↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/43

31

「お前が言ったんだってな」


廊下でそう言われて、僕は息を飲んだ。僕が先生に話したことを、誰かが彼に漏らしたのだと直感した。おおよその見当はついたものの、根拠のない勘にすぎない。


「あの野郎め」と心の中で毒づいてみたところで、どうにもならなかった。僕にできるのは、「これが世の常なんだ」と自分を諦めさせ、何も言わずにただ冷静さを装うことだけだった。


気まずい沈黙が二人の間に立ち込める。その静寂を破るように、彼がぽつりと意外な言葉を口にした。


「俺、お前に相談してたよな」


「え?」相談? 僕は目を丸くして彼を見つめた。返す言葉を探して混乱している僕に、追い打ちをかけるように彼の声が重なる。


「俺、お前に相談してただろ。カンニングが見つかった時」


頭の中が真っ白になった。何をどう答えればいいのかさえ分からない。言葉を失ったまま、僕はただ口を閉ざしていた。


彼はそれ以上追及することもなく、静かに教室へ入り、いつもの席へと向かっていった。帰りのホームルームが始まる直前で、逃げ出すこともできず、僕はその背中を追うしかなかった。


席に着いてからも、動悸は収まらなかった。麻酔をかけられたように視界がぼやける。すがりつくような思いでなんとなく彼の方へ目をやると、騒がしい教室の中で隣の生徒と笑っていた彼と、ばっちり目が合った。


その射抜くような冷たい視線に、僕は思わず目を伏せた。金縛りにあったように身動きが取れない。


胸の奥で、小さな絶望が渦を巻いていた。もう、取り返しがつかない――。


明日からの日常が、音を立てて崩れていく気がした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。