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谷口は、彼がカンニングしていたことを先生に報告するよう、僕に強く求めてきた。
しかし、正直なところ、どうしてそんなことをする必要があるのか、という気持ちだった。だって、谷口自身もカンニングしていたはずじゃないか。もちろん、テストを盗んだという仮定に基づいての話ではあるけれど。
谷口の言葉には「強い者を弱い奴らみんなで倒すべきだ」という理屈があった。だからなのか、僕の心の奥に閉じ込められていた、うまく処理することのできない何かが、今になって一気に噴き出してきた。
けど、ひょっとすると、それは坂の上の小学校からずっと彼と一緒だった谷口のほうが、もっと大きかったのかもしれない。きっとそうだ。
とはいえ、谷口はそう言いながらも、自ら手を下すことは一切なかった。
この時点で、僕は谷口の主張にも一理あると思いつつ、それをそのまま肯定することには抵抗があった。結局、これは単に正しいか間違っているかという問題ではなかったのだ。
ただひとつ言えるのは、僕は谷口のことを、ほんの少しだけ彼よりも好きだったのかもしれない、ということだ。これが投票だったなら、僕は谷口に一票を投じるだろう。
そして、その気持ちの根底には、小山暁代への強い思いがあった。F組のドアのところから、彼女が心配そうにこちらを見つめている姿が、ずっと頭から離れなかった。僕を突き動かしたのは、その光景だった。
僕が告げ口をしたことを知ったら、小山暁代が少しでも僕のことを気に入ってくれるんじゃないか。そんな思いが、心のどこかにひそんでいたのだと思う。




