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当時はまだインターネットなんてなくて、色っぽい女子教師や人妻、女子大生がブラウン管の向こうで危ない目に遭う場面が、僕たちにとっては最大級の刺激だった。けれど、親と一緒にドラマや映画、あるいは『ウィークエンダー』を見ているときに限って、そういう場面は不意にやって来る。すると居間には妙な沈黙が流れ、親は急にチャンネルを変えたり、意味もなく席を立ったりした。あの気まずさだけは、たぶん同じ時代を生きた者なら誰でも覚えているはずだ。


まあ、それはさておき、授業中に谷口が向こうの席から僕に視線を送ってきて、口パクと身振り手振りで何かを伝えようとしていた。


何を伝えたいのかと思ったら、授業が始まる前に僕がこんな話をしたせいだった――


「なあ、谷口、お前『ヤマト完結編』見た? 雪と古代が正常位でエッチするんだぜ。すごいぜ。だからビデオ買ってもらっちゃった」


ところが、谷口は『宇宙戦艦ヤマト』自体を見ていなかったみたいで、雪にも古代にもピンときていない様子だった。


僕は自分でも恥ずかしくなるくらい調子に乗って、大げさに続けた。


「突然裸になって『いや〜ん、古代さ〜ん、赤ちゃんができちゃう!』なんて言いながら平日の真っ昼間から抱き合うんだぜ。くうっ、たまらねえなあ」と僕は卑猥な喘ぎ声を張りあげた。「ああっ、あんっ、谷口さん! ああんっ、いや、そんなところ、触らないでぇ……ひいい……やン、いやン、も〜う、ダメよ、そこは」


実際には、古代と雪が抱き合うシーンはほんの数秒しかなく、大したことはないのだが、中1の僕には十分刺激的だった。


「もう……ダメだって。谷口さん、その顔、反則だってば」


谷口が向こうの席から、口の動きだけで「大野、頼む、見せて」と必死にお願いしてきたので、その日の放課後か何かに見せてやった記憶がある。


また『TOKYOナンパストリート』っていうゲームを、谷口が川崎と一緒に僕の家にやりに来たことがあった。あいつらは、パソコンの中の女の子に声をかけて、どうやったら口説き落とせるか、真剣に考えていた。


でもさ、パソコンの中の女じゃなくて、生の女の子たちに声をかければいいのに、って思った。客観的に見ても、その方がずっと健全だし。


だけど、あいつらはそういうことにまったく気づいていなかった。ハハハハ、コイツらバカだ。顔を耳まで真っ赤にして、パソコンの画面の女に見入っていた。


なんだか、ちょっと気の毒だったな。


けど……ん? 待てよ。あれ、てェことは――俺もか?


彼らを見ているうちに、さーっと血の気が引いていくのが、自分でもわかった。


俺、コイツらと同じかよ。なんてさ。


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