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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第139話 父に似た男

地下へ侵入した五人。


その先頭に立つ男は、父・拓海と瓜二つの顔をしていた。


敵なのか。


味方なのか。


そして“道標”とは何なのか。


止まっていた運命が、大きく動き始める。

土煙がゆっくりと晴れていく。


優斗は目の前の男から目を離せなかった。


「……父さん?」


思わず口からこぼれた。


男は一瞬だけ表情を揺らしたが、すぐに静かな顔へ戻る。


「違う。」


低い声だった。


「俺は拓海じゃない。」


女性が一歩前へ出る。


「蓮司……。」


男は小さく頷いた。


「久しぶりだな、真琴さん。」


優斗は二人を見比べる。


「知り合いなのか?」


真琴は息を整えながら答えた。


「拓海さんの弟よ。」


「……弟?」


優斗の頭が真っ白になった。


父に弟がいた。


つまり――。


「叔父さん?」


男は少しだけ苦笑した。


「その呼び方は久しぶりだ。」


しかし、その表情はすぐに消える。


「だが、今はそう呼ばれる資格があるかは分からない。」


教育係が前へ出る。


「敵か味方か、はっきりしろ。」


蓮司の後ろにいる四人が身構える。


地下空間に緊張が走った。


「武器を下ろせ。」


蓮司が短く命じる。


四人は素直に従った。


優斗は驚く。


命令一つで動く。


かなり統率された組織だ。


「俺たちは優斗を傷つけるために来たんじゃない。」


「だったら何のためだ?」


教育係の問いに、蓮司は優斗を真っ直ぐ見た。


「迎えに来た。」


その言葉に、真琴が首を横に振る。


「約束が違う。」


「約束?」


「拓海さんとの約束よ。」


蓮司は目を閉じた。


「分かっている。」


「なら!」


「だが時間がない。」


その一言で空気が変わる。


E-01が周囲を走査する。


「地下構造に異常。」


「何?」


「第三層で崩落が始まっています。」


地面が小さく揺れた。


ゴゴ……。


蓮司が舌打ちする。


「やっぱり来たか。」


優斗は聞き返す。


「何が来た?」


蓮司は答えず、石碑へ向かった。


石碑に刻まれた“道標”の紋章へ手を置く。


「まだ生きてる。」


「生きてる?」


「この施設だ。」


優斗は周囲を見渡した。


古い地下施設。


ずっと放置されていたと思っていた。


しかし。


照明は点いている。


扉は動く。


石碑は反応する。


まるで。


誰かが今でも守っているようだった。


「優斗。」


蓮司が振り返る。


「お前は、自分が国道で偶然眠っていたと思ってるか?」


優斗は答えに詰まる。


昔なら「偶然」と答えただろう。


でも今は違う。


母の手紙。


父の手紙。


二粒の黒糖飴。


全部が繋がっていた。


「……違うのか。」


蓮司は頷く。


「あの日、お前は戻ってきた。」


「戻ってきた?」


「そうだ。」


優斗の胸がざわつく。


「どこから?」


蓮司は口を開きかける。


その瞬間。


白い少女が強く首を横に振った。


「?」


少女は蓮司を見ている。


そして、優斗を見ている。


まるで。


「まだ聞くな」と伝えているようだった。


蓮司も少女に気づいた。


驚いた顔になる。


「見えているのか……。」


「知ってるのか?」


「もちろん知っている。」


蓮司の声が少し震えた。


「その子は。」


少し間を置いて。


「道標の最後の案内人だ。」


優斗は少女を見る。


白い服。


白い花びら。


ずっと国道で導いてくれた存在。


「名前は?」


蓮司は静かに答えた。


「灯。」


少女が微笑む。


初めてだった。


誰かに名前を呼ばれて、あんなに嬉しそうに笑ったのは。


「灯……。」


優斗がその名を口にする。


少女――灯は、小さく頷いた。


その時。


地面が大きく揺れた。


ドゴォン!


天井から砂が落ちる。


E-01が警告を発する。


「第三層の崩落拡大!」


蓮司が叫ぶ。


「もう時間切れだ!」


真琴が優斗へ走る。


「地下最深部へ行きなさい!」


「え?」


「そこに拓海さんが残した最後の答えがある!」


優斗は父の手紙を握り締める。


「叔父さん。」


蓮司を見る。


「一つだけ聞かせてくれ。」


「何だ。」


「父さんは。」


喉が詰まる。


「生きてるのか?」


地下空間が静まり返る。


蓮司は目を伏せた。


そして。


ゆっくりと首を横へ振った。


「俺も、そう思っていた。」


優斗の心臓が止まりそうになる。


「……思っていた?」


蓮司は優斗を見つめる。


「でも。」


その一言に希望が宿る。


「三日前。」


懐から一枚の写真を取り出した。


そこには。


国道沿いに立つ一人の男。


後ろ姿しか見えない。


しかし。


胸元には“道標”の紋章。


そして。


首から提げた黒糖飴の巾着袋。


蓮司の声が震えた。


「この男は。」


優斗は写真を見つめる。


「……父さん?」


蓮司は頷いた。


「拓海にしか見えない。」


優斗は息を呑む。


死んだと思っていた父。


母が守り続けた約束。


そして。


三日前に撮られた一枚の写真。


地下の最深部。


そこに待つ答えは。


父の死ではなく。


父の“行方”へ変わろうとしていた。

第139話、ありがとうございました。


今回は、拓海と瓜二つだった男の正体が、弟・蓮司であることが明らかになりました。


さらに、白い少女の名前が「灯」であることも判明し、彼女が“道標の最後の案内人”という新たな役割を持つことが示されました。


そして最後に現れた、三日前に撮影された“拓海らしき人物”の写真。


優斗が追い求める答えは、過去だけではなく「今も続いている出来事」へと繋がっていきます。

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