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鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~  作者: 今田勝手
章の五

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第百十六話/意鬼投合

「こいつァ、払いきれねェ」

自身を狙う無数の邪剣を見上げ、シュテンはそう口にした。

「ははは、はははは!諦めたか鬼め!ならば疾く逝けぃ!」

アラタは邪剣を操る手に力を込める。

邪剣一本一本の魔力が高まっていく。

「…勘違いすんなァ」

「なに?」

シュテンは視線を下げ、アラタを真っ直ぐ捉えた。

「払いきれねェなら、払わなきゃいィ」

全身の妖力が増幅していく。

「鬼道・濫技『一鬼当千』」

増幅した妖力を爆発的に跳ね上げ、更に身体の外側を包み込んでいく。

「鬼道・装技『狂鬼乱舞』」

外側に展開した妖力を纏込み、更に増幅する。

角が伸び、鬼の姿にかなり近付いたシュテンに対し、アラタはまだ笑いを浴びせる。

「ははははは!その技は既に見た!言っただろう、私はカイドウのようには甘く無いぞと!そんな技では、私の邪剣は防げない!」

笑いが収まらないうちに、魔力を更に高める。

「八つ裂きになって逝け!忌々しき鬼よ!」

邪剣が一斉に動き出す。

全ての刃がシュテンを目掛け、雨のように降り注いで来る。

その空を裂く音と、アラタの笑い声が木霊する中、シュテンは口を開いた。

「鬼道」

場の空気が一変する。

「…なんだ!?」

その異変はアラタも感じた。

実際に、シュテンを中心に空気が変質していっていた。

「装技」

変質した空気から妖力が抽出され、シュテンの周りへ集まっていく。

それらは禍々しくも逞しく紫色の光を放ち、炎のように揺らめきながら、シュテンの身体中に張り付いていく。

最後のひとつが角の先に火を灯すと、シュテンは目を開く。


「『百鬼夜行』」


直後、爆発的に増幅した妖力が衝撃波となって大地を駆け巡る。

「ぐっ!?」

アラタは気圧されるも、邪剣は留まらず一斉にシュテンへと降り注いだ。

無数の邪剣が擦れ合いながら獲物を捉え貫いた音と共に、土煙が立ち込めていく。

その音が止んだ時、土煙の中は静まり返っていた。

「はは、ははは、ははははは!やはり悪足掻きか…ははははは!」

「何が可笑しいんだァ?」

「!?」

重苦しい土煙が収まりを見せ始めた時、その内側がどす黒くも光り輝いている事に気がついた。

「まさか…!?」

土煙の間から、目が合った。

視線を外せずにいると、じきに土煙は消えその全貌が明らかになった。

「そんな…まさか…」

煌々と光を放つシュテンは一切の傷を負っておらず、邪剣は全て見るも無惨に砕け散って魔力が霧散を始めていた。

「馬鹿な…貴様、カイドウを相手に手を抜いていたのか!?」

「あァ?…あー」

シュテンは頭を搔く。

「…妖力ってのァ扱いが難しィんだァ」

「なに…?」

眉間に皺を寄せるアラタを後目に、シュテンは自身の姿を確認する。

「どォやら上手くいったみてェだなァ」

「鬼め…私を騙そうとしたのだな」

「…あァ?」

面倒臭いとばかりに、シュテンは溜息を吐く。

「言ったろォ、試してェ事があるってよォ」

シュテンは篭手に妖力を込める。

形成された鬼の爪は禍々しい炎を纏い、対峙するアラタは思わず新しい剣を形成し両手で構えた。

「っ…!?」

そんな自身の姿に気づいたアラタは、酷く屈辱的な気分になった。

「おのれ鬼め…この私に手を使わせるとは…っ!」

「あァ…?まァいい、それより…」

シュテンはその眼を更に鋭くする。

「アンナの腹に穴開けられた礼がまだだったなァ」

「なに…?」

「きっちり返させて貰うぜェ」

直後、シュテンは前へ飛んだ。

左手に携えた鬼の爪は、いつの間にか更に肥大化している。

「く…っ!」

仕方なくアラタは剣を守りの姿勢に硬め、さらに魔力を練る。

「邪剣魔法よ!私を護る盾となれ!」

すぐに浮遊する魔力塊が現れると、アラタを守るように壁となった。

魔力は増幅しつづけ、壁は厚みを増してゆく。

シュテンは構わず前へ走り続ける。

「この鬼風情が!通せるものなら通してみよ!」

なおも強化され続ける盾を前に、シュテンは篭手を振るった。




「カシラ!カシラ!オイラ最強の技を編み出しちまったよ!」

「あァ?またか茨木ィ…お前の新技を見せられんのはこれで何度目だァ?」

「そう言わねぇで見てくんなさいよ!今回こそオイラの技じゃ最強なんだよ!」

「今までが妖力の爪で引っ掻くだの、殴って吹っ飛ばすだの、腕力がありゃ解決するモンばっかだったじゃねェか」

「バカにしちゃいけんぜカシラ、女のオイラがカシラと並べるくらいの力が出せんだからよぉ、それに今度のはひと味違うぜ?」

「…まァ、やってみろォ」

「期待してねぇなカシラ?じゃあ目に物見せてやるよ!これがオイラ究極の技だ!」




「鬼道・装技『意鬼投合』」

「っ!?」

鬼の爪はいとも容易く邪剣の盾を貫き、内側で構えられていた魔力剣をもへし折ると、そのままアラタの鳩尾へ突き刺さった。

「ぐぉ…ぉおおおぉぉっ…ああぁぁぁあ!?」

邪剣は粉々に崩壊し、体内を妖力で掻き回されたアラタは激しく吐血する。

「が…は…っ」

「…………」

シュテンは脱力していくアラタをそのまま投げ捨てると、左の篭手をそっと撫でた。

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