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放課後、僕に近づいてきた奴がいた。
「大野」
僕は足を止め、谷口を見返しながらゆっくりとまばたきをした。その声には微かな響きがあり、どこか不穏なものを感じさせた。単なる呼びかけ以上の「何か」が込められているように思えた。
この日の出来事が、今の僕を形作っていると言ってもいい。いや、違う。もちろんそれだけじゃない。正確には、その日の景色がずっと心のどこかに居座っているだけなのかもしれない。
あのとき、こいつの提案に応じた自分の決断がどれほど愚かだったかを、今になって痛感する。振り返るたびに記憶の断片が脳裏によみがえる。
それでもあの選択をしてしまったのは、僕が彼よりも谷口に対して、わずかに特別な感情を抱いていたからなのかもしれない。そう自分に言い聞かせるしかなかった。たとえ、それが自分の求めているものでなくても。
"なぜなら、お前は彼女を愛していたのだから。そのうえ、愚かにもそれを口にできなかったのだから"




