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王宮での生活と婚約

 侵入者事件の翌日から私の居住は王宮になった。

 王宮の方がお兄様にとっても警備面で色々融通がきくためだ。

 そのため、私の生活をサポートしてくれるのは、大聖堂からは派遣された侍女・マーガレット達や王宮の侍女達が中心に。


 神殿だろうと王宮だろうと生活するにはあまり変らないかな? と思っていたけど、あまりにも想像と違うため、私はちょっと困惑していた――


「まぁ! 聖女様。とても可愛らしいですわ!」

「髪下ろしているのも素敵ですけど、明日は結ってみましょう!」

 私は王宮の侍女達の手によっていつも身につけている白いワンピースではなく、レモンイエローのワンピースを着ている。

 ワンピースは襟部分が丸襟になっていて腰部分に白いリボンが結ばれていた。

 裾部分には細かな刺繍が施され、神殿では絶対に着られないワンピースの種類だと思う。


 侍女達曰く「ずっと聖女様を着飾るのが夢でした」らしく、念願叶った彼女達のテンションが高い!

 圧倒され、私は借りてきた猫状態のままだ。


 マーガレットに助けを求めたいけど、彼女も私と同じように侍女達に囲まれてしまっている。

 王宮の侍女達にとってマーガレットの存在は見慣れないらしく、いろいろ質問責め中。

 普段はキリッとしているマーガレットだけど今は珍しく戸惑っているようで視線を忙しなく彷徨わせていた。


 王宮って賑やかだなぁ……と諦めに似た境地に立っていると、部屋をノックする音が届く。


「お兄様かしら?」

 首を傾げながら返事をすれば、銀色の騎士服に身を包んだ青年が入ってきた。

 緩くウェーブかかった灰色の髪を一つに結び、満月のような金色の瞳でこっちらを真っ直ぐ見つめている。


 ――ルビナスだ。


 長い前髪を切り、眼鏡をかけてないだけでも大分雰囲気が違う。

 ループ前の私が最後に見た騎士の姿だわ。

 あの青年がルビナスだから不思議ではないけど、私が知っているルビナスと結びつかないからまだ違和感が……


「聖女様。ご挨拶に伺いました」

 侍女達はルビナスのことを知らないらしく呆然と見ていた。

 けれども、すぐに我にかえり顔を輝かせながら黄色い声を上げてしまう。


 あっ……今度はルビナスだね。彼、見目麗しい騎士だし。


 この後の展開が予想できたので、私は心の中で頑張って! と応援する。


「騎士様、お名前はっ!?」

「どちらの騎士団の方ですか!?」

 侍女達が一斉にルビナスを囲みだしたので、解放されたマーガレットはほっと安堵の息を漏らしている。


「申し訳ないのですが職務中ですので……私の代わりに廊下に控えている部下達がお答えいたします」

「えっ、俺らですかっ!?」

 廊下から声だけが聞こえたのでどうやら他にも騎士達がいたみたい。

 侍女達が一斉に廊下に見に行ってしまう。


「いいの?」

 私はちらりと廊下へ繋がっている扉を見ながらルビナスに言う。


「問題ありません」

 いいのかなぁ? 「団長!」と助けを求めるルビナスの部下の声が聞こえてくるんだけど……


「本日より我々が神殿の護衛兵の代わりに聖女様の警備にあたることになったのでご挨拶に伺いました。ベラノ達の捜索を行っている部下もいるので、あとで紹介しますね」

「お父様達は見つかりましたか?」

「まだ見つかっていません。教皇様に知らせ、捜索隊を派遣して貰っています。それから、竜王様へ使者を出しました。空からの捜索も同時にした方が発見しやすいと思いますので」

「確かに」

 空からならすごく探しやすそうだしね。

 さすがにこんなに捜索隊がいるなら、お父様達もすぐに見つかりそう。


「何か判明したらお知らせいたしますね」

「ありがとう」

「いえ。聖女様のためですので。では、そろそろ朝食の時間ですからご案内いたします」

「――案内は不要だ。俺が連れて行く」

 突然、お兄様の声が室内に響いたので声のした扉の方へ顔を向けた。

 すると、お兄様が扉の前に仁王立ちになって立っている。


 いつの間に……

 お兄様が来たら侍女達も賑やかになりそうだけど静かだったなぁ。さすがにお兄様の前では騒ぐに騒げないのかも。


「おはようございます。お兄様」

「おはよう、ルナ」

 お兄様が微笑みながら私の所に来たら、いつの間にか部屋に戻ってきた侍女達が「わ、笑った!?」とざわめいている。


 どうやらお兄様が笑うのは珍しいらしい。

 私としてはいつも見ているんだけど……まぁ、絶対零度の皇帝だからなぁ。


「さぁ、朝食にしよう。ルナが好きそうなものを用意させているんだ」

 私はお兄様に手を繋がれ、朝食のため食堂に向った。




 +

 +

 +



「朝食はどうだった?」

「おいしかったです!」

 朝食を食べ終え、私はお兄様と一緒に食堂で食後のお茶を飲んでいた。

 王宮の食事はとても私の口に合っているようで、食べ過ぎてしまったくらい。

 お腹いっぱいでちょっと眠い……


「昼食も一緒に食べよう」

 お兄様が穏やかな口調で言ったんだけど、私ってずっとここで暮らすのかな? という疑問が。

 神殿側が何も言ってこないならいいけど……

 まぁ、神殿側が言ってきてもお兄様は侵入者の件で神殿側を突きそう。


 そんなことをぼんやりと考えていると、とつぜん食堂の扉が開きフレッド様が現れた。

 肩で大きく息をしているので走ってきたのかも。


「大変だ、ジル。竜王様が聖女様の面会に来た!」

 フレッド様の叫びに対して、私は手にしていたティーカップを落としそうになった。


 ――え、なんでレオ様が? 


