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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第147話 もう一人の優斗

「国道で死んだ方のお前だよ。」


黒い影が口にした、その一言。


一度死んだという真実は、優斗自身の姿をした存在となって目の前へ現れた。


道標が隠してきた最大の秘密が、ついに動き始める。

「俺を帰せ。」


黒い優斗の声は、不思議なほど落ち着いていた。


怒鳴り声でもない。


恨みをぶつける叫びでもない。


静かだからこそ、背筋が冷えた。


優斗は息を整える。


目の前にいるのは、自分の顔をした何か。


でも、その瞳だけは違った。


真っ黒だった。


光を一つも映していない。


「お前は誰だ。」


優斗がもう一度問い掛ける。


黒い優斗は笑った。


「だから言っただろ。」


一歩近づく。


「お前が捨てた方だ。」


その言葉に、頭の奥がズキッと痛む。


雨。


国道。


ヘッドライト。


ブレーキ音。


そして――。


「……っ!」


優斗は頭を押さえた。


「思い出すな!」


拓海が叫ぶ。


しかし、もう止まらなかった。


記憶が溢れ出す。


あの日。


優斗は確かに国道へ横になった。


「もう終わりでいい。」


そう思っていた。


車が近づく。


目を閉じた。


その瞬間。


誰かが叫んだ。


『優斗!』


父だった。


いや。


母もいた。


灯もいた。


白い花びらが舞った。


そして。


世界が二つに割れた。


「……二つ?」


優斗が呟く。


黒い優斗は嬉しそうに笑う。


「そう。」


「ようやく思い出した。」


地下空間が静まり返る。


蓮司も真琴も言葉を失っていた。


拓海だけが苦しそうに目を閉じる。


「兄さん。」


蓮司が震える声を漏らす。


「本当に分けたのか。」


拓海は小さく頷いた。


「分けるしかなかった。」


優斗は父を見る。


「何を。」


拓海の目には涙が浮かんでいた。


「お前の命だ。」


「え?」


拓海はゆっくり話し始める。


「あの日、お前は本当に死んだ。」


「でも。」


「道標には、一つだけ禁じられた方法があった。」


E-01が反応する。


「禁術――帰還分離。」


拓海が頷く。


「命を二つに分ける。」


優斗は黒い自分を見る。


「じゃあ。」


「こいつは。」


「お前が捨てたんじゃない。」


拓海の声が震える。


「俺が切り離した。」


地下空間が重く沈む。


優斗は何も言えなかった。


黒い優斗は笑顔のまま。


「聞いた?」


首を傾ける。


「お前を助けるために。」


胸を指差す。


「俺は置いていかれた。」


その一言だけは。


恨みそのものだった。


「二十年以上。」


黒い優斗は静かに歩く。


「暗い場所で。」


「帰れないまま。」


「待ってた。」


灯が一歩前へ出た。


「違う。」


初めて強い声だった。


黒い優斗が灯を見る。


「灯。」


「あなたも。」


灯は涙を浮かべる。


「一緒に遊んだ。」


黒い優斗の笑顔が、一瞬だけ崩れた。


「……。」


「夏祭り。」


「川。」


「黒糖飴。」


灯は一つずつ思い出を口にする。


黒い優斗の指先が震える。


「やめろ。」


「約束。」


「やめろ!」


地下空間が揺れる。


黒い霧が溢れ出す。


「俺は!」


叫び声が響く。


「忘れられた!」


その瞬間。


優斗は動いた。


「違う!」


黒い優斗の腕を掴む。


「俺も忘れてた!」


「……。」


「でも。」


優斗の目から涙が溢れる。


「今、思い出した。」


二人の手が触れた瞬間。


白い光と黒い光が激しくぶつかる。


バチィッ!


衝撃が地下を揺らす。


E-01が警告する。


「存在融合反応!」


教育係が叫ぶ。


「離れろ!」


しかし。


二人は離れない。


黒い優斗が震える声で言う。


「俺。」


「帰れるのか。」


優斗は迷わなかった。


「帰ろう。」


その一言だった。


白い花びらが舞う。


灯が両手を重ねる。


拓海が目を閉じる。


「優斗。」


「それが。」


父は微笑んだ。


「帰還者だ。」


その瞬間。


黒い優斗の身体から黒い霧が剥がれ始める。


少しずつ。


少しずつ。


黒かった瞳へ光が戻る。


しかし。


その時だった。


円形の部屋全体へ、聞いたことのない声が響いた。


『確認。』


機械のような声だった。


『禁術・帰還分離。』


『未完了個体を検出。』


全員が凍りつく。


天井が開く。


暗闇の奥から、巨大な黒い球体が降りてくる。


目が無数についていた。


その全てが優斗を見ている。


『処理を開始する。』


拓海の表情が変わる。


「まずい。」


「何だ!」


蓮司が叫ぶ。


拓海は黒い球体を睨む。


「あれが。」


低く。


はっきりと言った。


「道標を作った存在だ。」


地下空間が震える。


帰還者。


守人。


灯。


黒糖飴。


その全てを生んだ存在が。


ついに姿を現した。

第147話、ありがとうございました。


今回は、「黒い優斗」の正体が、拓海によって禁術《帰還分離》で切り離されたもう一つの命だったことが明らかになりました。


優斗は自分自身を敵として倒すのではなく、「一緒に帰ろう」と手を差し伸べます。


それこそが、帰還者の資格でした。


しかし、その直後に現れた巨大な黒い球体。


「道標を作った存在」が姿を現したことで、物語は家族の秘密を超え、世界の根源へと踏み込んでいきます。

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