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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第128話 古い写真館の記憶

前書き


雨上がりの国道を進む主人公は、古い商店街へとたどり着く。


そこで見つけた一軒の写真館。


店先に飾られていた一枚の古い写真には、若き日の母と大富豪、そして見覚えのある白い少女が写っていた。


母が残した「優しさ」の記憶は、さらに過去へと遡っていく。

本文


雨が上がった翌朝。


主人公は、いつもより少し早く目を覚ました。


昨夜は国道沿いの小さな宿に泊まった。


窓の外を見ると、道路にはまだ雨の跡が残っている。


「今日は晴れそうだな。」


主人公は荷物をまとめ、ロードバイクを外へ出した。


雨上がりの国道を走りながら、主人公は昨日出会った少年のことを思い出していた。


今頃、学校へ向かっているだろうか。


作文は無事に提出できただろうか。


そんなことを考えながら、主人公はペダルを踏み始めた。


しばらく走っていると、古い商店街が見えてきた。


大きな看板には、


『中央通り商店街』


と書かれている。


昔は賑わっていたのだろう。


しかし今では、シャッターの閉まった店も多い。


主人公は自転車をゆっくり走らせながら、商店街を眺めていた。


その時だった。


一軒だけ、古い木製の看板が目に入った。


『写真館 みなと』


店先には、色褪せた写真が何枚も飾られている。


その中の一枚を見た瞬間――


主人公の足が止まった。


「……え?」


写真には、若い頃の母が写っていた。


母の隣には、まだ若い大富豪。


そして、その二人の少し後ろに――


白いワンピースの少女。


主人公は息を呑んだ。


「また……。」


少女は、今まで主人公の前に現れていた姿とほとんど変わらない。


写真の中で、少女はこちらを見ていた。


まるで、写真の中から主人公を見つめているようだった。


主人公は店の扉を開けた。


カラン、とベルが鳴る。


「いらっしゃい。」


奥から男性の声がした。


店内には古いカメラが並んでいる。


壁には昔の写真がたくさん飾られていた。


「すみません。」


主人公は先ほどの写真を指差した。


「この写真について、聞きたいんですけど。」


店主らしき老人が顔を上げる。


写真を見る。


そして、主人公を見る。


「……君。」


「はい?」


老人は目を細めた。


「お母さんにそっくりだな。」


主人公の胸が高鳴った。


「母を知っているんですか?」


老人はしばらく黙っていた。


やがて、小さく笑った。


「知っているよ。」


「この写真も、私が撮った。」


主人公は写真を見つめる。


「いつ頃ですか?」


「ずいぶん昔だ。」


老人は椅子から立ち上がり、古いアルバムを取り出した。


「お母さんは、ここへ何度か来ていた。」


アルバムを開く。


そこには若い頃の母の写真が何枚もあった。


笑っている母。


子どもたちと話している母。


黒糖飴を配っている母。


主人公は一枚一枚をゆっくり見た。


「母さん……こんなに写真を撮ってたんだ。」


「違うよ。」


老人が笑う。


「私が勝手に撮っていたんだ。」


「勝手に?」


「幸せそうな人を見ると、写真を撮りたくなるんだよ。」


主人公も少し笑った。


「母らしいな。」


老人は一枚の写真を取り出した。


そこには、母と大富豪が並んでいる。


二人の間には、小さな机。


その上に黒糖飴が置かれていた。


「この二人は、どういう関係だったんですか?」


老人は写真を見ながら答えた。


「友人……と言えばいいのかな。」


「友人?」


「あの頃の彼は、まだ今ほど大きな会社を持っていなかった。」


主人公は驚いた。


「じゃあ、母は昔から大富豪さんを知っていた?」


「そうだ。」


老人は静かに頷いた。


「二人は、ある場所で出会った。」


「どこですか?」


老人は答える前に、別の写真を取り出した。


そこには、古い児童施設が写っていた。


『ひだまり』


主人公の目が大きくなる。


「……ひだまり。」


老人は頷いた。


「そう。」


「あなたのお母さんと、彼が初めて出会った場所だ。」


主人公は写真を見つめた。


これまで別々だと思っていたものが、また一つ繋がった。


母。


大富豪。


黒糖飴。


ひだまり。


そして――


白い少女。


主人公は写真の端を見る。


少女は写っている。


けれど、誰も彼女を見ていない。


母も。


大富豪も。


周囲の子どもたちも。


まるで少女だけが、最初から別の場所にいるようだった。


「この子は……?」


老人は写真を見た。


「その子?」


「はい。」


老人は眉を寄せる。


「……変だな。」


「何がですか?」


「私が撮った時には、そんな子はいなかったはずなんだ。」


主人公の背筋に、冷たいものが走った。


「じゃあ……写真に写っているのは?」


老人は答えられなかった。


しばらく沈黙が続く。


やがて老人は、古い引き出しを開けた。


中から小さな箱を取り出す。


「これも、お母さんから預かっていた。」


「また……母から?」


主人公は苦笑する。


「母さん、いろんなところに残しすぎだよ。」


箱の中には、一枚の古いフィルムが入っていた。


裏側に日付が書かれている。


その日付は――


主人公がまだ生まれていない頃だった。


老人は静かに言った。


「この写真を撮った日、お母さんは私にこう言ったんだ。」


「何て?」


「『この子がいつかここへ来たら、全部見せてあげてください』って。」


主人公はフィルムを見つめた。


母は知っていた。


いつか自分がここへ来ることを。


いや。


もしかすると母は――


自分が旅をする未来を願っていたのかもしれない。


主人公はフィルムを大切に受け取った。


「ありがとうございます。」


老人は笑った。


「まだあるよ。」


「え?」


「写真は一枚じゃない。」


老人は店の奥を指差した。


そこには、鍵の掛かった古い棚があった。


「そこに、お母さんが残した写真が全部入っている。」


主人公は棚を見る。


「……見てもいいんですか?」


老人は頷いた。


「そのために、ずっと残していたんだから。」


主人公は棚の前へ歩いた。


鍵が開く。


扉がゆっくりと開いた。


中には、何十冊ものアルバムが並んでいた。


主人公は一番上のアルバムを手に取る。


表紙には母の字で、


『ひだまり』


と書かれていた。


主人公は深く息を吸う。


そして、アルバムを開いた。


最初のページ。


そこに書かれていた一文を見て――


主人公は言葉を失った。


『私が黒糖飴を配り始めた理由。』


その下には、まだ続きがある。


主人公はゆっくりと次のページへ指を伸ばした。


窓の外では、風が吹いていた。


そして商店街の遠く。


誰もいないはずの道の先に――


白いワンピースの少女が立っていた。


少女は主人公を見つめている。


その手には、一枚の古い写真。


主人公が目を凝らした瞬間。


少女は静かに笑った。


そして、また風の中へ消えていった。

後書き


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、古い写真館で母と大富豪が昔から繋がっていたことが、さらに明らかになりました。


そして、二人が初めて出会った場所は「ひだまり」。


これまで登場してきた場所が、少しずつ一本の線になってきています。


さらに、写真に写っていた白い少女。


写真館の店主にも存在が認識できないという、少し不思議な展開になりました。


次回は、母が黒糖飴を配り始めた「本当の理由」に触れていきます。

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