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「お前が言ったんだってな」
廊下でそう言われて、僕は息を飲んだ。僕が先生に話したことを、誰かが彼に漏らしたのだと直感した。おおよその見当はついたものの、根拠のない勘にすぎない。
「あの野郎め」と心の中で毒づいてみたところで、どうにもならなかった。僕にできるのは、「これが世の常なんだ」と自分を諦めさせ、何も言わずにただ冷静さを装うことだけだった。
気まずい沈黙が二人の間に立ち込める。その静寂を破るように、彼がぽつりと意外な言葉を口にした。
「俺、お前に相談してたよな」
「え?」相談? 僕は目を丸くして彼を見つめた。返す言葉を探して混乱している僕に、追い打ちをかけるように彼の声が重なる。
「俺、お前に相談してただろ。カンニングが見つかった時」
頭の中が真っ白になった。何をどう答えればいいのかさえ分からない。言葉を失ったまま、僕はただ口を閉ざしていた。
彼はそれ以上追及することもなく、静かに教室へ入り、いつもの席へと向かっていった。帰りのホームルームが始まる直前で、逃げ出すこともできず、僕はその背中を追うしかなかった。
席に着いてからも、動悸は収まらなかった。麻酔をかけられたように視界がぼやける。すがりつくような思いでなんとなく彼の方へ目をやると、騒がしい教室の中で隣の生徒と笑っていた彼と、ばっちり目が合った。
その射抜くような冷たい視線に、僕は思わず目を伏せた。金縛りにあったように身動きが取れない。
胸の奥で、小さな絶望が渦を巻いていた。もう、取り返しがつかない――。
明日からの日常が、音を立てて崩れていく気がした。




