可愛い息子には旅をさせよ:01
セン、10才前後
出発前に父から「センなら大丈夫だろうけど、色々と気を付けてね」と送り出されたのを思い出す。
初めての旅が国をまたぐのはどうかと思ったが今後もこの活動を続けて行くなら必要な事だと言われ、既に実年齢以上の扱いをして来る親たちに対し特に疑問を抱かない様になって来た今日この頃。
センは隣国の関所、その門前にて空を仰ぎため息を吐いていた。
「貴様!姫様が何故他国からやって来たのか早く答えい!」
そう叫ばれながら四方から首元に槍を突き付けられ周りに衛兵が集まりつつある中でも出発前の記憶を思い出す程度には自分も凶器に慣れている。槍の恐ろしさを夫婦喧嘩で見て来た子供なので普通なら怯えて身が竦んでいる所をかつては万騎将を務めていた母の怖さを知っていると自然体で過ごせるぐらいである。
しかしそんな中でもちょうど返還対象であり護衛中の王女様と顔見知りであろう隊長格の暑苦しい壮年の衛兵がとてもうるさい。勧告を聞き流しつつ、こちらを囲み続ける者達の会話に耳を澄ませればどうやらこの衛兵は元々王族の護衛だったらしい。
護衛に失敗すれば僻地に飛ばされるのは大体の国で共通なのだなと納得している間にも興奮している衛兵がいつ拘束命令を出してくるのか注意をしながら、すでに離れた場所に移動させられていた王女様に解決策を持ち出す事にした。
「王女様、一つご提案があるのですが」
「セン様、一体何を…」
「ちょうど本来の護衛の方もいらっしゃるようなのでここで護衛の任を終わらせても良いでしょうか?」
「え…… そんな…… でも……」
王女様の年は確か十四と言っていただろうか。
旅の服装をしてはいるものの纏う雰囲気は柔らかくも上流の者が発する気品と力を感じさせ、相対した者に自然と経緯を抱かせる。自分よりも年上の彼女だが奴隷商人から買った当初は目に光が無くなり掛けており、慌てて解放の旨と快復の予定を立てたものだった。
そこから国に届けるまでが目的であり、それは国境を越えた時点で果たされただろうと言う考えをお互い持っているだろうと言う考えから出た問いだったが王女様は酷く動揺されて下さった。そして何故か引き留めたがっている様に手をもじもじと動かし、次いで衛兵がその様子を見て顔を真っ赤にして怒鳴り散らして来る。
「き、貴様ぁ!ま、ままままさかててて手を出した等と言った話は無いだろうな⁉」
「治療の為に若干肌には触ったが」
「貴様ぁぁぁぁ!」
「いい加減面倒だな……」
話が進まない。
とは言え事情を説明する為の手紙や迷惑料代わりの財なども既に王女様に渡してあるのでセンがここに留まる理由はもう無い。加えてこのままだと一時的だろうと牢屋に叩き込まれかねないのが予想出来るので逃げ出す事にする。
「衛兵長殿」
「っ! な、なんだ!?」
先程からうるさかったがそれでも職務を忘れてはいなかったらしい。
この切り替えが出来ねば守護など務まらなかったのだろうが少し心配し過ぎでは無いだろうか。
「後の説明はそこの王女様に聞いて欲しい。手紙と荷を持たせてある」
「な、何?」
困惑している様だがお構いなしに逃げる体勢に移りだす。
「は!逃すと思うか不審人物めが!」
「ここで捕らえられては困る。お邪魔した」
「なに!? 貴様動く、」
な、と続く間にまずは身を伏せ首の方位から逃れる。
慌てた衛兵長がひっ捕らえろ、と叫ぶ間にセンは既に槍衾から数歩駆けていた。
お、と誰かが呆ける間に道を駆け出し。
こちらを目で追いかけようと視線を巡らせている内にもう道の先に居る。
止まれ!と誰かが叫びだせば再び国境を越えていた。
暫く走り、追手が直ぐには追いつけないと確信した所で足を緩める。
脳裏に浮かぶは届けたと思いたい少女の姿。
多分あの暑苦しい衛兵長であれば対応出来ているだろう。
とは言え勢い任せで逃げ出して来てしまった事をセンは今更後悔し始めた。
治療の際に家名なども告げてから行っていた為に話されれrば即座に自分に届くだろう。
今となっては家に帰るしか無いのだが。
「父上の言った事は正しかったな……」
そうして呑気にぼやきながら走るセンは行きの数日を半日で帰り。
家族に最後まで送らなかった事を怒られ、むしろ王城に乗り込んで置いて帰る位でも良かったと言われ、センは今度からそうしようと考える様になる。
そうして数日。
隣国より婚約話が舞い込む事になる。
句読点の使い方を忘れかけています。




