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えっ、まさか、小山暁代がいるのに高木奈緒美に乗り換えるつもりなのか――そんなことはありえない。
僕の理想の道を歩いているのは、ただ一人、彼だけなのだから。
言ってみれば、彼は中一にして、僕が欲しかったものをすでに手に入れていた。なにしろ、小山暁代と付き合っていたのだ。
それなのに彼は、取り巻きを引き連れ、平然とした顔で高木奈緒美のいるE組の教室まで足を運んだ。
わざわざ見物するほどのことでもないはずなのに、人が人を呼び、廊下にはいつのまにか人だかりができていた。
――おい、嘘だろ。
彼のあとを追おうとした。だが、足が動かなかった。僕は廊下に立ち尽くし、ただ成り行きを見守るしかなかった。
連中は高木奈緒美を魅力的だと思っていたのだろう。少なくとも、僕にはそれほどの女には見えなかった。
ふと視線を感じて振り向くと、F組のドアのところから、小山暁代がこちらを心配そうに見ていた。
その姿を見た僕は、彼女のもとへ駆け寄り、「行こう、小山」と声をかけて、階段を駆け下り、どこか遠くへ連れ去ってしまいたいと思った。
だが、そんなことができるはずもなかった。僕以外には――もしかすると古手川は気づいていたかもしれないが――誰も気づかなかっただろう。小山暁代は、静かに教室の中へ戻っていった。
これほどまでに自分を無力だと感じたのは、初めてだった。
E組の教室では、太陽の光を浴びた高木奈緒美が、いかにも「ナオミよ」と言いたげに唇をすぼめ、意味ありげにウィンクしていたのかもしれない。どこからか、軽薄な口笛が聞こえてきた。
やがて高木奈緒美が笑みを浮かべて教室から出てきた。彼女は恥ずかしそうに彼の前を横切り、そのまま僕の前を通り過ぎて階段を降りていった。
結局、彼と小山暁代が別れるまで、それほど時間はかからなかった。
なんだか肩透かしを食ったような気分だった。




