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ポンコツ神様、戦争を終わらせるために伝説の殺し屋(OL)を召喚したら、状況が最悪になりました  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第12話:包囲網と脱出劇

ご覧いただきありがとうございます!


第12話は、地下プラントを急襲され追い詰められた薬物組織の残党が仕掛ける、グランベル市街を巻き込んだ「広域爆破・陽動作戦」との対決です。


街の各所で同時多発的に発生する化学テロに対し、由美さんと神様が抜群のチームワークと驚異的な処理スピードで奔走する緊迫のパニック回避回をお楽しみください!

地下プラントの主である『堕落のマルス』が逮捕され、違法チートドラッグの製造拠点は完全に壊滅した――はずだった。


しかし、事件はまだ終わっていなかった。

グランベル市警の特別捜査本部へと向かう地下鉄の移動車中、桃西由美のタブレット端末に不穏なアラートが鳴り響く。


「……これは」


『桃西さん、画面の波形がすごい勢いで跳ね上がってるよ……! これは何のデータなの!?』


上空で光を揺らす神様が、緊迫した声で覗き込む。


「プラントの自動防衛プログラム、および遠隔起爆回路の残存データです。マルスの逮捕に伴い、地下水路や市内の主要インフラ各所に仕掛けられた『神威爆発物(チート爆弾)』のタイマーが強制起動しました」


