4
「では、こちらです」
「はい。ありがとうございます」
前を歩くお婆さんについて縁側を歩いた。
「海外での生活はどうでしたか?」
「とても有意義に過ごさせてもらえました。友人もたくさんできて、毎日がとても楽しかったです」
「そうですか。それはなによりでした。……こちらのお部屋になります」
母屋から渡り廊下で繋げられた別棟の一室の前でお婆さんは立ち止まった。
太陽の光が部屋をうまく照らしていて、見ていてとても気持ちがいい。窓部分の障子を開けると、先程見えていた庭がより近くで眺められた。
「簡単に説明すると、庭を挟んであちらに見える棟が私のような住み込みでの使用人が暮らす棟で、こちらはお客様や先生のような外からお招きしての雇用関係にある方の棟になります」
「す、すごいですね。外から見た時も驚きましたけど……ここまでとは」
「ふふふっ。今は先生しかおられませんし、女性ですから物も多いだろうとこの部屋と隣の部屋を使うようにと旦那様から事前に言付かっております。お荷物もすでに隣にお運びしてありますので」
「ありがとうございます。えっと……」
「あら、ご挨拶もできておらず、失礼いたしました。垣内すみれと申します。どうぞよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします。佐倉圭です。精一杯頑張りますので、体調悪くなった時とか、遠慮せずにおっしゃってくださいね?」
「まぁ、なんて心強いこと。ありがとうございます」
ニコニコと笑みをこぼす垣内さん。
ん? 垣内……あっ。
「あの、つかぬ事をお伺いしますが、東京の別宅にいらっしゃった垣内さんとは」
「フフッ。五つ違いの兄でございます」
「お兄さん! やっぱり! どこかでお会いしたことあるような、って思ったんです」
「兄と私は似ているとよく言われるんですよ」
口元を隠し、上品に笑う垣内さん。
うーん。心の中ではすみれさんと勝手に呼ばせてもらおう。垣内さん二人いるし。
すみれさんは小柄で、名前のごとく持っている雰囲気がとっても可愛いらしい。ほんの少しの間話していただけだけど、もうすっかり大好きになってしまった。私がおばあちゃんっ子だったっていうのもあるかもしれない。
「後で先生と同じくらいの歳の女の子を連れてきますね? きっと話が合うんじゃないかしら」
「なにからなにまですみません」
「いえ。咲夜坊ちゃんのご友人をお世話することができて、私も嬉しいんですよ」
「ご、友人……」
そういえば、すみれさんじゃない垣内さんの前で友人発言してたっけ、咲夜さんてば。
もー駄々洩れじゃないですか。兄妹仲良すぎです。
「咲夜坊ちゃんはあの見目で、将来この家を継ぐことが決まっておいででしょう? ですから、いろいろな方と交流されております。中にはあまりよろしくない方とも。先生、こんなことをお願いするのは間違っているかもしれませんが、咲夜坊ちゃんのこと、どうぞよろしくお願いいたしますね」
「えっと……私なんかで良ければ、頑張ります」
「先生が良いのですよ」
垣内さんもだったけど、すみれさんも咲夜さんのことが本当に大切なんだって分かる。こんなに大事にされて、羨ましいなぁ。
「それでは、私は一度母屋に戻って仕事を片付けてからその子を連れてきますね。何か他にお聞きになっておきたいことはありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では、また後程」
すみれさんはニコリと笑って一度お辞儀をした後、母屋の方へ戻って行った。




