特殊スキル
戦闘シーンが思ったより長くなってしまった。
後ろの部屋からナフルルが入ってきた。姿は、制服の上と靴下と靴しか身につけていない。
大事な部分が見えそうだが、必死に服や手で隠している。
「ほら、早く」
「はい」
暗い顔をしながら返事をして僕らの前に立ちはだかる。
そして奥にあるリオの入っているカプセルが開き、大量の青色透明の液体と共にリオが出てくる。
リオは全身濡れているが、制服は着ている。
濡れてる状態で制服とか若干動きにくそうな気がするけどいいのかな?まぁ、魔法使いなら特に気にする事でもないか。
魔法発動を重視して動かないという戦術はマイナーながらも実際存在しており、四天王の中で座ったまま戦う奴もいた。まぁ、この世界でもマイナーな戦術なのでリオが使うかは分からない。
「もしかしなくても、実験成功者かい?」
「ご明察。そっちの彼は今さっき出来たばかりだよ」
先程の会話は時間稼ぎの為ってことか。本当に知りたいのもあるけど、それが主な理由だろう。
「初陣がこんな強敵なのは少し不安だが、致し方ないか」
彼女の表情は残念そうどころか笑っている。
「レニーナ、どっちを相手にする?」
「勿論ナフルルの方です」
「お願いだから殺さないでね?手足を切り落とすとかも止めて」
レニーナはナフルルの格好を見てからずっと殺気を放っている。
これがナフルルではなく、ナフルルに命令した彼女だった場合は止めなかったが、そう言う訳でもなかった為、注意しなければ殺したり身体の一部を失わせることくらいは必ずと言って良いほどするのは目に見えていた。
「彼女がお気に入りなんですか?」
「お気に入りというか、恐らくだけど、操られてるか、脅されてるだけなんだと思う。だから少し可愛そうだなってだけだよ」
「ご自分の過去を重ねているのですね」
僕は過去に魔王軍で活躍することを命じられ、僕を産み出した機関を破壊し研究者を消す前まで決して命令に逆らえず任務を遂行するただの道具だった頃、命令の隙というか穴というかを利用して些細な自由、少しの寄り道くらいしか楽しみがなかった。
命令する相手が研究者か錬金術師かの違いでしかない。
「僕の我が儘に付き合わせて申し訳ないとは思うよ」
「トウヤ様の為なら私だけでなくトウヤ様の眷属全員が喜んで力になります。ですのでトウヤ様が謝る必要はありません」
ほんと、いつも僕は眷属に甘えてばかりだな。
僕とレニーナは背中合わせになり戦闘体制になる。
「僕には勿体ない眷属ばかりで幸せだよ」
自分にも聞こえるかどうかの小さな声で呟きリオへと目を向ける。
純粋の魔族には生まれつき特殊スキルがあるものだ。
特殊スキルとは1~5個までの完全にランダムで魔族だけが持つスキルのことで、その能力は本人にも分からない。ステータスにも表示されない為一生スキルに気付かずに終わることもある。
当然僕にも特殊スキルは備わっているが、今までに分かっているスキルは2つだけだ。
しかし、今のリオには最大値10個の特殊スキルが備わっている。あくまで可能性だけの話だが、最小値の2個しか特殊スキルがないとは考えられない。
特殊スキルとは基本的に切り札として用いられる場合が多く、僕も2つの特殊スキルを切り札としている。
勿論外れスキルもあるが、多くは使い方次第でゴミスキルにも切り札にもなり得る。
下手したら僕の5倍の数切り札級のスキルがあるなら……不味いな。
切り札とは強力だからこそ切り札として使われる。それが数多く持っているのなら1つくらいは躊躇なく使う可能性は高い。
いくら強いスキルでも切り札を沢山持っているだけでは宝の持ち腐れという奴だ。
とりあえず短剣を投げると追いかける様に走り出す。
リオは短剣を横に移動することで回避し僕に向かって右掌から闇魔法2級の黒い弾丸を何発か放つ。
この魔法はとにかく早いことが特徴の魔法かつ当たりどころさえ良ければ相手に重傷を負わせることや仕留めることも可能という使いこなせば相当強い魔法だ。
それ故に難易度が高く2級の中でも難しい部類に入る。
勿論使いこなすという意味では2級の中でトップ3くらいは妥当だ。
至近距離で放たれた黒い弾丸は致命傷を負わせるには十分な頭と胸を目掛けて飛んでいく。
並大抵の相手ならたったこれだけで倒すことは可能だった……が、リオが相手をしているのはそんな柔な存在ではない。
避ける素振りすらせずに僕は真っ直ぐリオに向かって走り続ける。
リオに追い付く前に黒い弾丸が僕の頭と心臓の場所に当たるが、傷痕は無い。
黒い弾丸を受けて無傷、しかも減速すらしない僕を前にリオに動揺が走る。
「悪いね。闇魔法は既に超越しているんだ。お手本の黒い弾丸を見せてあげるよ」
