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禁断の桜桃

 んーどうするかな?このまま脱がすと犯罪に……いやバレないから犯罪ではないか。男尊女卑(魔法使い限定)のこの世界で、かなり優秀な部類に入る僕は王族に手を出さない限り大抵のことは許容される自信がある。


 公爵家のギーランとタメ口なのはそのお陰かもしれない。

 まぁ、この件はギーランからそういうお願いがあったから辺境伯で男の魔法使いならまだ許されるということでタメ口になっただけだが。


 そして、この場合だと、ナフルルが襲われたとか言っても逆に既成事実を作ろうとしたと疑われる立場なのだ。


 そんな僕だが、ここで止めなければいけない理由はもうひとつある。それは眷属のことだ。

 どう考えても僕が悪いこの現状でも「誑かしたナフルルが悪い」とか「さっさと吐けば良かったのに」とか言ってナフルルにかなり酷いことをする可能性が高い。


 レニーナがみてるこの状況でこれ以上脱がすのはNGだ。故に僕が取れる行動はこれしかない。


「ルーエル、彼女の服を全て脱がしてくれ」


 ルーエルに脱がさせて鍵を入手する。これが僕が考えた正解だ。いや、最終手段か。

 最初からそうしろよと思うかもしれないが、あくまでルーエルは手足も熊なので任せるとナフルルの制服を破って脱がす方法しかない為、これでも十分配慮してると思う。


「もしかして、恥ずかしいの?別にいいけど、トウヤなら罪には問われないと思うわよ?」


 止めてくれ。レニーナからの視線が痛い。


「僕にはそんな勇気はないよ」


 ルーエルに遠回しで、眷属が暴走することを示唆するが、気が付くだろうか?多分だけど、ルーエルのことだから何も考えずに、女性を犯す勇気がないと思っていることだろう。まぁ、間違いではないけど。


 ルーエルが奪った鍵でレニーナのの手錠を外してから散策を始めようとした矢先にレニーナが「やりたいことがあるので、部屋から出て行ってくれますか?」と言ってきたので扉の前で待機していた。


 やりたいことって十中八九ナフルルに関係してると思うけど、これ以上酷いことをするのは……流石にないよね?



 暫くして、レニーナが部屋から出てきたので早速ここを散策してみる。と言っても、この乗り物を飛ばしたり透明にする為の魔法装置が大部分を占めていて、そこまで広くはない。


 ここが最後かな?まだ奥に続いてる可能性もあるけど、ここまで最初の部屋と魔法装置だけの空間しかなかったんだ。絶対ここの主がいるはず。


 散策中にレニーナから聞いた話によると、あと1人は必ずいる。それに、魔王の子供も見つけていない。なので、気を引き締めて僕が扉を開ける。


 中にはこれまで行方不明になっていた双子たちが精神崩壊した様子で檻の中に入っていた。


 この檻はかなり頑丈な物だ。恐らく5級や4級などの並大抵の魔法どころか3級上位の魔法では傷つけるのがやっとで、物理耐久にしても最底辺の魔剣でなんとかスパッと切れる程に頑丈だと思う。勿論僕の愛剣なら余裕だ。


「凄いな。この檻だけでもここの主がヤバい奴だってことが伝わってくる」

「トウヤ様の方が凄いですよ」


 いや、僕が凄いって訳じゃなくて、レニーナも含めた眷属が凄いんだよ?と言っても「我々眷属はトウヤ様の所有物ですから我々が凄いならトウヤ様が凄いということですよ」と当たり前の顔をして全員が僕のことを持ち上げてくる。


「あはは、ありがと」


 故に毎度僕は困った顔で苦笑いしか出来ない。


「ここは只の双子の部屋ってだけみたいだね。でも、魔王の子供っていたかな?」

「確認しましたが、魔王の子供はいませんでした」

「そっか。なら早く先に進むか」


 僕が扉を開くと奥に青色透明な液体が入った二つの無色透明の大きなカプセルに魔王の子供であるリオとリナがそれぞれ違うカプセルに入っていた。


 カプセルには下の方から幾つものコードが伸びている。恐らくそれを使って中の液体を抜いたり入れたりするのだろう。


 右側の壁の真ん中付近には様々な資料らしき書類が机や床に散らかっており、何かを書いている白衣を着た女性が見える。


 僕が部屋に入ると彼女はペンを止めて僕の方へ体を向ける。


「今日はお客さんが多い日のようだ。……ところでそこの君、面白いね。人間の意識が吸血鬼、それも上位皇族の肉体にあるときた。精神も問題なさそうだし、君はどこの研究成果だい?」


 こいつ、一瞬で僕の正体を見破ったのか!?


