『其の十』 取り戻し
シラヌイは涙を拭き、立ち上がった。
そこにあるシラヌイの背は何処か神々しく見えた。
そして俺はあることが気になり、イノに質問した。
「どうやって人を戻すんだ?」
「簡単さ、心の中で強く願えばよいのだ」
「願う?何をだ?」
すると隣にいたヒモリが説明した。
「己が強く思っている事だ」
「……つまりは守りたい物ってことか?」
俺の言葉にヒモリは頷いた。
そして俺はシラヌイの方を見ると、神秘的な光景が広がっていた。
銀色の尻尾と髪、そして彼女の所だけ太陽の光が注がれていた。
風が少し強くなり、遠くの木々の匂いを運んでいた。
そしてシラヌイはゆっくりと歌い始めた。
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僕は心の中で祈った。
どうか彼等が戻りますように。
すると少し強い風が僕の鼻をかすめた。
木々の匂い、土の匂い。
──そしてレイの匂い。
なんであの人の匂いはあんなに落ち着くんだろう。
他の人間にはない、独特の匂い。
でも嫌いじゃない。
上を見上げると、太陽の光が僕を差していた。
「ごめんね皆、いま助けてあげるから」
そして集落の人達とレイの事を思い、歌った。
「暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき」
──僕は暗い道に入ってしまった。
「遥かに照らせ 山の端の月」
──だからどうか……どうか、進むべき道を照らしておくれ。
「そして……どうかレイが僕の思いに気付きますように」
目を閉じ、強く心のなかで祈った。
自分の過ちを認め、彼等の苦しみを知り、彼等の事情も知る。
すると辺りに様々な匂いが僕の鼻を刺激した。
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シラヌイが歌い終わると、シラヌイを照らしていた太陽が徐々に広がっていった。
風は強く吹き、鳥たちが鳴いている。
バサバサと先ほどまで居なかったはずの雀が沢山飛んでいた。
俺の意識が雀達に向けられていたが、ふとシラヌイの方を向いた。
するとそこには雀たちと同じで、居なかったはずの人々が立っていた。
そして立っていたシラヌイはそのまま倒れてしまった。
「シラヌイ!」
俺は急いでシラヌイの方へ向かい、抱き上げると彼女は笑っていた。
「ね……ねえ、僕できたよ?戻せたよ?」
シラヌイは薄目でこちらを見ていた。
太陽に照らされていた彼女はとても美しかった。
「ねぇ……レイ?」
「……どうしたんだ?」
「目をつぶってくれるかい?」
俺は少し唖然としたが、言われた通り目を閉じた。
するとシラヌイのふわっとした香りを感じた。
その瞬間、唇に何か柔らかい物が当たった。
「えへへ、レイは僕のものさ」
いきなりのことで固まってしまった。
すると周りにいた人たちは状況を把握しきれていなかったが、シラヌイを見ると慌てていた。
「お、おい!おいぬ様だべ!」
「な……何が起こったの?!」
しかし集落の人たちは慌てて、シラヌイの方へ集まった。
「早く横になれるところを準備しろ!」
「そこでええんじゃねーか?!」
そして一人の男が俺に話しかけた。
「そこの少年!おいぬ様をあっちまで運んでくれ!」
「あ……ああ!分かった!」
運んでいる最中のシラヌイは腕の中で嬉しそうしていた。
その光景を見ていたイノは俺の方へと駆けつけヒモリも付いてきた。
そしてイノはシラヌイに話しかけた。
「シラヌイ……今回は許してやるが、次からレイとイチャイチャしたら許さないからの?」
イノの言葉にシラヌイは自慢げに話した。
「レイはもう僕のものだよ?」
「貴様ぁ!もう許さぬぞ!」
「まあまあ落ち着けって中身はおばさんでしょ?だから落ち着けって」
ヒモリがそう言うと、イノは怒り狂った。
「まだピチピチじゃ!それにおばさんは関係ないわい!」
すると一人の女性がイノに近づき話した。
「あらあら!お狐様もご一緒に?それにヒモリ様まで」
「ん……?お主は団子屋の……」
「どうもー!」
そして女性はイノの耳元に近づき、何かを話していた。
話終わると、イノはニヤニヤとしていた。
「どういう表情なんだよそれ……」
「女の秘密じゃ」
「そうよ?男はしらなくてもいい事なんだから!」
何が何だが分からなかったが、俺はシラヌイを言われた場所に運んだ。




