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林間学校にどこへ行ったのかは忘れちゃったけど、着いたその日、旅館の部屋でくつろいでいたときのことだ。
彼が川崎に、一階のロビーにあるお土産屋さんで売られていたドライフルーツのあんずを買ってきてくれと頼んでいた。川崎は、先生に見つかったら叱られるから嫌だ、と言って断っていた。
「川崎、あんず買ってきてよ」
「ダメだってば」
僕は二人のそばにいて、そのやり取りを聞いていた。
「川崎、あんず買ってきてよ、ねえ」
彼は強い口調で、しつこく頼むんだ。
当然、川崎は「ダメだってば」の一点張り。
つまり、あの頃は、お菓子はいくらまでとか、お土産を買うのは最終日だけとか、水筒の中身は麦茶か水で、それ以外はダメとか、そういったことが法律のように決められていた。
あの飴のときと同じで、あんずを買って食べるなんて、とんでもないことだった。そんなことは考えられなかった。
それなのに、彼はしつこく言うんだ。
「川崎、あんず買ってきてよ」
「ダメだってば」
川崎も頑として譲らない。
とうとう業を煮やした彼は、「じゃあ、もういいよ」と言って、自分であんずを買いに行った。
戻ってくると、袋を開け、寝っ転がって食べ始めた。当時としては大胆きわまりない行動だった。
すると、川崎がどうしたかっていうと、彼に土下座して「ください」とお願いしていたんだ。僕はそれを見て、笑っちゃったというわけ。
それから、もうひとつ記憶に残っていることがある。
夜、布団に入って女の話をしていたときのことだ。就寝時間を過ぎていたので、そのうちC組の先生が見回りに来て、僕たちの部屋にも入ってきた。
みんなが寝たふりを決め込む中、それに気づいていなかったバカな谷口が、僕の横で布団を足で持ち上げながら、こう言った。
「でも古手川のオッパイ小さいからなあ……」
誰もが吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。だって、すぐそこに先生がいるんだから。
案の定、先生の声が飛んできた。
「谷口、うるさいぞ、早く寝ろ!」
みんな、笑いをこらえるのに必死だった。




