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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第144話 帰還者の資格

国道の下で眠る父。


“道標の守人”だった拓海。


そして、人生の光が流れる巨大な円形の部屋。


黒い光は確実に近づいていた。


優斗は、父を救うための「三つの手順」の本当の意味を知ることになる。

黒い光は止まらなかった。


円形の部屋に浮かぶ国道の模型の中を、他の白い光とは逆向きに進み続ける。


「もう第三層だ。」


蓮司の声が低くなる。


E-01が模型を解析する。


「推定到達時間、十一分四十二秒。」


「そんなに近いのか。」


教育係が舌打ちする。


「なら、その前に拓海さんを起こす。」


優斗はカプセルへ駆け寄った。


父の寝顔は穏やかだった。


こんなにも近くにいるのに、まだ届かない。


端末には三つの手順が表示されたままだ。


第一段階――生命維持装置を停止。


第二段階――道標継承。


第三段階――帰還者を選ぶ。


「継承って何なんだ。」


蓮司はカプセルへ手を置いた。


「兄さんが背負ってきた役目を。」


少し間を置く。


「誰かが引き継ぐことだ。」


優斗は息を呑んだ。


「俺が?」


「本来なら。」


蓮司は苦しそうな表情を浮かべる。


「そうなる。」


優斗は父を見る。


二十四時間。


このままなら父は助からない。


でも継承すれば、自分が守人になる。


「守人になると、どうなる。」


真琴が静かに答えた。


「国道に迷った人を帰す。」


「それだけ?」


誰も答えない。


沈黙が答えだった。


優斗は察した。


「帰れなくなるのか。」


蓮司が目を閉じる。


「兄さんは、そうだった。」


自分は帰る側ではなくなる。


帰す側になる。


だから父は、あの日。


自分を帰して。


ここへ残った。


その時だった。


灯が模型へ近づいた。


白い指先で、一つの白い光に触れる。


すると光が揺れる。


優斗の頭へ景色が流れ込んだ。


高校生らしい制服姿の少女。


雨の国道。


泣きながら歩いている。


次の瞬間。


白い光が交差点を曲がる。


少女は笑った。


「……誰?」


灯が答える。


「あの子。」


「帰れた。」


優斗は模型を見る。


「これ、一人一人の人生なのか。」


灯は頷いた。


「守人は。」


少しだけ言葉を探す。


「最後の一歩を。」


「押してあげる人。」


優斗は胸が熱くなった。


父は、ずっと。


誰かの人生を守ってきた。


その時。


模型の黒い光が急に速度を上げた。


「速い!」


E-01が警告を発する。


「到達予測を修正。」


「六分。」


地下全体が揺れる。


ドゴン。


一本道の端が崩れ始めた。


「来る!」


教育係が武器を構える。


しかし敵は見えない。


見えるのは模型だけ。


すると。


黒い光が模型から消えた。


「消えた?」


優斗が周囲を見回す。


その瞬間。


パチン。


部屋の照明が一つ消えた。


続いて。


パチン。


また一つ。


暗闇が広がる。


灯だけが白く輝いている。


「優斗。」


初めて。


灯が強く名前を呼んだ。


「後ろ。」


優斗が振り返る。


そこには。


誰もいなかった。


……はずだった。


床に、人影だけが映っている。


影だけ。


身体がない。


「何だ……。」


影がゆっくり立ち上がる。


壁から剥がれるように。


音もなく。


そして。


その影は、人の形になった。


蓮司の顔色が変わる。


「影帰り。」


「影帰り?」


「帰れなかった者だ。」


優斗の背筋が凍る。


影には顔がない。


なのに。


口だけが笑っていた。


「返せ。」


掠れた声だった。


「返せ。」


もう一度。


「返せ。」


優斗は息を止める。


「何を。」


影が腕を伸ばす。


指先は真っ黒だった。


「帰る場所を。」


その言葉に。


父の日記が脳裏をよぎる。


『帰る場所を忘れるな。』


影は一歩ずつ近づく。


白い光へ触れようとする。


灯が両手を広げた。


白い花びらが舞う。


影が止まる。


「灯!」


優斗が叫ぶ。


灯は振り返らない。


ただ静かに言った。


「この人。」


「迷ってる。」


優斗は影を見る。


敵だと思った。


でも違う。


帰れなかった人。


誰にも帰してもらえなかった人。


影は震える声で呟く。


「家に。」


その一言だった。


「帰りたい。」


地下空間が静まり返る。


優斗は拳を握る。


父が守ってきたもの。


灯が守っているもの。


道標が存在する理由。


全部。


今、この一人の言葉に繋がった。


「……帰ろう。」


優斗が手を伸ばす。


その瞬間。


影の身体が激しく揺れた。


「触るな!」


蓮司が叫ぶ。


しかし間に合わない。


優斗の指先が影へ触れた瞬間。


眩い白い光が爆発するように広がった。


優斗の視界は真っ白に染まる。


最後に聞こえたのは。


父・拓海の声だった。


「優斗。」


そして。


「それが、お前の資格だ。」

第144話、ありがとうございました。


今回は、“道標の守人”が本当に守ってきたものが少しずつ見えてきました。


国道の模型に流れる一つ一つの光は、誰かの人生。


そして“影帰り”とは、帰る場所を失った者たちでした。


優斗が最後に影へ手を伸ばいた行動は、父・拓海が守り続けた想いそのものでもあります。


そして最後に響いた「それが、お前の資格だ」という言葉。


次回、第145話では、優斗が“帰還者”として認められる本当の意味が明らかになります。

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