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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第151話 もう一度、あの日の国道へ

朝日が差し込む国道。


優斗と拓海は、二十年以上越えられなかった時間を並んで歩き始める。


しかし、本当の終着点はまだ先にあった。


すべての始まりだった「あの日」の国道が、最後の答えを待っている。

ギィ……。


最後の扉が開き切る。


地下の冷たい空気から、朝の風へ変わる。


優斗はゆっくりと外へ足を踏み出した。


眩しかった。


朝日が国道を黄金色に染めている。


「同じだ。」


思わず呟く。


あの日、自分が横になっていた景色。


ガードレール。


白線。


少し傾いたカーブミラー。


全部、変わっていない。


変わったのは、自分だけだった。


「ここだ。」


拓海が道路脇へ歩く。


そこには、小さな花が咲いていた。


白い花。


「母さん。」


優斗はしゃがみ込む。


花の根元には、小さな石が置かれていた。


裏返す。


そこに刻まれていた文字を見て、息が止まる。


『ありがとう』


優斗は目を閉じた。


母が最後に残した言葉。


地下で見た記憶。


全部が、この場所へ繋がっていた。


「お母さんは。」


拓海が静かに話し始める。


「毎年ここへ来てた。」


「え?」


「お前に会いに。」


優斗は石を握り締めた。


知らなかった。


誰も教えてくれなかった。


「俺。」


涙がこぼれる。


「ずっと一人だと思ってた。」


拓海は優斗の肩を軽く叩いた。


「違った。」


「ずっと見守ってた。」


風が吹く。


白い花びらが舞い上がる。


灯だった。


いつの間にかガードレールの向こうへ立っている。


「灯。」


優斗が笑う。


灯も笑い返した。


「帰ってきたね。」


その一言だけで十分だった。


「ただいま。」


優斗が答える。


灯は嬉しそうに頷く。


その時。


国道を一台の軽トラックが通り過ぎた。


運転していた年配の男性が、優斗たちへ軽く手を上げる。


何気ない朝。


何気ない挨拶。


優斗は、その当たり前がこんなにも温かいものだったのかと初めて思った。


「優斗。」


教育係が道路脇を指差す。


「見ろ。」


そこには、古びた自転車が置かれていた。


「あっ。」


優斗は駆け寄る。


錆びたフレーム。


擦り切れたグリップ。


忘れるはずがない。


「俺のロードバイク。」


国道を走り続けた相棒だった。


「あの日から。」


蓮司が近づく。


「誰も処分しなかった。」


優斗はハンドルへ手を添える。


まだ残っていた。


待っていてくれた。


その時。


サドルの下へ、小さな封筒が挟まっていることに気づく。


「また手紙?」


取り出す。


表には母の字。


『本当に最後』


優斗は苦笑した。


「最後って何回目だよ。」


拓海も笑う。


「お母さんらしい。」


封を開く。


短い手紙だった。


『優斗へ』


『もし、この手紙を読めているなら、私はきっと安心しています。』


『あなたは、人を信じることを選べましたか?』


優斗は周りを見た。


教育係。


E-01。


拓海。


蓮司。


真琴。


灯。


陽。


みんながいる。


「選べた。」


小さく答える。


続きを読む。


『黒糖飴はね。』


『特別なお守りじゃない。』


『誰かと分け合える優しさの形なの。』


優斗は掌を開く。


陽から受け取った二つの黒糖飴。


母が最初に渡してくれた意味。


ようやく分かった。


『だから、いつか困っている誰かに渡してあげて。』


『その時、その人はきっと帰る道を思い出せるから。』


優斗は手紙を胸へ当てた。


「母さん。」


空を見上げる。


青かった。


その時。


道路の向こうで、小さな影が見えた。


ランドセルを背負った男の子。


一人で歩いている。


俯いたまま。


足取りが重い。


優斗は立ち上がる。


「どうした?」


教育係が聞く。


優斗はポケットから黒糖飴を一つ取り出した。


少し笑う。


「母さんとの約束。」


そう言って、道路を渡った。


男の子は驚いた顔で見上げる。


「お兄ちゃん?」


優斗は黒糖飴を差し出した。


「甘いぞ。」


男の子は少し迷ってから受け取る。


包装紙を開く。


口へ入れる。


「……甘い。」


その瞬間。


男の子の表情が少しだけ柔らかくなった。


「ありがとう。」


優斗は笑う。


「気を付けて帰れよ。」


男の子は元気よく頷いた。


「うん!」


走っていく背中を見送りながら。


拓海が静かに言う。


「始まったな。」


優斗は頷いた。


「ああ。」


もう、自分は誰かを帰せる。


でも。


それは特別な力じゃない。


優しさを渡すこと。


隣で灯が空を見上げた。


「あと一つ。」


優斗が振り返る。


「何?」


灯は国道の先を指差す。


遠く。


朝日に照らされた一本道。


その先で。


一人の女性が手を振っているように見えた。


風が吹く。


白い花びらが舞う。


もう姿は見えない。


それでも。


優斗は確かに微笑み返した。


「ありがとう。」


その言葉は。


風に乗って、まっすぐ国道の先へ運ばれていった。

第151話、ありがとうございました。


今回は、ついに優斗が「あの日の国道」へ帰ってきました。


母が毎年訪れていた場所。


待ち続けていたロードバイク。


そして「本当に最後」の手紙。


黒糖飴の意味が、「誰かと分け合える優しさ」だったことが、ようやく物語全体の答えとして繋がりました。


そして最後、優斗は初めて誰かへ黒糖飴を手渡します。


受け継がれる優しさ。


ここから物語は、本当の最終章へ向かって歩き始めます。

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