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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第148話 道標の始祖

「あれが、道標を作った存在だ。」


拓海が見上げた先に現れた、無数の目を持つ黒い球体。


帰還者。


守人。


灯。


黒糖飴。


すべての始まりが、ついに姿を現す。


そして優斗は、“帰す”ことの本当の意味を知る。

『処理を開始する。』


機械のような声が地下空間に響く。


巨大な黒い球体は、音もなく降下を続けていた。


無数の目が開く。


一つ。


二つ。


十。


百。


そのすべてが、優斗だけを見つめていた。


「優斗!」


拓海が叫ぶ。


「目を見るな!」


優斗は咄嗟に視線を逸らした。


その瞬間。


教育係が息を詰まらせる。


「くっ……!」


一瞬だけ球体を見た教育係の足が止まる。


身体が硬直していた。


E-01が即座に支える。


「精神干渉を確認。」


「見るだけで……?」


「記憶へ直接アクセスしています。」


優斗は拳を握る。


「あいつは、人の記憶を見るのか。」


拓海は首を横に振った。


「違う。」


「記憶じゃない。」


「帰りたい場所を覗く。」


その言葉に、黒い優斗が反応した。


「だから……。」


目を伏せる。


「俺は帰れなかった。」


灯がそっと黒い優斗の手を握った。


「もう、一人じゃない。」


黒い優斗は驚いたように灯を見る。


初めて。


その瞳に、本当の涙が浮かんだ。


その時だった。


球体の目が一斉に光る。


『観測開始。』


『帰還者番号一。』


『帰還分離個体。』


『処理対象。』


「来るぞ!」


蓮司が叫ぶ。


球体から黒い糸のようなものが無数に伸びる。


一直線に優斗へ向かう。


バチィッ!


拓海が優斗を突き飛ばした。


黒い糸が床へ突き刺さる。


石畳が一瞬で黒く染まった。


「触るな!」


拓海の声が響く。


「あれは帰る場所を奪う!」


優斗は立ち上がる。


「父さん!」


拓海は息を切らしていた。


二十年以上眠っていた身体では、長く動けない。


それでも前へ出る。


「俺が止める。」


「無理だ!」


「無理でも。」


拓海は笑った。


「あの日と同じだ。」


優斗の胸が締め付けられる。


また。


父は自分を守ろうとしている。


「違う。」


優斗は一歩前へ出た。


「今度は一緒だ。」


その言葉に、拓海は少しだけ目を見開く。


そして。


嬉しそうに笑った。


「そうだったな。」


灯が白い花びらを舞わせる。


花びらは優斗の周りを包む。


すると。


ポケットの中の黒糖飴が温かくなった。


「……?」


二粒の黒糖飴。


そして。


黒い優斗が持っていた最後の一粒。


三粒が同時に光る。


球体が反応する。


『異常。』


『約束反応を確認。』


『修正対象。』


その瞬間。


地下全体へ鐘のような音が響いた。


カァン……。


誰も鳴らしていない。


それなのに。


どこか懐かしい音だった。


灯が小さく笑う。


「始まる。」


優斗が聞き返す。


「何が。」


灯は一本道を指差した。


白い石畳が、一本だけではなくなっていた。


二本。


三本。


無数の道が広がる。


それぞれ違う景色へ続いている。


「全部。」


灯が静かに言う。


「誰かの帰る道。」


優斗は息を呑む。


海へ続く道。


雪景色へ続く道。


街へ続く道。


家族の待つ家へ続く道。


人生そのものが、道になっていた。


その中で。


一本だけ。


真っ黒な道がある。


球体は、その道の上に浮かんでいた。


拓海が低く呟く。


「あれが始祖だ。」


「始祖?」


「道標を作った最初の存在。」


「でも。」


拓海は球体を見据える。


「最初は敵じゃなかった。」


優斗が振り向く。


「どういうこと。」


拓海はゆっくり話し始める。


「昔。」


「道標は、一つしかなかった。」


「迷った人を帰すためだけの場所。」


灯が頷く。


「優しかった。」


その一言が重かった。


拓海は続ける。


「でも。」


「帰りたくない人が現れた。」


優斗は思い出す。


自分もそうだった。


国道で。


人生を終わらせようとした。


「始祖は。」


「全員を帰そうとした。」


「だけど。」


「帰りたくない心まで消そうとした。」


優斗は目を見開く。


「だから。」


「壊れた。」


球体の目が一斉に開く。


『帰還拒否。』


『修正。』


『修正。』


『修正。』


声が重なる。


まるで壊れた機械だった。


灯が一歩前へ出る。


「かわいそう。」


優斗は灯を見る。


「助けたいのか。」


灯は頷いた。


「帰れてない。」


その言葉で、優斗は理解した。


始祖もまた。


帰れなかった存在だった。


その時。


球体の中央に、一つだけ違う目が開いた。


琥珀色だった。


優斗は息を呑む。


その色は。


母の記憶。


父の手紙。


黒糖飴。


全部と同じ色だった。


そして。


球体が初めて、人間のような声で呟いた。


「……帰り方を。」


地下空間が静まり返る。


「教えて。」

第148話、ありがとうございました。


今回は、“道標の始祖”が単なる敵ではなく、「帰れなくなった最初の存在」だったことが明らかになりました。


優斗が戦う相手は、憎しみだけで動く怪物ではなく、壊れた願いそのものです。


そして最後に始祖が口にした「帰り方を教えて」。


この一言で、物語は「倒す」から「救えるのか」という新たな局面へ入ります。


ここから終盤へ向けて、優斗の選択が世界そのものの結末を決めていきます。

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