 頭の中にハテナマークがいっぱい浮かんでくる。


 わざわざ来ていただいたのでご挨拶をと思っていると、お兄様がゆっくり唇を開く。


「追い返せ」

 淡々と言えば、フレッド様が苦笑いを浮かべた。


「わかっていたけどさぁ。さすがにマズいだろ。竜王様を追い返すのは。侵入者事件のことを知り、わざわざお見舞いに来て下さったんだし」

「絶対にルナ狙いだ。追い返せ」

「あー……たしかに聖女様のかわいさは噂になっているもんなぁ。しかも、絶対零度の皇帝溺愛だし」

「当然だ。ルナは世界で一番かわいい」

「気持ちはわかるけど、一応ジルも挨拶だけはしておいてくれ。皇帝として。聖女様。聖女様はいかがいたしますか? お会いしますか?」

「私もご挨拶いたします」

 私がそう言えば、お兄様が複雑そうな表情を浮かべた。







 +

 +

 +


 私とお兄様はフレッド様の案内のもと、レオ様が待つ部屋へと向った。

 レオ様がいる部屋は城内にある部屋でも王都を一望できる日当たりの良い場所。貴重な調度品が置かれた絢爛豪華な部屋で国外の来賓を招待した時などに使用している。


 ――なんか、緊張するなぁ。


 レオ様に会うのが数年ぶりだったため、私は鼓動が高鳴ってしまう。

 ちょっと落ち着いてから会いたいなぁと思う私の傍で、お兄様が扉を軽くノックしてしまった。


 えっ、早い!

 扉を開けてくれたお兄様に促され、私が部屋に入ればレオ様がソファに座っていた。

 彼は私を捉えると目を大きく見開いた。かと思えば、すぐに目尻を下げて微笑んだ。


「やっと会えたね」

 レオ様が立ち上がって私の前まで来れば、お兄様の不機嫌オーラが漂ってきてしまう。


「お久しぶりです、レオ様。あの時はありがとうございました」

「久しぶりだね。ずっと探していたんだよ。もしかして、君が噂の聖女じゃないかな? と思ってフロワ皇国に手紙を出したんだけど全く返事がなくて」

 処分していた犯人がわかった気がする。

 お兄様かも。


「襲撃されたそうだね。怪我していない?」

「はい。平気です」

「君が無事で本当に良かった……」

 そう言いながらレオ様が私の手を両手で包み込み微笑んだので、私は頬が熱くなってしまう。

 探してくれてだけでも嬉しいのに。


「おい、竜王。俺の妹に気安くさわるな」

「あぁ、ご挨拶がおくれました。はじめまして、お兄さん」

 レオ様は私から手を離すとお兄様の方を見た。

 温厚なオーラを漂わせているレオ様と氷のようなオーラを漂わせているお兄様は対照的。

 レオ様がにっこりと笑えば、お兄様の眉間に皺が刻まれていく。


「俺はおまえのお兄さんじゃない。ルナの兄だ」

「僕とルナが結婚したら義理の兄なのでお兄さんですよ」

「えっ、結婚!?」

 私は裏返った声を上げてしまう。


 ――待って。状況に追いつけない。


「ねぇ、ルナ。僕と結婚して」

「却下。まだ十二なのに結婚だと? 冗談じゃない。早すぎる」

 私の返事をする前にお兄様が答えたので、フレッド様の苦笑いが聞こえた。


「結婚は早いかもしれませんが婚約している貴族や王族はいますよ。お兄さん」

「……まぁ、婚約くらいなら認めてやってもいい」

「「えっ!?」」

 私とフレッド様の声が重なる。


 急な方向転換に頭が追いつかず。

 私とフレッド様は顔を見合わせてしまう。


「お前と婚約したらルナは大聖堂のあるファーレン共和国に行かなくてすむからな。利用させてもらう。ただし、結婚は認めない。俺より弱いやつにルナは渡すつもりはないからな」

 お兄様が腕を組みながらレオ様を見下ろせば、レオ様が数回瞬きをしたあと笑った。

 声を上げて笑っているので、私は首を傾げる。

 何がツボにはまったのかしら?


「……実にお兄さんっぽいですね。婚約でも構いません。いまのところはね」

 レオ様が不適に笑いお兄様と視線を合わせる。

 双方見えない火花を散らしているようで、ハラハラとしてしまう。



 数日後。両国の間で私とレオ様の婚約が正式に結ばれた。





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