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鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~  作者: 今田勝手
章の五

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第百八話/ジンシン⑦・水と炎

「どこだ…どこに行った…!?」

ホエンは貧民街を走り続けていた。

追っていたはずのニンナを見失い、焦燥していた。

「はやく見付けないと…っ!」

荒ぶる鼓動を無視し、肩で息を吸いながらも足を前に出す。

慣れない全力疾走に胸が痛くなるも、それさえも焦りに変わっていく。

「…!」

その時、正面の路地を子供たちが横切るのが見えた。

やけに人数が多く、何かから逃げるように駆け足で過ぎていく。

「……ねぇっ!」

ホエンは集団の最後尾で妹を引っ張る少年を引き留めた。

肩を掴まれた男の子はこの世の終わりかのような顔で振り返ったが、こちらの顔を見て困惑の色へと変わる。

只事ではないと一目で悟った。

「…何があったの?」

出来るだけ語気を抑えて問いかける。

「あ…ぅ…」

幼い兄は、妹とホエンの顔を交互に見る。

突然の事に頭が追い付いていない様子だ。

「…話せる?」

汗が一筋、頬を伝う。

こんな事をしている場合ではないと気が急く。

「あ…」

「お姉ちゃん!」

痺れを切らす直前、後ろから別の少年が駆け寄ってきた。

少年はホエンの側まで来ると、膝に手を着いて息を整えた。

「お姉ちゃん、魔法使える?」

背中にぞわりと冷たいものが走る。

「…使える、何があったの?」

「助けて!水魔法のお姉ちゃんが危ないんだ…っ!」

ホエンは少年の肩を勢いよく掴んだ。

「場所はッ!?」





「……まったく、王族への敬意が足りない。これだから貧民は」

「うるさいっ!」

ニンナは立ち上がりざまに生成した水を、空中で圧縮して数発撃ち出す。

「おっと…どこを狙っている?」

「ちぃっ…」

ニンナは歯を食いしばる。

水弾の空中射出制御はまだ上手くいっていない。

そもそも水魔法では、専門化された浮遊魔法ほどの精度は出せないのが普通なのだ。

「…ひょっとして僕を狙ったのか?ますます不敬だな」

「黙れ…お前に払う礼儀なんか無い!お前に王族の資質なんか無い!」

カンセイの眉がピクリと跳ねる。

「…なんだと?」

その冷たい視線がニンナを貫き、悪寒が走る。

「貴様のような貧民までもが…僕を愚弄するのか…っ!」

カンセイは懐に手を入れると、中から指輪を取り出した。

「…まさか貧民ごときにこれを使う羽目になるとはな」

その指輪を左手の人差し指へ装着すると、魔力を込める。

「ふんっ」

「っ!?」

指輪が光を放つと、二筋しか無かったカンセイのフレイムティアラが頭を半周するほどに跳ね上がった。

ニンナは思わず息を呑んだ。

「まさかそれは…禁術具!?」

「貧民のくせに聡いやつだ」

禁術具。

人間社会に悪影響を及ぼす魔導具を総称してそう呼ぶ。

所持しているだけで厳しい罰則がある代物だ。

「王族を名乗りながら、そんなものを使うのか…!」

「もはや関係あるまい!この力をもって僕は新たな王となるのだ!」

「っ!?」

カンセイの手から、先程とは比べ物にならない規模の火柱が上がる。

「死ね貧民!」

「っ…!」

火柱がこちらへ向かってくる中、ニンナはありったけの魔力を込めて水の壁を生成した。

ジュゥと大きな音を立てて両者がぶつかる。

「ぐ…っ」

ニンナはすぐに見立ての甘さを悟った。

消火するスピードより、蒸発するスピードの方が圧倒的に早い。

「燃やし尽くせぇ!」

火柱は渦を巻いて水壁を抉っていく。

ニンナは魔力を使い切るつもりで壁を強化し続ける。

「く…そ…」

体内の魔力が底を尽きていく感覚の中、脳裏に助けた子供たちの姿が過る。

「…あの子達だけでも外に出せたから、良かったかな…」

次に想起されたのは、孤児院の面々だった。

「親不孝者でごめんよメイジ…みんな大きく育てよ…」

次々に顔が流れて行く。

問題児のレーワに、エイニン、ニンジュ、オーワ、そしてホエン。

「…ホエン、頼んだぞ」

その時、廊下の窓が割れて誰かが飛び込んできた。

「ニンナ!」

横を向くと、血相を変えたホエンの顔が目に入った。

ほぼ同時。火柱が水壁を、破った。

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