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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第140話 最後の道標

三日前に撮られた一枚の写真。


そこには、死んだはずの父・拓海にしか見えない男が写っていた。


そして白い少女――灯は、“最後の案内人”と呼ばれた。


優斗が追い続けてきた答えは、もう目の前まで迫っていた。

ゴゴゴゴ……。


地下最深部が低く唸り続ける。


天井から細かな砂が舞い落ち、一本道の白い石畳に積もっていく。


優斗は写真を強く握り締めた。


「父さんは……生きてるのか。」


蓮司は答えなかった。


代わりに、白い一本道の先を見つめる。


「確かめるしかない。」


その一言だけだった。


灯が一歩前へ出る。


白い花びらが足元から舞い上がる。


今まで霞んで見えていた彼女の姿が、少しだけ鮮明になっていた。


「灯。」


優斗が名前を呼ぶ。


灯は振り返り、小さく笑う。


そして一本道の先を指差した。


「行こう。」


その瞬間だった。


ブツッ。


地下空間の灯りが一斉に消えた。


「停電!?」


教育係が身構える。


E-01の瞳だけが青く光り続ける。


「外部から電力を遮断されました。」


暗闇。


聞こえるのは呼吸だけ。


しかし次の瞬間。


白い一本道だけが、淡く光り始めた。


まるで進むべき道を示すように。


「これが……道標。」


優斗が呟く。


蓮司は静かに頷いた。


「昔からそうだった。」


「昔?」


「迷った者には、この道だけが光る。」


優斗は一本道へ足を踏み出す。


一歩。


二歩。


そのたびに、足元の石畳が柔らかく光る。


そして三歩目で。


ズキッ。


頭の奥に痛みが走った。


視界が揺れる。


景色が変わる。


――夏。


蝉の声。


幼い自分。


父が笑っている。


「優斗。」


「うん!」


「今日は一つだけ覚えて帰れ。」


父はしゃがみ込み、小さな黒糖飴を見せた。


「道に迷ったら?」


幼い優斗が元気よく答える。


「帰る場所を思い出す!」


父は嬉しそうに笑った。


「正解。」


その笑顔が。


今までで一番鮮明だった。


「父さん!」


優斗が手を伸ばす。


しかし景色は砕けるように消えた。


「……っ!」


現実へ戻る。


肩を掴まれる。


教育係だった。


「大丈夫か!」


優斗は息を整える。


「今のは……記憶だ。」


E-01が即座に反応する。


「脳活動に変化を確認。」


「戻り始めてる。」


優斗は拳を握った。


思い出せる。


少しずつ。


確実に。


その時だった。


一本道の先から、人影が現れた。


「誰だ!」


教育係が叫ぶ。


人影は動かない。


ゆっくりと近づいてくる。


足音が響く。


コツ。


コツ。


コツ。


そして光の中へ入った。


優斗は息を呑む。


「……父さん?」


違った。


しかし、違わなかった。


その男は、拓海によく似ていた。


だが年齢が違う。


もっと若い。


二十代後半ほどに見える。


蓮司が震える声で呟く。


「兄さん……。」


男は静かに笑った。


「久しぶりだな。」


優斗は混乱した。


「え?」


「どういうことだ?」


蓮司の目には涙が浮かんでいた。


「そんなはずない。」


男は苦笑する。


「俺も、そう思う。」


優斗が近づく。


「あなたは誰なんだ。」


男は答えた。


「拓海だ。」


地下空間が静まり返る。


教育係が即座に否定する。


「あり得ない。」


「写真では今より年上だった。」


「三日前の写真とも違う。」


男はゆっくり頷く。


「その通りだ。」


そして胸元から、一つの黒糖飴を取り出した。


優斗たちが持つものとは違う。


包装紙が金色だった。


「これが三つ目。」


優斗が目を見開く。


「三つ目?」


男は優しく笑う。


「約束を開く最後の飴だ。」


灯が男の隣へ立つ。


二人は同じ方向を見つめていた。


一本道のさらに奥。


暗闇の中に、大きな扉が浮かび上がる。


高さ五メートルはある石の扉。


中央には、道標の紋章。


しかし今度は違う。


紋章の周りに、三つの丸い窪みが刻まれていた。


優斗は自分の二粒を見る。


男は金色の一粒を見る。


「三つ……揃う。」


蓮司が青ざめた。


「待て!」


声を張り上げる。


「まだ開けるな!」


男が振り返る。


「理由は一つ。」


蓮司の拳が震えていた。


「その扉を開けば。」


地下全体が大きく揺れる。


ドゴォォン!


天井のひびが一気に広がる。


蓮司は叫んだ。


「お前は、二度と元の人生へ戻れなくなる!」


優斗は三つの黒糖飴を見つめた。


国道で始まった人生。


母が守った約束。


父が遺した道標。


そのすべてが。


今、三粒の黒糖飴の上で一つになろうとしていた。

第140話、ありがとうございました。


今回は、優斗の記憶がさらに鮮明になり、父との幼い日の会話が初めてはっきりと描かれました。


そして現れた、若き日の拓海を名乗る男。


三つ目の黒糖飴。


道標の紋章に刻まれた三つの窪み。


物語はついに「約束を開く最後の条件」が揃う直前まで辿り着きました。


しかし、その扉を開けば元の人生へ戻れなくなる――。


蓮司の警告が意味する本当の代償は、次回明らかになります。

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