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黒い杭

 月日が流れるのは早いもので私は十二歳になった。

 ループ前の記憶のとおり聖女の力も自由にコントロールできるようになり、結界の修復も楽々になった。


 これでお兄様を皇帝にする儀式もできるようになった。

 なので、さっそく準備を! と思っていた矢先、私はちょっとしたトラブルを抱えていた――



 早朝に王都を出発し、私は国境沿いのアルゴ村の山中を訪れていた。

 目の前では神官達が草を刈っているんだけど、その中心に黒い杭が地面にぶち込まれている。

 禍々しい魔力を漂わせているそれは、今月に入ってから国内で発見されるようになったものだ。


 これで三度目。

 どれも草むらや廃墟などの人の目に隠れる場所にあったので、もしかしたら見つかってないだけで他にもあるのかもしれない。


「また黒い杭かぁ……」

 私は地面に打たれている黒い杭を眺めながら言えば、隣に立っていたルビナスが険しい顔をしている。

 彼の傍にはマーガレットや神官達、それから護衛兵の姿もあった。


「しかも、術式が古いんですよね」

 ルビナスがかがみこみながら言ったので私は頷く。

 杭にはちょっと古い文体の文字が刻まれていた。

 文字を刻まなくても魔力を発動させられるんだけど、文字を刻むことによって魔力を隠すことができる。


「三百年くらい前に使われた文体じゃないかしら?」

「えぇ。しかも、陛下と同様に闇魔法を使う者ですね」

「お兄様以外で闇魔法を使う者って聞いたことがないわ」

 私は顎に手を添え、思案する。


 お兄様と同じ闇魔法使いが仕掛けたものか。

 もしかしたら、お兄様の闇落ちに何か関係があるのかも。

 ループ前には黒い杭なんて見たことがなかった。

 でも、私が気づかなかっただけの可能性もあるし……

 なんだろう、これ。


「とりあえず浄化します。それから、他にもあるかもしれないので国内全体を捜索するように指示して下さい」

 私がルビナスにそう言えば、「仰せのままに」と言い深々と頭を下げた。


 さて、さっそく浄化するかぁと足を進めれば、「ルナ」と背に声をかけられる。

 あれ? と思いながら振り返れば、そこにはお兄様とフレッド様の姿が。

 お兄様の傍には馬車と数人の騎士の姿もある。


「お兄様っ!」

 私が駆け寄ると、お兄様が微笑んで抱きしめてくれた。

 六年の月日が経ち、お兄様は二十歳に。

 もともと美しい容姿を持っていたけど、年を重ねたお兄様はとても魅力的な男性になった。

 そのため、諸外国のご令嬢や姫君達からの縁談が数多く舞い込んできている。


 フレッド様いわく、お兄様が私のところに通うようになって評価がうなぎ登りになったみたい。

 絶対零度の皇帝でも妹思いの優しい青年というイメージがじわじわ広がったそうだ。


「お兄様、どうしてここに?」

「ちょうど隣国からの帰り道だ」

 なるほど、国境沿いだもんなぁと私が頷けば、お兄様は真剣な眼差しで草刈りをしている神官達を見た。


「また、黒い杭があったらしいな」

「はい」

 ただの黒い杭ならいいんだけど、魔力を帯びているのがなぁ……

 不気味。あんなものが国内にもまだあるかもしれないなんて。

 あんなに禍々しいものを誰が何のために設置したのかわからない。

 ただ言えることはそれなりの力を持った者が意図しておこなったということだけ。


「ルナ、これからの予定は?」

「あれを浄化したら神殿に帰ります」

 本当はあちこち立ち寄って帰りたい。

 けど、用事もないのに聖女は神殿の外に出てはいけないことになっている。


「なら、ちょうどフランの花が見頃だ。見てから一緒に帰ろう」

 お兄様が言っているフランの花とは、ここ――アルゴ村特産の花だ。

 ちょうど今の季節が見頃。

 なので、見に来た観光客で村は賑わっている。


 フランの花は知っていたけど、見た事がないので見てみたい!

 でも、聖女の制約があって寄り道できないんだよね……


 肩を落としていると、お兄様が私に聞いてきた。


「ルナはどうしたい?」

「……見たいです」

「なら、見に行こう」

「えっ?」

 私は目を大きく見開きながらお兄様を見れば、頭上に大きな手が触れた。


「いつも頑張っているからたまにはいいだろう。神殿には俺から言おう。何も言わせない。護衛の面なら気にするな。俺が一緒にいるから」

「はい」

 私は大きく頷いた。


 神殿の外で花をゆっくり見るなんてしたことがないので嬉しい!

 それにお兄様も一緒だし。

 さっそく浄化してお花を見に行こうっと。


 私は黒い杭のところに向かうとそっと両手で杭に触れる。

 すると、手にピリッという静電気のようなものが走った。


「え、これって……」

 黒い杭を浄化するのは、これで三回目だ。

 でも、この杭はいつものと違う。

 だって、これ闇魔法に他の魔法も混じっている。


 しかも、私と同じ聖女の力だ。


「聖女様。どうなさいましたか?」

 急に動かなくなってしまった私を心配したのかルビナスが声をかけてきた。


「この杭、ほんのわずかですが私と同じ聖女の力も感じます。もしかしたら、他の杭と違って術を使用してから時間が経ってないのかも」

「聖女様と同じ力……まさか……」

 ルビナスが驚いた声を上げた。


 気持ちはわかる。だって、考えられないことだから。

 基本的に聖女は同時代に二人現れないはずだ。

 それなのに、なぜ聖女の力が?

 しかも、闇魔法を持っているなんて。




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