 僕とレニーナの警戒心は既に限界まで達する。


「それに、昼間は気が付かなかったけど、隣の君は吸血鬼君と繋がっているのか。研究したくなってきた」


 そう言って、彼女は机の側にある冷蔵庫から桜桃を2つ取り出し同時に食べる。


 こいつ、見ただけでどこまで分かるんだ?


「見ただけでそこまで分かるのかい?大した眼を持っている様だね」

「まぁね。そんなことより、君のことが知りたいな。どうだい?私の研究を手伝う機会なんて中々ないけど?」

「そもそも、貴女の研究テーマは何ですか?」


 錬金術師とは必ず自身の命題(テーマ)を持っている。それが何かは知っておいて損はない。既に何かヤバいことが起こっている可能性もあるので確認作業は大事なのである。


 まぁ、ろくなことじゃないとは思うけど。


「へぇ、私の研究テーマか。まぁ、良いだろ。教えて上げる。ただし、条件がある。私の質問に何でも3つだけ正直に答えてくれ」


 お互いの情報を共有するみたいなこと?だとしても1:3は不平等だよね?


「ひとつだけならいいよ?これで平等でしょ?」

「ふむ。まぁ良い。元々ひとつの予定だったし」


 つまり、嵌められたってこと?でも、こちらも質問するのだからトントンだと思うけど。まぁ、こっちが損していると思ってないからどうでもいいか。


「では、私の研究テーマについて話しをする前に、私の質問に答えてくれるかな?」

「どうぞ?」


 こんな話なんて幾らでも嘘をつくことが出来る為、元から信頼するしかない。故に後か先かなんて些細な違いだ。


「私の記憶と調査が正しいとするなら人間と上位皇族吸血鬼の合成なんて前例がない。そもそもそんな非道徳的なことをするのは我々の組織だけのはずだ。私の質問は君の産まれた組織について、だ」


 確かに僕は正体を隠してるけど、情報が漏れなければ問題ない。

 それに、禁断の果実は犯罪組織だから世間ではあまり情報が出回らないし、裏で何か言われるかもしれないけど、僕の障害を取り払っていたら時間の問題と言える。が、自ら進んでバラすメリットはゼロだよね。


「一応この用紙にサインをしてくれるかな?」


 念のためにお互いの情報を口にしないという決して破ることの出来ない契約書を提示する。


「これは?」

魂の契約書(コントラクト・ソウル)、破ることが不可能になる契約書さ。今回はお互いに質問した内容を決して伝えられないということにしている」

「なるほど、それなら安心だ。怪しい魔法もかけられて無いみたいだし」


 僕が自分の血を垂らしてから契約書を渡すと隅々まで観察してから同じ様にサインして僕に契約書を渡してくる。


「そっちの幽霊はどうやって契約書にサインしたの?」


 契約書を見たときにサインした素振りを見せなかったレニーナのサインが既にされていることに疑問を抱いたのだろう。


「ああ、眷属は僕がこの契約書にサインしても良いんだよ」

「ふーん。それで、もう良いでしょう?」


 待ちくたびれたのか話が適当になっている。


「ごめんよ。それじゃあ話すとしようか。

 勇者を殺す為の存在を創る実験の結果、産まれたのが僕。気づいてると思うけど、異世界の魔王軍の研究機関さ。

 なんとか生き残ったのは僕以外だと1人しかいない。始めは魔物を合成して色々実験してたみたいだけど、強い奴が出来ないから知性のある生き物で実験する様になったみたい。

 それでも、勇者を殺すという目的は達成することは出来なかった。苦い思い出だよ」

「なるほど、ありがとう。なら今度は私の番だね」


 彼女の話をまとめると、双子が何故少しだけ強く産まれてくるのか、という点にフォーカスを当てて様々な実験をしていたらしい。そして、ひとつの仮説が立てられた。


 それが双子は実はひとつの魂だという仮説だ。

 双子はどういう訳か死ぬときは必ず一致する。そして、どちらかの精神が不安定だったときは必ず両方とも不安定になる。その逆も実験で明らかになった。流石に身体的な異常は大した結果はなかったが、これらの理由からその仮説が立てられた訳だ。


 それを証明するのが今のテーマらしい。


 良かった。何も危険なことはしてないな。でも、これって、僕の予想が正しければ……。


「どうだった?」


 つい考え込んでしまった僕は彼女に話しかけられることで意識を戻す。


「非常に興味深いテーマだと思ったよ」

「ほんと?嬉しいな。なら」


 笑顔から一転、真顔になってから言葉を続ける。


「私の実験台になってくれない?」

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