右人差し指をリオに向け、親指は人差し指と揃えたところから人差し指と垂直にして、残りの指は握る様にして構えると指先から黒く小さな弾が作られエネルギーが溜まっていく。
そうして放たれた弾丸はリオの黒い弾丸は弾丸の速度は勿論のこと、威力や連射速度など、全てが上だ。因みに弾丸はリオより小さい。
黒い弾丸がリオの左右の肩、腕、脹ら脛、太股の計8ヵ所に穴が開く。流石に立てない様で倒れ込む。その際、腕も撃ち抜かれている為、腕で支えることさえ出来ない。
一つ一つの穴は小さいが、普通ならもう四肢は使えないはずだ。
リオは倒れたまま動かない。良く見れば血液が流れていなかった。
ん?幻ならすぐに消えるはずだけど、生身なら流血するはずなのに……何かが変だな。
僕が疑問を覚え周囲を確認すると頭上から黒い剣を振り下ろすリオの姿があった。良く見ると服が乾いている。
なるほど、特殊スキルか。しかし、リオは僕に相性悪すぎだね。僕からしたら相性が良いから問題ないけど流石に可愛そうだな。
僕には金銀製以外の武器による攻撃は効かないし魔法剣にしても闇魔法のやつは効かないからほとんど完封状態である。
魔法剣は魔剣や聖剣の下位互換なので基本的に素材は鉄だ。つまり効かない。
あの年齢で2級最上位の闇魔法が使えるなら闇魔法だけしか鍛えてないことはないと思うんだけど。
腕で受け止め流れる様に蹴り飛ばす。
起き上がると漸く闇系統が通用しないと分かったのか、真っ赤な炎を操り始めた。
そのまま僕の方へ来るのかと思いきや未だ消えずに倒れているリオ(?)の方へ行き鞭の様な形に変化し炎を操ってる方のリオの元へと飛ばす。
そして倒れているリオに触れた瞬間、倒れている方のリオは消えてしまった。
身代わりの類いのスキルかな?効果は分からないけど、触れて回収出来るってことなのか、それともフェイクなのかは分からないがこれからは安易に近づかせない様に気を付ける必要があるか。
振り出しに戻ったところで短剣の空間移動を使い回収する。
んーあと二回倒さないといけないのは中々めんどくさいな。
無力化させてもあのスキルは発動する可能性があるので結局リオを相手するのは大変なことには変わり無い。
となると……。
リオを横目に錬金術師を見る。
なんかルーエルと戯れてる(ルーエル的には攻撃してる)けど彼女を捕らえたら全て一件落着だよね。
「ルーエル何してるの?魔法使っても良いよ?」
使い魔が魔法を使う場合、その主が魔力を消費する。基本的に魔法が使えない男は魔力はあるけど使えないので積極的に使うが、魔法使いは自身でも魔法を使う。ルーエルはそれを心配していたのだろう。
「ちょっと!せっかくの私の好意をそんな風に扱って何様のつもり!」
光魔法の目眩ましで相手の視界を潰しつつ罵ってくる。なんだかんだ言ってルーエルはやることはやる……と信じている。
リオは今度はこちらからと言わんばかりに炎を黒い剣を纏わせる。
完全な武器にするには荷が重いのだろうか?
軽い牽制として短剣を投擲し続けたまに魔法付与をした短剣を混ぜることで相手の体制を崩す。
体制を崩しても投擲し続けている為、捌ききれなくなりあっという間に身代わり的なスキルが発動する。
早くない?ただ短剣投げてるだけで一回目終了したんだけど。
一瞬でこちらの懐へ侵入したリオは炎を纏った黒い剣で斬り上げてくる。
空間移動系統のスキルかな?身代わり系スキルとの相性は良いみたいだし、そこまで悪い手ではないけど。
水を纏わせた短剣で難なく防ぐ。そして、纏わせていた水をリオの頭まで移動させ、口と鼻を塞ぐ。
溺れさせるのは簡単に無力化出来るし殺したりも出来る便利なやり方だから結構重宝している。
それにしても、何で空間移動しないんだろ?特殊スキルだったのかな?
もがき苦しむリオを見ながら水を操作して逃れられない様にしている。
少ししたら動かなくなり倒れてしまった。
呆気ないな。そういえばリオは全く喋らなかったけど、特殊スキルを全然使わなかった理由と関係があるのかな?
特殊スキルが最低値の2個という可能性を捨て色々考えるが、答えが出る訳がない。
リオの本体を影に入れて回収しようと思い、近づいていく。本体の側へ来ると背後から何か気配がした為、振り向くとリオが炎を纏った黒い剣を振り下ろしていた。
もう1つの連載作品は明日に19時に投稿する予定なのですが、半分も書けてないので、これからはある程度書いてから新しい章に入る方がいいのかもしれないですね。
因みにこの作品は二章のプロローグを書いてから何日かおいて投稿しようと思います。多分一ヶ月以内には投稿再開すると思いますが、それは二章のプロローグで話をする予定です。




