↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/43

29

谷口が描いていたシナリオ通りに、事態は進んでいるようだった。


もちろん、彼がカンニングしていたことを町村先生に告げたからといって、小山暁代が夜中に魅惑的なネグリジェ姿で現れるわけでもなければ、「おやすみ」と言ってキスをしにくるわけでもなかった。


その代わりに、休み時間になると彼は僕のところへやってきて、廊下で打ち明け話をしてきた。


「大野、俺、カンニングがバレたんだ」と、陰鬱な声で彼は告白した。


正直なところ、僕は告げ口をしたその後に何が起こるかなんて、ほとんど考えていなかった。自分の想像力がいかに貧しかったかを、その時初めて思い知らされた。ただし、小山暁代と結婚して、幸せな生活を送る未来を夢見るくらいの妄想力は持っていた。


彼女はショートヘアで、髪はブラックゴールドの輝きを放っていた。その輝きが後光のように、美しい顔を包んでいた。僕にとって彼女は、幸運の女神か、どこか宗教的な存在のようだった。


彼女への恋心が理不尽で一方的な妄想にすぎないことは、自分でもよくわかっていた。それでも、二人で過ごす夜を想像するたびに、口元が無意識に緩んでしまうのだった。


「なあ、大野、聞いてるのかよ!」


彼は両手をポケットに突っ込み、苛立った様子で言った。


僕は我に返った。


ほんの少し唇を開き、眉を上げて、「あ、うん、聞いてるよ」と間抜けな返事をした。けれど、そう答えたところで、彼の話はほとんど頭に入っていなかった。


こんなことになっても、告げ口をしたことを完全には後悔していなかった。でも、少しだけ後悔している自分もいた。もしあのとき、別の選択をしていたら――そんな思いが頭を離れなかった。


いつの間にかチャイムが鳴り、彼は教室へ戻っていった。


まるで、周りでは何もかもが先へ進んでいるのに、僕だけがそこに取り残されているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。