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脳力  作者: トマティ
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4 来世への希望

家に帰ると同時に、俺はすぐ部屋へ向かった。


どこまでできるんだろう。好奇心のようなものが湧き出てきた。


少し離れたところから、携帯に向かって意識を集中してみる。

だめだ。やはり、触れてないと操作できない。


パソコンを触り、腕に意識を集中させる。


パソコンが起動した。


さらに、意識を集中させる。

頭の中に、何か映像が飛び込んできた。

なんだろうこれは、数字ばっかりだ。

おそらく、パソコンの中の映像が、俺の脳の中に入ってきたんだろう。


その後いろんな操作を試した。

正直、これは便利だ。あまり機械に詳しい訳ではない俺が、うまくコントロール出来るようになれば自分の好きなように操ることができる。


その後も俺は、寝ずに操作を続けた。


気付けば朝になっていた。


コンコン。


「母ちゃん。今日はバイト休・・・」

部屋を開けると、そこにはセイラが立っていた。


「上がらせてもらいます。」


そういって、部屋に入ってきた。


「ちょ、俺が迎えに行く予定だったのに。」


「へぇーここが、健人さんの部屋かー。ふつーーー」


「なんだよ普通って。」


セイラがCDを手に取る。

「これこの前話してた70年代の洋ロックってやつですか?」


「うん。」

へぇーと言いながら、

その後も、人の部屋をジロジロみていた。


「そんなに見るなって。恥ずかしいだろ。」


「別にいいじゃないですか。えっちな本でも隠してるんですか?」

なんか、出会った時よりもいい意味で、変わったな、セイラ。


「ちょ、そういうことじゃないだろ」


「あっ、動揺してる。やっぱあるんだー。」

まったく、最近の若い子ときたら。


「こんな朝からパソコンで何してたんですか?」

と、パソコンの画面を覗き込む。


「これってまさか?」


「そう。色々試してたんだ。何ができるのかって。」


「これって、健人さんの大学のサーバーですか?」


「ああ、すんなり見ることができたよ。」


「これって犯罪ですよ、健人さん。」


「わかってる。試しただけだ。悪用はしない。」


「気をつけてくださいね。不正アクセスなんとかで捕まっちゃったりしたら大変ですよ。」


「ああ。」


そして、パソコンを消し、脳科学者の先生のもとに向かう。

タクシーを拾い、港添大学へ向かう。


「その先生は有名な人なの?一応、昨日ちょっと調べたけど。」


「はい。その分野では一番権威のある人らしいですよ。なので、その人が知らなければ、おそらく日本人でわかる人はいないと思います。」


「そっか。」

そんなすごい人と知り合いなんて、社長令嬢はやっぱりすごいな。


脳科学研究室。ここか。


「次原さん。お久しぶりです。」


「おぉ、セイラちゃんよく来たね。」


「初めまして。北川と申します。」


「ホゥ。君かね。私に相談があるという人は。」


「はい、そうです。」


「まぁまぁ、ここじゃなんだから。まずは中に入ってお茶でも。」

イメージでは、大量の本や書類で散らかっていると思っていたが、以外とそうでは無く、綺麗な部屋だった。


「どうぞこちらに座ってください。」


「はい、失礼します。」


「セイラちゃん、お父さんとお母さんは元気かね?」


「はい、お陰様で今でもバリバリ働いています。」


「そうか、あんまり無理はするなと伝えておいてくれ。」


「はい。わかりました。」


「それで、北川君と言ったかな?」


「はい。」


「相談というのは何かね?」


「相談というか、質問になっちゃうんですけど」

続けて、

「先生は、人間の脳が機械とつながることが可能だと思いますか?」


なるほど、というような顔をした先生がゆっくりと話し始める。


「人間の脳は数千億の神経細胞が互いに繋がり合い、それらを伝って電気信号を伝達する。その信号によって、人間動いている。つまり、脳からその、電気信号を取り出し、それを解析することに成功すれば、不可能な話ではないと私は考える。実際に人類では既に、脳にインプラントを埋め込み、脳から信号を読み取ることに成功している。もしさらに進化を遂げれば、人類の進歩は、今までとは比 べ物にならないくらい成長するであろう。」


「それで人類は進歩するのですか?

