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分かち合うもの


 空が明るくなり、夜明けが来たのだと知ったティオは閉じかけていた目を開く。

 いつのまにか、オイザル草原にある小さな町に到着しており、そこには騎士団は集まっていた。馬から下ろされたティオは、すでにくたくたで、歩く気力さえない。

「……私は向こうでグレイハムに報告してくる。そなたは宿屋で休んでくるといい」

 静かにそう告げて、カルロットは行ってしまう。


 正直、もう歩きたくなかった。

 何も考えたくなかった。


 ルシェを抱きしめて、ティオはその場にうずくまる。泣けば、何かが変わるわけじゃない。それでも、涙が止まらなかった。泣かないと決めたのに。

 こんなにも大切だと思った人が居なくなるのが、悲しい事だったなんて。

「うっ……あぁっ、ぁぁ……!」

 その泣き声にルシェが目覚めたのか、目をくりくりさせながら覗いてくる。

「ピィ?」

 どうしたのと尋ねてくるように、ルシェはティオの頬を舐める。その瞳は、まだこの気持ちを知らない証拠だ。


 悲しい。寂しい。苦しい。会いたい。

 全ての感情が弾けそうだった。





「――――ティオ!!」

 


 とうとう幻聴まで、聞こえた。

 だが、それが次の瞬間、幻ではないのだと実感する。

「ティオ!」

「ティオっ!!」

 縋るように自分を抱きしめてきたのは、優しい温もりだった。ティオは目を開く。目の前にある光景を疑うように、焼き付けるように。

 自分を抱きしめる温もりは、間違いなくリラとエルバだった。

「――リ、ラ……?」

「えぇ、そうよ!」

 リラは泣きながら、ティオをぎゅっと抱きしめる。

「エル、バ……?」

「俺だよ!!」

 エルバがティオの頭を揉みくちゃにしながら、しっかりと抱きしめる。

「生きて……生きて、いたのっ?」

 やっと現実に戻って来たティオは二人を見据えた。彼らの体は所々が血で滲み、包帯が巻かれているが、それでも笑顔だった。

「あなたも無事で良かった……! 本当にっ、本当に良かったっ……!」

「心配したんだからな、ちくしょー!!」


 二人とも、生きていた。リラとエルバを置いて一人で逃げたことを何度も後悔した。

 もっと、別の良い案があったかもしれない。考えれば考えるほど、あの時残れば良かったと思った。


 それでも、今はただ嬉しかった。二人が生きていて、また会えた事が何よりも嬉しかった。それだけを感じたかった。

「うっ、わぁぁ……っ!! 良かった……良かったよぉ……っ」

 小さな子どものように泣きじゃくるティオを二人はずっと抱きしめてくれていた。間に挟まれたルシェは暫く首を傾げていたが、ティオ達から離れようとはせずにぴったりとくっ付いていた。




 暫く宿屋で休んだあと、二人があの後どうなって、どうして盗賊を討伐していた騎士団に保護されていたのかを聞かされた。

 盗賊団はエルバの言う通りに、ベルザス湿地帯で獲物が捕まらなくなると分かると、聖都とミオレミールの間で奪略を始めていたのだ。

 聖都から田舎の方へ向かう馬車や商人を狙い、彼らは襲っていた。その時、丁度、ティオ達を乗せ馬車が通りかかり好機と思った盗賊たちは襲ってきたのだ。

 そして、その中に、滅んだと言われている「竜」の姿を見つけ、売ればいい金になると見込んだ彼らは執拗に追ってきたのである。

 ティオが馬で走り去ったあと、暫くリラが弓矢を使って奴らを足止めしていたが、矢が無くなりかけて、追いつかれた時に、多くの馬の足音が一斉に聞こえてきたのだという。それは、ミオレミールの駐屯騎士団と聖都の中央騎士団が組んだ盗賊討伐部隊であった。

 奴らの動きを慎重に読んでいた駐屯騎士団団長のグレイハムは何かを追う彼らを中央騎士団と協力して挟み撃ちする事に成功し、多くの盗賊を束縛する事が出来たのである。

 それによって、リラとエルバは保護され、カルロットにティオとルシェの事を探してもらうように頼んでいたのだ。


 「大地の竜」の存在を知っていたカルロットはすぐにティオが逃げた方向を追いかけ、馬の足跡を辿ってやっとティオを見つける事が出来たのである。

 また、自分たちを護衛していた兵も傷を負ったが命に別状はなく、今は聖都の病院へと搬送されているらしい。

 カルロットはそのままティオ達の護衛任務に付き、ミオレミールまではグレイハム達が送ってくれた。 そこから休息をとりつつ、ティオ達は馬車で二日かけて、何とか無事にキエト村まで着くことが出来たのであった。


  




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