第3話:それゆけ!生徒会室!
ちょっと長いのと主人公が汚い言葉を使います。
入学式が終わり各教室でオリエンテーションが行われた後。放課後になった途端胡桃はとある所に向かっていた。生徒会室の扉の前。真剣な趣で仁王立ちしている胡桃の姿があった。ボクの調べた所によると、この学園では生徒会に能力値に優れた者たちが集まると言う。恐らく胡桃の望む『攻略対象』がこの生徒会に居るんだろう。いや、それでも生徒会はこの国でも権力を持つ人々で構成されているんだ。流石に国が認める聖女候補だからと言って突然押しかけて会うことのできる連中では無いんだ。扉の左右には門番の如く生徒が侵入者を入れさせまいと此方に睨みを効かせていた。
「こんにちは!私ぃ、聖女候補のクルミ クルスっていいまぁす!生徒会の人にお話があるんですけどぉ。」
顎に手を当てて小首を傾げる。キュルンと効果音が出そうな胡桃に門番の生徒は少しグッと頬を赤めた。
「く、クルミ様。申し訳ございません。無断で生徒会室に人間を入れるなと申しつけられておりまして…。」
「えぇ〜!どうしても?私かなり急いで居るんですけどぉ…。駄目ですかぁ…。」
うるうるとした瞳であざとく訴えかける胡桃。そんな可愛らしい姿に単純な門番の生徒が少し慄いていた。そんな時だ、カツカツと靴を早足で女教師が細長い眼鏡をクイっと上げながら現れた。また面倒くさそうな奴が来た…。
「あら、神聖なる生徒会室の前で一体何の騒ぎですの?」
意地の悪そうな女教師が再び眼鏡をクイっと上げる。門番の生徒がその教師をマイヤー先生と呼んだ。マイヤーは胡桃に気がつくとギロリと睨みを効かせてきた。ボクはその目力に圧倒されてブルリと身震いをする。ボクは胡桃の髪の毛を引っ張り小さな声で「もう帰ろうよ」と言うが無視される。胡桃はマイヤーに呑気に「こんにちは!」と挨拶をして生徒会室に入りたい事を伝えた。
「…貴女、名は?どこの一族かしら?」
「私はクルミ クルス!異世界から来た聖女候補です。」
「ふん、では生徒手帳を拝見いたします。」
そう言われるがままに胡桃は素直に生徒手帳を見せるとマイヤーは顔を顰めて生徒手帳を突き返した。ぼとりと生徒手帳が落ちて、ゆっくりとした動作で生徒手帳を拾う。表情が見えなかった。
「魔法ランクSですか。確か聖女候補はSSランクだとお伺いしておりましたが?全く、飛んだ嘘をつくものだわ。この私を騙そう何て!」
マイヤーはこめかみに血管を浮き上がらせながらベラベラと語り出した。
「私をマイヤー家の人間と知っての愚行ですの?!太古昔にこの国を創り上げた五大賢者が一家、ホワイトクローバー家の直系にあたるマイヤー家の私に!あぁほんっと、これだから庶民は嫌ですわ!まったく、愚かな生徒がいたものですわ!」
マイヤーは一息にそう言い終わると鼻息を荒くしながら胡桃を見ていた。胡桃は俯いていて、流石の胡桃もこの仕打ちは応えたのか…?と少し同情した。確かに他の聖女候補と比べれば力は劣っているのかもしれないが聖女候補であるのは事実な訳で。こんな能力値だけを見て、乱暴に生徒手帳を叩きつけて、挙句の果てに勝手に怒りだして侮辱されるなんて。この言われようは流石のボクも少しカチンと来るものがあり、一言言ってやろうと前に出た。その時だ。「チッ」と大きな舌打ち音が隣から聞こえてくる。胡桃だ。ボクもマイヤーも予想打にしない出来事に目をパチクリとさせる。胡桃はそれから勢いよく顔を上げたと思ったら、
「うるっさいなばばぁ!!!」
普段は可愛らしい小さな女の子だったあの胡桃が目をかっぴらいてこれでもかっというほどに眉間に皺を寄せて大声でそう叫んだのだ。その小さな身体の何処からそんな野太い声が出ているのか。胡桃の怒号が学校中に響き渡った。
ボクは一体何が起こっているのかまだ理解ができずただ唖然とする。先程のアイヤーの言葉にそんなに腹が立ったのか、それから胡桃は一息つくと普段の様子では全く想像できない形相でマイヤーに怒号を浴びせたのだ。
「アンタの家が偉いのかなのか何なのか知らないけど、だからと言って勝手に見定められて勝手に罵る権利はオメェにはねぇんだよ!!この学園は貴族だろうが平民だろうが平等のはずだろ?!それを教師が覆して来てるんじゃねぇ!一族に謝れ!国民に謝れ!!私に謝れ!!!」
シン…。
静まり返って周りは唖然と胡桃を見る。そこには可愛らしい胡桃の姿は無く、ワイルドに髪を乱して肩で息を吸う、そんな少し野生じみた胡桃の姿があったのだ。
暫くして胡桃は我に返ったかのようにハッとすると、慌てた様子で乱れた髪を整えるてコホン、と咳払いをしてから胡桃はニコリと可愛らしく笑った。
「てへっ!焦りすぎてウチったら大声出しちゃったぁ。会えないならいいや!ばいばーい!」
そう言って胡桃はまるで何事もなかったかの様に、全てを帳消しにしようとしている様に、軽いステップを踏みながら優雅にその場から立ち去った。