もしそうなれば、人間は機械を思いのままに使えるようになる。そうなれば、サイバー犯罪は後をたたなくなるでしょう。」


「確かに、その可能性もある。今では、サイバー攻撃が核を超える脅威とも言われているからね」

「なら、なぜその研究をそこまで追求するのでしょうか?研究者たちは、その脅威に向かって研究を続けていることになると思います。」


「それは違うよ、北川君。私はあくまで可能性の話をしているだけであって、その可能性だけを信じてしまい、進化の芽を紡いでしまうというのは、研究者としてあってはならないことなんだ。それに、この研究がうまくいけば、助かる人がどれだけいることか。

 今までの進化の中で脅威と呼べるものはいくらでもある。拳銃や戦車が生まれた時も、もちろん核兵器もそうだ。しかし、我々人間は、その脅威にも恐れず、進化に怯むことはなく、その結果、今の時代があるのだ。まだまだ、平和とは言えない国もあるかもしれないが、昔戦争を当たり前のようにやっていた時代に比べれば、格段に平和になった。そう。進化が平和をもたらすのだ。だからね、北川君。変わることを恐れてはいけない。人間は、慣れる生き物なんだから。次の時代が来たら、その時代に慣れることが出来る。そうやって人間は、進化を続けてきたんだよ。」


俺は、釘付けになってその話を聞いていた。


「今はまだ、数十年後がどうなっているかはわからない。でももし、人間の脳とコンピュータが繋がるその時が来たら、私はその力を使って、この世界をより良くする。我々の研究は間違っていなかったと、この身をもって証明する。」


「具体的にはどうやって?」


「それは、まだわからない。ただ我々は、研究を続け、その過程の上で最良の選択をするまでだ。」


次原先生の、熱く語るその信念に俺は、希望という二文字が見えた。




帰りのタクシーの中で考えた。

近い将来俺のような人間が出てくることは、可能性としては十分に考えられるのだと。

その第一人者として、俺が選ばれたのかもしれない。

さっき、先生も言っていた。


「世界をよりよくする」と。

この力を利用して、自分が世界を変えることができるかもしれない。そんなことまで考えていた。


「健人さん、本当に先生に力のこと伝えなくてよかったんですか?」

「あぁ、いいんだよ。それに、先生も言ってただろ。研究の過程の上で最良の選択をするって。あとは信じて、一番いい形で、世界に広がることを祈るしかない。そして俺は決めた。少しでも多くの人に、この力で幸せを掴んで欲しいって。だから、帰ってこれからどうするか、作戦を立てよう。」



「なんだよ、そんなに見つめるなよ。」

「今の健人さん、かっこよかったです。」

「なんだよ、急に。」

俺は必死に、照れを隠した。



家に着き、部屋に入る。

「それで、まず何をするんですか?」


「正直まだわからない。でもひとつ思ったことがある。自分の電気信号を、自在に操れるのであれば、相手がコンピュータでなくても、つまり、同じ電気信号を持つ人間であっても、つながることは可能なのではないかと。」


