お届け者:03
とある日の一幕。クマ―。
書き方は思いつき次第なので隙間を埋めていくスタイルになるかと。
良ければ続きをお待ちください。
とある王女と皇女の会話。従者付き。
「私は先輩と呼ぶ事を許されています!」
『そ、そんな』
「ふふん、家でしか会えない貴女よりも私の方が上なんです!」
『そそそんな、私は彼の事がす……す……』
「文章なのにどもるのは予想外ですよ!?」
「お二人とも、張り合うのはそれぐらいに……」
『そう言えば、テオちゃんはいつから好きだったの?』
「私も聞いた事がありませんでしたね。いつですか?」
「ひええ……」
***
冬の寒さも少し和らぎ、春が近付いて来た事を知らせるかの様に晴れ渡った青空を窓越しに眺めながら厨房へと向かっていたテオは玄関近くにセンが立っているのを見かけた。
彼の前には大きな木箱が置かれていて、それだけならいつもの事かと心に留め置くだけで通り過ぎるのだが今日は少し様子が違った。
「どうしたんですかセン様。難しい顔をしていらっしゃいますけれど」
「テオか」
「セン様宛の荷物ですか。送り主、は……」
渋面を作ったままの彼に疑問から声を掛ければ端的な返答が返って来る。
いつもの新商品だったり素材であれば喜んで解説してくれる彼なのだが一体どうしたのだろう。
そう考えながら彼の手に握られた伝票に書かれた送り主の名を見る。
「えっと、ガザット様からですか」
「ああ。だからこそ開封を躊躇している」
「今度はなんでしょうね……」
二人して諦念から遠くを見る目つきになってしまう。
ガザット様からは定期的にセン様が発案した物や新しい品々を贈って頂いている。
しかし、だ。
「今度は中身が国宝級じゃ無ければいいですね」
「迂闊に売れば何処かが破産しかねん物ばかりなのはどうしてだろうな」
「前は王族クラスでも迂闊に取り扱えない布が倉庫一つ分届きましたよね」
「まさか本当に送られて来るとはな……」
木箱を前にうーんと唸りながら思い出すは少し前の事。
とある日ガザット翁から届いた大量の『魔布』とセンが名付けた布は魔法使いや魔術使いにとって喉から手が出る程に画期的で有用で便利なモノだった。
何しろ魔力の伝導率が凄まじく良い上に魔術の編み込み等も可能と言った優れ物であり、包帯として巻いた上から治癒魔法を掛ければ効果が増量すると言う結果も出た。
あの時は価値が解る者達が真剣に市場に出す危険性をセンに説いていたのを見た。
「セン様は一体ガザット様に何を言ったんですか?」
「魔力を通しやすい糸を使った布は作れないかと言っただけだが」
「それで作れちゃうあの職人さん達が凄いんでしょうか……」
「深く考えるな。それにあの布は我が家で使い切る。いや使い切りたい」
「でも定期的に届いてますよね?」
渋面を作り負け惜しみの如く発するセンに対しテオが言えば諦めた様に笑いながらセンが目の前の木箱に手を掛けながら言葉を繋げる。
「『職人の良い勉強になる』そうだ」
「わー……」
恐らく今回もそう言った物が届いたと思っている動きと共に開けられる。
しかし中身を見てセンが困惑した様に動きを止めた。
負の感情が無い驚きをそこに見たテオが不思議に思った所で近づけば箱の中身が見える。
テオもそこで動きを止めた。
「セン様」
「なんだ、テオ嬢よ」
苦笑しながらセンがこちらを向くのが横目に見えつつも今は許して欲しい。
恐らく次の言葉もわかっているのだろう。
「この子、私が引き取っちゃ駄目ですか」
「まあ、構わんだろう」
「ありがとうございます!」
箱の中に詰まっていた物。
恐らく本物の毛皮が使われ、特殊な加工が施されたのだろう。
その毛は見るからに触り心地が良さそうで、それはそれは見事な熊のぬいぐるみだった。
大きさはテオの身長ほどもあり、思わず飛びついてしまいそうである。
テオが狂喜する中センはポツリと「テディベアか……」と呟いていた。
***
センから取り扱いに関する注意等の説明を受けた後部屋まで熊のぬいぐるみを運んでもらい、お披露目の為にフィーを呼びつつ軽く用事を済ませる為に部屋を空けたテオが自室に帰って来るとそこには可愛らしい光景が広がっていた。
簡単に言えばこちらに背を向けたフィーが全身でぬいぐるみを抱き締めていた。
思わず声を掛けるのを躊躇いしばし扉を開けた所で立ち竦んでいると満足したらしく、扉から流れて来る冷気に気付いたらしい。少しむっとした顔を向けて来た所で誰に見られたのかがわかったらしく頬が少し赤くなった。
それを見たテオは先程自分がやりたいと思っていた行為を先にやられていた事を先にやられたのが少し悔しくもあったが同時に安堵感も得ており自然と気分も高揚する。
「……」
「えっと、フィー様」
「……」
「気に入ったんですね」
『悪い?』
「いいえ。とても良い傾向だと思います」
「?」
恥ずかしそうに慌てて筆を取った後にこちらの答えに首を傾げる姿を彼が見たならば何と言うのだろう。ついそんな想像をしてしまうぐらいにはテオは目の前の少女の事を心配していたらしい。
何しろ数ヶ月前までは廃人一歩手前まで追い詰められていた方なのだ。それが年頃の少女らしい行動が出来る程に快復したと言うのは誇って良い事だと思う。
それを全力でサポートして来たセンはきっと「俺は何もしていない。アイツが勝手に助かったんだ」なんて言うのだろう。テオは実際に似たような事を言われた記憶がある。
『これは一体なに?』
「熊のぬいぐるみです。リヒテンマイアー領製ですよ」
『だれから』
「ガザット様からセン様に贈られて来た物を頂きました」
「……!」
クスクスと思い出し笑いをしていれば相変わらずぬいぐるみに体を預けたままのフィーが筆を取って色々な質問を飛ばしてくる。まだ声を出すのは出来ないらしいが筆談にも随分慣れたようで大分書き方も険が取れて来た。
それに加えて感情に合わせて表情がころころと変わり続ける様は見ていて気持ちが良いし、存外表情に出る方だと言う可愛い事実も教えてくれる。
そして今は嫉妬だろうか、私がもらって来たのが少し気に食わないらしい。そしてその嫉妬を自分が持って良いものかどうかまで悩んでいるのも顔から知られてしまっている事を教えるべきだろうか。
そんな楽しみを覚えてしまった自分に少し呆れながらも同年代の友人とのお喋りを楽しむ。
「今回は試作品らしいですよ」
「!」
「他にも色々作れるみたいです」
「……!」
思わず、と言った具合に筆記具を取り落し、慌てて拾い上げるフィーを見て微笑みつつ今夜にでもセンに新しい物を頼む事になるだろうなとテオは予想する。
何しろこフィーが大きなぬいぐるみに埋もれる様はとても見事だった。
思わずセンに見てもらう為に記録術式を発動させる程には。
その後その事を知ったフィーが顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。
色々な作品を読みふけっていたせいで書くのを忘れていました。