♢♢♢
取り残された門番の生徒とマイヤーはただ唖然と固まっていたが生徒会室の扉が開くことでようやく現実へと引き戻されるのだった。
「何事だ?」
「か、カサブランカ様!」
扉から顔を覗かせたのは、薄い空色の髪の毛で背の高い美丈夫な男。まるで美術品の彫刻の如く高貴なオーラを纏っているのはサルウェル・カサブランカだ。マイヤーはサルウェルの姿を確認すると心臓位置に手を当てて頭を下げた。その姿を見て呆れた様子でサルウェルはため息を吐いた。
「マイヤー先生、アンタも俺も同じ立場の教師で『様』はいらねぇし頭を下げる必要もねぇって何度言えば分かって貰えるんですか。」
「い、いえ。しかし、かの五大賢者が一家に当たるカサブランカ家の御子息にあたる貴方様にその様な無礼な事は…。」
「はぁー。ったく、この学園の階級差別はいつになったら無くなるんだ…。ここは堅苦しい貴族の夜会じゃねんだよ。…で、何かありましたか?」
サルウェルは眉間を抑えてからやがてジトリとした目でマイヤーに尋ねた。マイヤーは頭を上げてから引き攣った笑みを浮かべながら話た。
「はい。聖女候補を名乗る女子生徒が皆様にお会いしたいとの事で来たのですが本物かどうか疑わしい者でしたので一先ず追い返しました。クルスクルミと言う人物です。」
「聖女候補が生徒会に会いたい?入学早々にか?…確かにそれはちょっと怪しいな。」
生徒会には過激な好意を抱いた生徒やその逆に生徒に成りすまし国に反乱意識を持った者が押し掛けようとしていたりする。入学早々、生徒会に乗り込もうだなんて少なくともまともな奴では無いだろう。果たしてクルスクルミという人物は何の目的で誰に会いに来たのか。聖女候補だろうと無かろうと此方で調査が必要なのかもしれないとサルウェルは思った。
「ねぇ、いつまで立ち話をしているつもり?王様が退屈過ぎて遊び始めているんだけど。」
「おぉ、ラスか。悪いな。もう終わった。」
サルウェルの後ろから現れたのはクラース・イポメアニルだ。色素が薄く、儚げな容姿とは裏腹に美青年は棘のついた声色でサルウェルに話しかけた。クラースはマイヤーに「もう行っていただいても結構ですよ。」と声を掛けるとサルウェルと共に扉の中へと消えて行った。
♢♢♢
「で!?で!?どんな女子だった?!マウンテンコングか?!サーベルドラゴンか?!グリゴリーベアか?!」
「…。」
「王様、座ってください。」
サルウェルとクラースの帰還をキラキラとした目で出迎えたのは王国『マギカアストロム』の第一王子、アドステラ・デ・キングプロティア。この学園の生徒会長だ。光に反射してキラキラと光るサラリとした黄金のブロンドを揺らしてその美しい彫りの深い顔をまるで幼児の如く輝かせていた。
「あんな野太い声を出す女子なんだ、きっと身体のでかい女子に違いない!おいサル!もったいぶらないで早く教えてくれ!」
アドステラはサルウェルの両方を掴むとガシガシと揺さぶった。
「ちょ、おま、やめ、力つよ、」
「何だ何だ〜?聞こえんぞ??」
「てめ、ちょ、マジで、」
「ふたりとも。」
アドステラの力が強いのかサルウェルは見る見るうちに顔が青くなっていった。そして白目を剥いて泡を拭き始めたところで二人の肩をガシリと掴んだのは綺麗に微笑むクラースだった。しかしクラースの機嫌はすこぶる悪かったのだ。天使の様な笑みは一瞬にして消えて悪魔の様な睨みを二人に向けて地を這う様な声で語りかけた。
「早く、座って、公務を、全うして。」
「「あ、あぁ。」」
生徒会の仕事は山積みでまだまだ帰れそうになかった。
【マイヤー先生】
皇族の分家にあたる家系の人物。
階級や能力値で生徒達を差別する教師達の一人。
【五大賢者】
太古昔、神の導きにより大陸を統一し、国を作り上げた五人の魔法使い。
【サルウェル・カサブランカ】
大賢者の血筋、皇族にあたるカサブランカ家の長男。アドステラの側近でアドステラのクラスの担任。苦労人気質。水色の髪に青い目、生きる彫刻。身長がデカいイケメン。攻略対象その二。
【クラース・イポメアニル】
大賢者の血筋、皇族にあたるイポメアニル家の長男。白に近いプラチナブロンドで青い目の儚い系美青年。天使の様な悪魔で毒舌で容赦が無い。攻略対象その三
【アドステラ・デ・キングプロティア・マジカアストロム】
大賢者の中でも中心となって人々を束ねていた王族にあたる血筋、キングプロティア家の長男にして国第一王子。黄金のブロンドに碧眼の清純派イケメン。陽気で気さく。面白そうなことが大好きですぐに面倒ごとに突っ込もうとする。サルウェルの頭痛の元。攻略対象その三。
【国立魔法学園】
様々な国から生徒が集まる世界一デカい歴史ある名門学校。
身分も国籍も全て平等で生徒も先生も平等に学び学ばせなければならない。




