拝啓 転職しました(7)
あたりを見まわすと、なんとなく馬車で見たような景色だが…
こんなに近くにヴァイラル商会があることに気がつかなかったとは…
いや、むしろその存在すらを忘れて他の店で道具を買おうとしていたとは…口が裂けても言えないな。
「二人に話がある! 俺がさっきの店で買い物をしようとしていたことは口が滑っても言わないように!!」
「はい」 「?」
二人の反応に違いがあるな?!
これはあれか? 今はレイラに合わせた言語になっているからだ。
今度はシュリに向けて話してみる。
同じ内容を言ったら、ちゃんと返事をしてくれた。
これ少し不便だが、しょうがない。伝わるだけ良しとしよう!
さて。いこう!
ヴァイラル商会の扉を開けるとちょうどヴァイラルさんがいた。
うん!ちょうどいいタイミングだったみたいだ。
「いらっしゃい、おっふぁ!
えっとアラタくんっだったかね? だいぶ感じが変わったね。双剣がなかったら気がつかなかったね!」
「あぁ、すいません。さっき切ってもらって」
「いや、好青年と言った感じで、とてもいい感じだ!いつもそれくらいにしてると清潔感があっていいね。
ところで…そちらのお二人は?」
「あぁ。えーっと二人は…成り行きと言うかで、奴隷を買いまして…あのぉ、正式にハンターになろうと思いまして。二人にはその手伝いをと思っています」
「それは、いいね! 商人としては優秀なハンターが増えてくれることはありがたいからね。君くらいの実力があればすぐに高いランクに上がれるだろうね。そうなった時は何か仕事を頼もうかね」
「ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります。 それでなんですが…道具を色々と揃えたいと思いまして」
「それでわざわざ寄ってくれたのかね! アラタ君は意外と律儀だね。 わかった、色々必要だろうから協力しようね!!!」
「ありがとうございます。それで大変言いにくいのですが、あまり手持ちがなくて…正直に言うと金貨20枚と、ギルドカードに10枚入っています。受注の関係と当面の資金を引くとカツカツで…」
「あぁ!そう言うことかね。 さてどうしたものかね?」ヴァイラルさんはブツブツと考え始めた。
「20枚だと、完全にものを揃えることはまずできないね」
「はい。ある程度値段は把握していますので薄々はそう感じています」
「そうすると 方法は二つ、借金をしてものを揃えるか、足りないものを一時的に借りると言う方法もあるね。分割して買うと言う方法もあるが…まだ駆け出しのハンターのアラタくんに信用はないから、それはできないね」
信用か。たしかに俺のことを何も知らないヴァイラルさんがそこまでしてくれるほど、この世界も甘くないよな?
「はい。 あとできればあまり借金はしたくありませんね」
「そうすると…借りるだね。一番高いのは収納袋だろう。ちょうどいいものがある」そう言うとヴァイラルさんはカウンターの下からいちまいの革袋を取り出した。
「この前、冒険者から引き取ったものだが、まだ使えるだろう。これなら15日間金貨10枚で貸し出すよ。君ならオークですぐに払えるだろうし、うまく行けば新しい収納袋も購入できるようになるだろうね」
「ありがとうございます」微妙な条件のように思えるけど、他に方法もないか…。
「それと彼女たちの武器と私を含めて簡単な防具と服をいただきたいです。あとハンターの必需品みたいなものがあれば教えて欲しいです」
「そっちの子はハーフエルフかい? それでそっちが獣族となると…魔法使いと前衛かね?武器と魔法陣あと防具も武器屋に行くといい。いい店を紹介しよう。しかし防具も高いからね。はじめは武器だけになるだろう。鋼の翼のパーティを思い浮かべてもらえれば分かりやすいだろうかね?」
「あぁ確かにそうでしたね」ウイングさんはともかく、他の三人は大した防具をしていなかったな。
「まずは2人の服かね?あとは二人の道具を入れる革袋と生活用品をいくつか見繕おうかね」
「はい。よろしくお願いします」
ヴァイラルさんは何やら店の奥に行ってしまった。
《じゃあ二人とも、店の中で生活に必要なもの、欲しいものを持って来なさい》
「はい」「はいにゃ」
二人は店内の物色を始めた。
《あっ、あんまり高いものは買えないからな!すまんが…》
「安心してくださいにゃ。それぐらいは察していますにゃ」
「はい。わかりました」
さて、俺も少しみようかな?店内はそんなに広くはないが、カウンターのそばには魔法陣付きの道具があった。




