表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

角倉一家の兄弟姉妹

 東府柴埼郡深沢村。角倉平太は五歳になる。二人の姉と一緒に遊んだり勉強したりしている。十四歳になる兄の信太は父親である筆岡鉢兵衛と一緒に農作業に励んでいる。忙しそうにしているが弟妹の面倒から解放されて余裕が出来ている。


 平太も八歳になる富も十一歳になる鋤も仲睦まじい。何か思い通りにならないと平太が暴れるが、二人の姉はそれを抑えて叱る。二人の姉が平太を茶化したり使用人以下みたいな扱いをすると母親の桂が二人を叱る。桂は子ども達の様子を観ながら家事をする。時折、子ども達にも手伝わせる。子ども達は喧嘩もするがそのたびに仲直りしては協力し合う。


 信太は鉢兵衛と一緒に農作業をした方が気楽だ。春には田植え、夏には草取りと水の調節、秋には収穫、冬には耕しながら肥料を撒く。水田稲作の他に野菜を育てたり、水田でこいや鴨を養殖して食糧にする。忙しくて疲れるが、桂に怒鳴られなくなったので、辛くはない。


 むしろ平太がある程度大きくなった一昨年まで、信太は怒鳴られてばかりだった。弟妹達が甘えたり拗ねたり反抗したりするので、怒鳴ったり平手打ちをしたりすると家事をしていた桂が血相を変えて信太を蹴飛ばし怒鳴る。弟妹達には落ち着いた声で心配する。また、桂が子ども達の面倒を観ている時に信太は家事をするが、愚痴を言いながら杜撰にやると桂は注意しながらやり直しさせる。桂は厳しい母親である。


 しかし鉢兵衛は丁寧に仕事を教え、怪我しないように落ち着いた声で注意する。滅多に怒鳴らないし暴力も振るわない。信太も仕事に励む。鉢兵衛は子ども達と桂にも優しく、食事の時は楽しそうに話を聴いたり質問したりする。信太も弟妹達の成長に驚き安堵する。弟妹達は徐々に家事をこなしている。読み書き算盤も出来る。弟妹達もまた、信太を労い、仕事について色々と尋ねてくる。家庭内は怒鳴り合わなくなって落ち着いている。


 叔母である角倉桐はそんな一家を微笑ましく眺めている。祖父母と大叔母は信太の愚痴を聴いたり富や鋤に神通力を教えたり平太に勉強を教えたりする。桂はその間に祖父母の家を掃除したり食事を作ったり洗濯したりする。


 桐は村の人達の家や田畑を見回りして問題がないか確かめている。村の人達は桐に相談している。桐は三十歳になったばかりだが、名主として精力的に働いている。一人で決断できない時は村の人達を集めて協議する。喧嘩の仲裁もする。桐は村の財務を管理して帳簿や資料をまとめて郡を統括する代官に送ってもいる。これで年貢が決まっていく。年貢が高いと低くするように交渉もする。


 まだ五歳の平太は桐が村の人達に頼りにされながら難しい事をこなしているのだと幼心に感心している。忙しい桐の身の回りの世話と手伝いは優秀な女達がやっている。彼女達は妊娠も出産も子育てもしない代わりに神通力で村の問題を解決していく。神通力の使えない女は妊娠も出産も子育ても頑張る。男達はそのどちらも出来ない。


 女に逆らってはならない。折角の筋力を労働力として使うべきだ。平太は幼心にそう感じた。多少、女に非があっても男は女に暴力を振るってはならないし、怒鳴ってもいけない。女が社会を動かしている。男はそれを邪魔せずに支えなければならない。


 平太は鋤と富と一緒に田畑を見回る。長姉の鋤は火をつけた線香を持ちながら歩き回る。平太と富はその後について行く。鋤はこうして害虫を駆除していく。神通力を持っているのだ。効果は絶大で、村の人達から有難がれている。平太も誇らしいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