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『其の九』 許し

静寂を破ったのはシラヌイだった。

「……僕はこれからどうすればいいのかな」

「集落の人たちを戻せないのか……?」


するとシラヌイは言った。

「わからない……けどできると思う」

「本当か?」

「う……うん」


俺はシラヌイの手を握り、話した。

「なら今すぐ集落に戻ってやろう、君ならできるさ」

「でも……戻しても人間達は僕を許さないと思う……」


俯いている彼女の頭を撫で、優しく言った。

「大丈夫だ、話せば彼等も分かってくれる」

「それに俺は君の味方だ」


その言葉にシラヌイは顔をあげ、涙を流しながら言った。

「本当にありがとう……ほんとうに……」


自分の服でシラヌイの涙を拭いた。

「可愛い顔が台無しだぞ?ほら、早くいこう」

「うん、分かった」


外を見ると、雨は完全に止んでいた。

森と土の匂い、そして何処か懐かしい匂いもした。


─────────────

──────────

──────


「何処なんじゃレイ!」

「レイ!隠れてないで出てこい!」


妾は焦っていた。

ようやく彼を見つけ出したのに。

「なあイノ、もう見つからないんじゃないのか?」

「たわけ!早く探すんじゃ!」


妾の怒号に、ヒモリは少し驚いていた。

「そこまで執着して探す理由はないだろ?」

「奴は妾の大切な人間なんじゃ!」

「わかったよ……おーい!レイ!」


彼と出会い、全てが変わった。

一人ぼっちだった妾の所に一人の少年が現れた事。


今でも忘れない、あの時の事。

「──どうか救われますように」


必死に妾とヒモリで探すと、見たことがある後ろ姿があった。

「あ……レイ!レイだろう!?」


妾は走った。

カランコロンと音を立てる下駄。


走るのに慣れて無く、足が悲鳴を上げる。

それでも妾は急いでレイのところへ向かった。


─────────────

──────────

──────


シラヌイと集落に戻ると、後ろからイノの声が聞こえた。

「レイ!何処に行っておったのじゃ!」


イノは心配そうに俺の体中を確認した。

「怪我は大丈夫か?!」

「大丈夫さ、何も怪我してない」


するとイノは隣にいたシラヌイに気付いた。

「そなたが見つけてくれたのか?」

「えっと……僕は……」


答えに悩んでいるシラヌイを俺は助けるように答えた。

「俺の記憶を少し思い出させてくれた人でもあるし、集落の人を消した張本人だ」

「なんじゃって?!」


イノは驚きを隠せなかった。

……いや当たり前か。


すると遅れて後ろからヒモリがやってきた。

「そこにいたのか!全く騒がせやがって……ってシラヌイか?」

「う……うん、シラヌイだよ」

「なんだ知ってるのか?」

「ああ、こいつは近くの山でこの集落を守っている狼だ」


するとイノがヒモリに話した。

「こやつがこの集落の人々を消した犯人じゃ……」

「えっ?!なんでそんな事をしたんだ!」


俺はシラヌイの前にたち、今までの事を話した。

するとヒモリとイノはお互いの顔を見つめ、シラヌイに話した。

「シラヌイよ、そなたの気持ちはよく分かる」

「じゃが……やり方が少々手荒すぎる」


そしてイノは懐から煙管(きせる)を取り出し、吸い始めた。

「一つ話をしようじゃないか」

「話……?」

「そうじゃ……ここの集落の話じゃ」


俺とシラヌイ、そしてヒモリは話を静かに聞いた。

「ここの人間達はある神様の為に、祭りを準備していた」

「過去に忘れ去られた神に対して、そして彼等が起こした過ちの許しを請う為に」

「……そしてその主役はとある一人の神様だった」


そよ風が吹き、陽の光も強くなった。

「それがお主じゃ……シラヌイよ」


その言葉にシラヌイは驚いていた。

「あり得ないよ!彼等は僕たちのことを完全に忘れてるはずさ!」


するとイノはとある場所に指をさした。

「あそこに子供が書いた絵があるだろう?」


そこには道路にチョークで描かれていた絵があった。

そして一匹の狼の絵が書かれていた。

「あれはお主の事を書かれてる」


シラヌイはゆっくりとその絵に近づき、見つめた。

「彼等はお主を忘れてなんかいなかった」


ポタポタと音がする。

しかし先程の雨とは違う。

「僕は……なんて事を……」


するとヒモリはシラヌイの肩にポンと手を置いた。

「ならやらなければならない事があるだろ?」


シラヌイは静かに頷いた。

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