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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第152話 母が残した最後の朝

国道へ戻った朝。


優斗は母の「本当に最後」の手紙を読み終え、初めて誰かへ黒糖飴を手渡した。


しかし、父・拓海は静かに告げる。


「まだ終わっていない。」


二十年以上前の約束には、最後の一ページが残されていた。

朝の風が優しく頬を撫でた。


国道を走る車は少しずつ増え始めている。


当たり前の朝。


けれど優斗にとっては、何より特別な朝だった。


「父さん。」


ロードバイクを押しながら歩く。


「母さんが毎年来てたって、本当なんだよな。」


拓海は静かに頷いた。


「ああ。」


「雨の日も。」


「雪の日も。」


「お前の誕生日も。」


優斗は思わず笑った。


「母さんらしいな。」


「そうだな。」


拓海も笑う。


二人の笑い声が重なる。


その時だった。


灯が国道脇のバス停へ歩いていく。


古びた木製のベンチ。


優斗は何気なく後を追った。


「どうした?」


灯はベンチの下を指差す。


「ここ。」


覗き込む。


木の板が少し浮いていた。


優斗はそっと持ち上げる。


カタン。


中から、小さな缶が出てきた。


錆びた丸い缶。


蓋には、油性ペンで文字が書かれている。


『二〇〇〇年 約束』


優斗の鼓動が速くなる。


「また母さんか。」


拓海は缶を見た瞬間、目を見開いた。


「これ。」


「知ってるのか?」


「埋めた。」


拓海は小さく笑う。


「お母さんと二人で。」


優斗は蓋を開けた。


中には、三つのものが入っていた。


一本のカセットテープ。


一枚の写真。


そして、小さな紙飛行機。


「紙飛行機?」


優斗は広げてみる。


幼い字で書かれていた。


『ゆうとの』


『ひこうき』


優斗の目が潤む。


「俺が作ったのか。」


拓海は頷いた。


「あの日。」


「飛ばした。」


記憶が揺れる。


父と笑いながら紙飛行機を飛ばす幼い自分。


母が拍手している。


灯が追い掛けて走る。


「思い出した。」


優斗は笑った。


「俺、全然飛ばせなくて。」


拓海が吹き出す。


「最後は俺が飛ばした。」


「ズルい。」


「泣いてたぞ。」


「それ言うなよ。」


二人は声を出して笑った。


その笑い声を聞いて、教育係が腕を組む。


「やっと親子らしくなったな。」


真琴も微笑んでいた。


「本当に。」


「よかった。」


優斗はカセットテープを手に取る。


「これも母さん?」


拓海は首を横に振る。


「違う。」


「俺だ。」


優斗は息を呑む。


「父さんが録った?」


「お前が五歳の時。」


近くにあった古いラジカセへテープを入れる。


カチッ。


ザー……。


ノイズ。


そして。


『未来の優斗へ!』


元気な男の声が響く。


若い拓海だった。


優斗は思わず笑う。


『今、お前は五歳!』


『黒糖飴を三つ食べて、お母さんに怒られた!』


周りから笑いが漏れる。


『もし大人になってこれを聞いてたら。』


少しだけ間が空く。


『ちゃんと笑えてるか?』


優斗は静かに目を閉じた。


笑えてる。


今なら胸を張って言える。


『泣いてもいい。』


『迷ってもいい。』


『でも、誰かと笑えるなら、それが帰る場所だ。』


テープが止まる。


カチッ。


静かな朝が戻る。


優斗はラジカセへ向かって小さく呟いた。


「笑えてるよ。」


拓海は何も言わなかった。


ただ、嬉しそうに笑っていた。


その時。


陽が空を見上げる。


「もうすぐ。」


「何が?」


優斗が尋ねる。


陽は国道の向こうを指差した。


遠くの交差点。


一台の白いワゴン車が、ゆっくりこちらへ近づいている。


「来る。」


優斗は目を細める。


見覚えのない車だった。


しかし。


拓海の表情が変わる。


「……。」


「父さん?」


拓海は小さく息を吸った。


「約束の日に。」


「俺たちを助けた人だ。」


優斗は驚く。


「あの日を知ってる人?」


白いワゴン車は静かに停車した。


運転席のドアが開く。


降りてきたのは、一人の老人だった。


背筋は少し曲がっている。


白髪。


そして、その手には。


見覚えのある飴玉が握られていた。


黒糖飴だった。


老人は優斗を見つけると、目を細めて笑った。


「やっと。」


その笑顔は。


母が最後に出会った老人と、まったく同じだった。


しかし次の言葉で、優斗は息を呑む。


「約束を返しに来たよ。」


老人は懐から、もう一つの封筒を取り出した。


封筒には、母の字で書かれていた。


『優斗と拓海へ』

第152話、ありがとうございました。


今回は、国道のバス停に隠されていた“約束の缶”が開かれ、優斗が幼い頃の紙飛行機や、拓海が五歳の優斗へ残したカセットテープが登場しました。


「誰かと笑えるなら、それが帰る場所だ。」


この言葉は、物語全体のテーマをもう一度親子の会話として結び直しています。


そして最後に現れたのは、“母が最後に出会った老人”。


彼が持ってきた『優斗と拓海へ』の封筒には、二十年以上前の約束を締めくくる最後の真実が眠っています。

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