行かなければならない。しかし、シノンの部屋は論外として(前回部屋に行ったら第6感と万物を掴む魔法の腕で捕まったから)シオンはこの時間帯なら寝てるだろうし、せっかくなのでナフルルに着いて行くことにした。
階段を降りて食堂へ向かうとサラダのみを食べているナフルルに遭遇した。
「ト、トウヤさ……ん?どうしてここに?」
様をつけそうになったのだろう。強引に軌道修正して僕の目的を訪ねてくる。
「ちょっとここで待っててくれる?」
僕は手早く注文を済ませると料理を持ってナフルルと同じテーブルに座った。
「とりあえず、はいこれ」
僕は注文したヒレカツを数切れとパンをナフルルに差し出した。
「あ、あの、流石にトウヤさんに頂くのは……」
「タメ口呼び捨てで構わないよ。これを上げるのはナフルルがそんな食事をしているのに、僕が何かしない訳にはいかないでしょ?」
「それではお言葉に甘えて、……ありがと」
照れているのか顔を隠しながらお礼を口にする。
可愛い。おっと寒気が。
「それで?説明してくれるよね?」
どうやらナフルルはバイトを始めようとしていたのだが、どこも貴族様を雇いたいとは思わなかったようで採用されなかったらしい。
「今は縁を切られているんでしょ?」
チルリスの双子誘拐事件及び人体実験を利用して今のナフルルがいる訳で、強制的に言うことを聞かせていた為、もう家族の絆なんてないだろうと思っていた。現に仕送り無しだし。
僕だったら即刻絶縁するからね。
「トウヤって成績優秀なのにそういう貴族の事情には疎いわよね。貴族ってそう簡単に絶縁なんて出来ないのよ」
この世界の貴族っていうのは、それ相応の理由が無ければ追い出してはいけないらしい。理由は簡単。とにかく男の魔法使いが産まれるまで沢山子供を産ませることをする貴族が現れたかららしい。故に追放は出来ない。成人したら話は別だが。
つまり、今のナフルルの状況は仕送りは無いが、ティルノート侯爵家の人間ということ。
流石に身元不明の人間を雇いたいとは思わないし、かといってこのまま野菜生活というのも厳しい、と。
「これはハンターか冒険者になるしかないんじゃない?」
どちらも命を賭ける仕事なのでリスクはあるが、背に腹は変えられない。
「そうよね。そうなるわよね」
僕もこの世界に来てから暇なときにハンターとして仕事をしていた。
冒険者はF→E→D→C→B→A→Sの七段階評価で、
ハンターは鉄→青銅→白銀→黄金→白金の五段階となっている。
特にどちらが上という訳では無いが、Fランク冒険者は魔物と戦う依頼を受けることが出来ないことや、ハンターには試験があり戦闘能力が無ければ鉄にすらなれない為、D→鉄→C→青銅→B→白銀→A→黄金→S≦白金という具合に戦闘能力の暗黙の基準がある。Sと白金は基本的には白金の方が強いけど、例外ありという感じだ。
因みに僕はハンターランクは白銀まで上げている。冒険者は登録すらしていないけど。
「冒険者は初めは魔物狩れないみたいだし、ハンター試験に落ちたら冒険者になるのがベターよね」
一般的な意見として、そのような考え方が普通だ。故にハンターの方が強いと思われるのだから。
「なら、はいこれ」
僕は影から銀貨を一枚渡す。
「これは?」
「受験料だよ。因みにだけど、稼いだお金を僕に貢ぐことは止めてね?」
僕の言葉を聞いて図星だったのか、ビクッとナフルルの身体が反応した。
「も、勿論よ。でも、この銀貨を何倍にもして返すから」
うん。それは貢いでないと言えるのだろうか?