「つまり、テレパシーみたいなことですか?」


「そうだな。喋らなくてもお互いの意思を確認出来るということだ。手貸して。」


「嫌です。」


「なんでだよ。」


「だってもしそれが可能だったとして、もしかしたら私の考えてることが健人さんにばれちゃうってことですよね。」


「その可能性もあるな」


「じゃあ嫌です。他の人で試してください。」


「なんだよ。そんなこと言ってる場合じゃないだろ。」


「そんなこと言ってる場合です。」


「全く、わかったよ。」



そして俺は、隣の梨花の部屋に向かった。


コンコン

「はーい。」

ガチャ

「なんだ健人か。」


「なんだってなんだよ。」


「何の用?」


「ちょっと手貸して。」


「何、気持ち悪い。何する気?」


「いいから」

嫌がりながらも、手を出す梨花。

そしてその手を握り、意識を集中させる。




「まだ?」


「あぁ、もういいよ。ありがとう。邪魔したな。」


「え、何それだけ?」


「うん。助かったよ。」


「変な兄ちゃん。」


「かっこいい彼氏だな。」

そう言って俺は振り返り、部屋を出ようとした。


「え?」


「一緒に歩いてるの見かけてな。男には気をつけろよ。」


「健人だって男でしょ。」


本当は少し映像が見えた。

そして俺は自分の部屋に戻った。


「どうでした。」


「まだなんとも言えないな。少し映像は見えるが、感情まではわからない。」


「そっか。梨花ちゃんは何か言ってました?」


「いや、何も。多分あっちは何も感じ取ってないのかもしれない。」


「しょうがないな」

そう言って彼女は手を出した。


「私に何か伝えてください。」


「でも、こっちの気持ちは見ないでくださいね。」


そして俺は、彼女の右手を握り、意識を集中させた。


「わぁ。すごい!なんか頭の中がふわ〜ってなって、その後声が聞こえた。」


「なんて聞こえた?」


「声は聞こえるんだけど、なんて言ってるかはわからない。もう一度お願いします。」

再び意識を集中させる。


「ん〜なんて言ってるかわからない。」

と言いながらも、恥ずかしがるセイラ。


もしかして、伝わってるんじゃないか。

「本当は聞こえてるんだろ、俺の声。」


「聞こえてないです。もう一度お願いします。」


「もう終わりだ。何度も言わすなよ」


「へへへ」

そう言って、照れながら笑うセイラは可愛かった。


「とにかく。人間の間でもできるということがわかった。セイラの病院に、この力ですくえそうな患者さんはいないか?」


「そうだな〜。あっ、いる。70歳くらいの老夫婦なんだけど、おじいちゃんの方が急に心筋梗塞で倒れちゃって、未だに意識を取り戻せてないの。そんな中、おばあちゃんは毎日通って、おじいちゃんが起きた時のためにって、毎日マッサージをしてくれて。でもね、このままだとおばあちゃんも倒れちゃうんじゃないかって心配してるの。」


「なるほどな。でも、意識のない人に伝えられるかどうかだな。」


「そうだね。でもやるだけやってみよう。おじいちゃんもおばあちゃんが待ってるって気付けば、もしかすれば意識を取り戻してくれるかもしれないから。」


「そうだな。」


「明日学校終わったらバイトだから、その時に。」


「わかった。これって、勝手にやって大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。きっとおばちゃんもわかってくれる。ちゃんと私が話しておくから。」


「わかった。じゃあ明日、3時頃病院に向かう。」


そうして、俺はセイラを家まで送り、帰り道、ふと公園に寄った。

そういえばこの公園だったっけ。

俺が倒れてたのって。



「お久しぶりです。北山様。」

聞き覚えのある声がした。


「またあんたか。警察もあんたのこと探してるぞ。何が目的だ。」

ジョーカーだった。


「目的?もうわかってるでしょ?」


「ふざけるな。いつも意味のわからないことばかり言いやがって。それに、俺が変な能力を手に入れたのも、お前にさらわれた後だ。一体俺に何をした!」


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。私は何もしていません。あなたの中に元々あった力が、大きくなっているだけですよ。」


「まぁいい、この力利用させてもらうからな。」


「もちろん、あなたがどうしようが、あなたの勝手です。ただ、一つだけ忠告しておきます。あまりその能力に過信しすぎてしまうと、思わぬ被害が訪れると。」


「なんだよそれ。どういう意味だ。おい・・・おいっ!」


ジョーカーはまた、暗闇に消えていった。

「ちくしょう。なんなんだ一体。どういう意味なんだ。」


怒りを拳に握りしめ、俺は気持ちを抑えた。


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