↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/46

第138話 息子へ

父が遺した封筒。


そこに書かれていたのは、たった三文字。


「息子へ」


一度も会った記憶のない父。


それでも、この手紙は確かに優斗へ向けて残されていた。


しかし、その想いが届く直前、地下へ何者かが迫り始める。

カツ。


カツ。


カツ。


規則正しい足音が地下通路に響く。


優斗は封筒を胸へ抱き寄せた。


「教育係。」


「読め。」


短い返事だった。


「ここは俺たちが時間を稼ぐ。」


E-01が青い光を強める。


「侵入者五名。一定速度で接近。」


女性が奥の柱を指差した。


「あそこなら少しだけ隠れられる。」


優斗は頷き、石碑の横へ移動した。


震える指で封を切る。


中から現れたのは、一枚の便箋だった。


紙は少し黄ばんでいる。


しかし文字は力強い。


『優斗へ』


その一行だけで、胸が熱くなった。


父の字だった。


見たことがないはずなのに、不思議とそう思えた。


『この手紙を読んでいるということは、お前は約束を守ってここまで来てくれたんだな。』


優斗は息を止める。


『まず謝らせてほしい。』


『父親なのに、お前のそばで生きられなかった。』


文字が少し乱れていた。


急いで書いたのだろうか。


それとも。


迷っていたのだろうか。


『でも、それだけは分かってほしい。』


『俺は、お前を捨てたんじゃない。』


優斗の視界が滲む。


幼い頃から、一度だけ考えたことがある。


父は自分たちを捨てたのではないか。


母は何も言わなかった。


だから、自分でそう思い込んでいた。


違った。


父は、違った。


『お前のお母さんは、本当に強い人だ。』


『俺よりずっと強かった。』


『だから俺は、最後に一つだけ約束した。』


ページをめくる。


その瞬間。


ゴンッ!


地下通路に衝撃音が響いた。


教育係が叫ぶ。


「来たぞ!」


鉄扉を叩く音だった。


侵入者が、もう目の前まで来ている。


E-01が報告する。


「扉への衝撃を確認。」


「突破まで推定一分。」


優斗は続きを読む。


『約束の内容は、お前にはまだ話せない。』


「え?」


思わず声が漏れる。


ここまで来ても、まだ秘密なのか。


しかし、その下の一文に目が止まった。


『理由は簡単だ。』


『お前自身が思い出すことに意味があるからだ。』


優斗は歯を食いしばる。


また記憶。


また、自分の中に答えがあるという。


その時だった。


白い少女が優斗の袖を引いた。


「?」


少女は壁を指差す。


石碑の後ろ。


そこに、小さな窪みがあった。


優斗が近づく。


「これ……。」


窪みは手紙と同じくらいの大きさだった。


女性が息を呑む。


「まさか。」


優斗は便箋を近づける。


スッ。


紙が吸い込まれるように収まった。


カチッ。


小さな音。


そして。


石碑の文字が淡く光り始めた。


『帰る場所を忘れるな』


その文字の下に、新しい文字が浮かぶ。


『記憶は、消えていない』


優斗の頭に痛みが走った。


ズキッ。


「……っ!」


膝をつく。


視界が揺れる。


一瞬だけ。


景色が変わった。


青空。


夏の日。


国道沿い。


幼い自分が笑っている。


その隣に立つ父。


「優斗。」


優しい声。


振り返る。


「転んでもいい。」


父が笑う。


「でも、帰る道だけは忘れるな。」


ブツッ。


映像が消えた。


優斗は肩で息をする。


「今の……。」


教育係が駆け寄る。


「大丈夫か!」


「思い出した。」


「何を?」


「父さんの声。」


その瞬間。


ドォン!


鉄扉が大きく歪んだ。


E-01が警告する。


「突破まで十秒。」


女性が焦る。


「間に合わない!」


優斗は立ち上がる。


父の手紙を握る。


すると、便箋の裏に今までなかった文字が浮かんできた。


『最後の道は、お前が開け。』


その文字が消えると同時に。


地下空間の中央。


白い一本道が眩しく輝いた。


白い少女が、その道の先へ走る。


振り返る。


そして笑った。


「来て。」


初めて。


優斗には、そう聞こえた気がした。


ドォォン!


ついに鉄扉が吹き飛ぶ。


土煙の向こうから、黒い装備をまとった五人が姿を現した。


その先頭に立つ男を見た瞬間。


女性の顔色が変わる。


「……嘘。」


男は静かにヘルメットを外した。


優斗は息を呑む。


その顔は。


アルバムで見た父――拓海に、あまりにも似ていた。

第138話、ありがとうございました。


今回は、父・拓海が優斗へ残した最初の手紙が届きました。


「捨てたんじゃない。」


その一言は、優斗が抱え続けてきた思い込みを崩す大きな転機になりました。


さらに石碑が反応し、優斗の記憶が少しだけ戻り始めます。


しかし、その直後に地下へ侵入した男は、拓海と瓜二つの顔をしていました。


次回、第139話では、この男の正体と、“道標”という紋章に隠された意味が明かされていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。