「なっ……!? 市内各所だと!?」


同乗していたエリス監査官が、血の気を引かせて叫んだ。


「そうだ。残党どもが、組織の壊滅を察知して街ごと証拠隠滅を謀るつもりらしいですね。……極めて短絡的で、迷惑な悪あがきです」


「も、門西殿! 起爆までの時間はどれくらいあるのだ!? 市民の避難警報を出さなければ!」


「残された時間は、あと十五分です」


由美は冷静に端末のキーを叩きながら、車窓の外の商業地区を見据えた。


「市警全体の避難誘導では間に合いません。それに、一箇所でも起爆を許せば、地下のガス管を伝ってグランベル市全体が連鎖的な大爆発を引き起こします」


『どうするの、桃西さん!? 私たちだけで街中の爆弾を止めに行かなきゃいけないの……!?』


「はい。我が事務所の出張業務範囲内です。……迅速に『すべての爆弾の無力化』を遂行します」


移動車を飛び出し、由美は神様と共にグランベル市の中心街へと降り立った。


「最初の起爆ポイントは、中央駅の地下配電盤室。残り時間、八分です」


由美の足取りに迷いはない。

神様の特殊な「神威探知波」をレーダー代わりに利用し、ビルの隙間や地下通路を最短距離で駆け抜けていく。

人間離れした俊敏性と、徹底的な無駄を省いた効率的なルート取り。


「ここですね」


ガチャリ、と駅の地下メンテナンス用の重い扉を特殊工具でこじ開け、由美は配電盤室へ滑り込んだ。

その中央では、不気味に赤く明滅するチート爆弾が、秒読みのデジタル数字を刻んでいた。


『ああっ、あと五分しかないよ! どうやって解除するの!? 複雑な魔法陣とかが描いてある!』


「魔法陣に見立てた、単なるレガシー回路の多重構造です」


由美は落ち着き払った様子で、ジャケットのポケットから精密ドライバーと、特製の回線ショート用ペンチを取り出した。


「神威エネルギーを動力源にしているため、通常の物理的切断では誘爆します。ですが――」


由美の目が鋭く光る。


「エネルギーの還流ポート(逆位相回路)に高電圧のパルスを流し込み、基盤そのものを焼き切れば、安全にシステムをシャットダウンできます」


迷いのない手つきで、カチリ、と数本の配線を繋ぎ替え、スイッチを入れる。


――ピピッ。


赤く光っていた起爆装置のランプが、スッと緑色の「停止」サインへと変わった。

残り時間、四分二十秒。


「第一ポイント、解除完了です」


「す、すごい……! 一瞬で止めちゃった!」


「感傷に浸っている時間はありません。次のポイントへ移動します」


二箇所目、三箇所目と、由美は神様のナビゲートを頼りに街中の爆弾を次々と無力化していく。

残された最後のポイントは、市街地の中心にそびえ立つグランベル市のランドマークタワー――その最上階の給水塔スペースだった。


すでに起爆までのタイムリミットは、一分を切っていた。


「はぁっ、はぁっ……! 桃西さん、あそこだ!」


非常階段を駆け上がり、最上階のハッチを蹴破って飛び出す二人。

その中央に、街全体を吹き飛ばすだけの最大出力を誇る親爆弾が、けたたましい電子音を鳴らして鎮座していた。


『残り時間、四〇秒……三九秒……』


「間に合います」


由美は一歩も怯まず、親爆弾のカバーを素早く外した。

だが、そこにはこれまでの簡易的な回路とは異なり、無数のトラップ回路と、万が一の接触で爆発する対人センサーが張り巡らされていた。


「くっ……! 物理的な直結回路だけではなく、センサーによる二重の防護が施されていますね。通常の手法では時間が足りません」


『どうするの、桃西さん!? もう三十秒を切ったよ……!』


神様が青ざめ、光を激しく明滅させる。

由美の額に、わずかな汗の一筋が伝った。


しかし、彼女の思考速度はむしろ加速していた。

回路の基盤、神威粒子の流路、そして爆弾の構造的欠陥。すべてを瞬時にスキャンし、脳内で最適解を導き出す。


「……プログラミングの基本原則は『例外処理の不備』です」


由美は手にした特製ペンチで、迷うことなく中央の最も太い赤い配線――ではなく、その脇にある極小のメンテナンス用リセット端子を直接ショートさせた。


「強制初期化(リセット・コマンド)の挿入」


――ビビビビッ!


親爆弾から激しい火花が散り、その直後、けたたましく鳴り響いていた電子音がピタリと止まった。


『残り時間、〇秒』の表示が消え、完全に機能停止を示す無機質な黒い画面へと変わる。


静寂が、最上階のスペースを包み込んだ。


「……処理、完了です」


由美はゆっくりと息を吐き出し、乱れたスーツの襟元を整えた。


『やったぁぁぁぁ――っ!! 間に合ったぁぁぁぁ……!』


神様は感極まって、由美の周囲を嬉しそうにグルグルと飛び回った。

窓の外を見下ろすと、グランベル市の平和な街並みは、何事もなかったかのように穏やかな日差しに包まれていた。


地下鉄の車中で警報に怯えていた市民たちは、自分たちが文字通り「一歩の差で地球滅亡(大爆破)を免れた」ことすら気づいていない。

だが、それでよかった。

治安維持機関の仕事とは、平穏を維持することであって、無駄に恐怖を煽ることではないのだから。


しばらくして、全域の安全確認を終えたエリス監査官が、青い顔をした警察部隊を引き連れて最上階へと駆けつけてきた。


「も、桃西殿……っ! 市内の起爆装置がすべて『原因不明のシステム停止』を起こしたと報告が入ったが……まさか、君が……!?」


「ええ。組織の残党が仕掛けたチート爆弾の回路を、すべて適正に初期化・無力化いたしました」


由美は手帳にペンを走らせ、淡々と作業をまとめた。


「これにて、グランベル市における一連の違法薬物事件および関連テロの脅威は完全に排除されました。……出張業務としては、これ以上ない完璧な成果ですね」


「信じられない……! 君たちはグランベル市の救世主だ……!」


エリスは感極まった様子で、両手で由美の手を固く握りしめた。

由美は少し面映ゆそうに、しかしきりっとしたビジネスパーソンの笑みを浮かべた。


「救世主などと大層なものではありません。私はただ、桃園治安維持事務所の社員として、任された業務を正確に完遂したに過ぎません」


風が吹き抜けるビルの屋上で、二人は並んで爽やかな青空を見上げた。

あらゆる悪意と脅威を理詰めで打ち砕き、守るべき日常を取り戻した二人の表情は、どこまでも晴れやかだった。

第12話をお読みいただきありがとうございました!


組織の残党が仕掛けた同時多発的な爆破・汚染テロも、由美さんの的確な環境分析と回路遮断にかかればただの時間稼ぎでしかありませんでした。見事な連携で街を救った二人でしたね。


次回、第13話「黒幕の正体と最後の賭け」では、組織の真の首謀者が残した最後の切り札――街そのものを消し去りかねない最大規模の罠へと挑みます! ぜひご期待ください!

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