6.
窓が勢い良く開き、突風が吹いて思わず父に覆い被さり、私もギュッと目を閉じた。
「ユリアがこっちにぼくを呼ぶなんてどうかしたの、、って、ダニエル、、、。いつもなんかが悪さしてるから勝手に治してたけど、めちゃくちゃ酷くなってるじゃん!なんでもっと早く来ないだよ。」
と聞こえたましろちゃんの声に、目を開け起き上がり説明しようとして先を越される。
呆れた様な口ぶりであっという間に父を治癒魔法で包み込んだ。
光は少しの間留まり、やがて霧の様に消え、そこには血色が戻って目を閉じた父の姿。
治癒魔法では痩せた身体は元に戻らないので痩せたままだが、開きっぱなしだった口も閉じ、穏やかな寝息が聞こえる。
その様子にホッと息を吐きましろちゃんにお礼をと思って声を出そうとしたら遮られた。殿下に。
「フェンリル、、、、か??」
父を見てからうっかり忘れてたけど、居たよね!
殿下も坊ちゃまも、王宮治癒師に護衛の騎士たちも。
バレない様にって行動してたのにうーむと頭を悩ませる。
だめだ。全く働かない。
布ズレの音とカチャカチャと金属の音がした後
「聖獣フェンリル殿にご挨拶申し上げます。」
と声が聞こえたのでそちらを振り返れば全員頭を下げてる。
ギャッと飛び上がりそうな私を他所に
「そう言うの要らない。ぼくユリアの為に来ただけだし。ダニエルの事も好きだから治しただけだし。」
と興味なさそうに尻尾を揺らして父の上に乗る。
何故そこに乗る!
「ましろちゃんこっち。パパなんか苦しそうだし。」
私の膝を指差し、そして若干眉間に皺のよった父を見遣りながら言うと大人しく従ってくれる。
言いそびれてしまった感謝の代わりに精一杯撫でてあげる。
なんかどよめきが起きたけど、知らんぷりしてよよき?
「ユリア嬢がフェンリル殿の契約者であるとの認識で良いのでしょうか?」
皆んなが頭を下げたままの状態で殿下だけが話すが、チラチラ皆さんこちらを伺っているのはわかる。
神話やらに出てくる契約者のほとんどが神殿預かりで、聖職者として活動してたのは読んだから面倒な事にならなきゃ良いなぁ。
と明後日の方向に思考が飛ぶ。
キャパオーバーの頭は父の容体が安心できると目でわかるくらいになったので完全に今を認識するのを諦めたらしい。
そんな私は放置されたまま、ましろちゃんと殿下の話は続く。
「そうだよ。ぼくはユリアからましろって名前を貰ったからね。まだぼくも子供だけどフェンリルはフェンリルだ。ユリアに何かするなら容赦しないよ?」
とましろちゃんが答えれば
「とんでもない!たとえ神殿であっても聖獣の誓約者に対して無理強いは出来ません。今この部屋に居る我々が何かをするなんてあり得ません!」
と殿下が返す。
「あっそ。なら良いけど、でもいつまでもゆっくりしてる時間無いんじゃない?ぼくのパパとママがそろそろ神罰がってなんか言ってたけど。」
なんてましろちゃんがさらに言えば、室内に居る全員の顔から血の気が引いた。
それまで初めて見るフェンリルに興奮してる様な感じもあったから顔色の変化が凄かった。
「ん?ぼくのパパとママ?ましろちゃん逸れてそのままじゃないの??」
ポンコツになった私の頭は、この国の重大な危機をスルーして今それ聞くの?な質問をする。
丁度何か言おうとしていたらしい殿下が、口を開けた状態で固まってる。なんかすみません。
「ユリアに名前をもらった少し後に見つけてくれたんだ!まだマリアも居たし、ダニエルも居るけらユリアはここから動かない。もちろんぼくがユリアから離れるなんて契約がある以上絶対ないしやりたくない。名前を貰った事も含めてパパ達に話したら時々様子を見に来るって事になったんだ。」
へぇー。
メイド達の噂話の中にフェンリルの目撃情報ってのがあって一瞬ましろちゃんの事がバレたのかと思った事があったけど、よくよく聞けば成獣フェンリルの話だった。
まさかそれがましろちゃんの両親の話??
「ユリアが出ていくって言えば、パパ達も手伝ってくれるって話もあったんだけど、、、ぼくもしかして言ってなかった?果物はママからだったし、それをあげる時に言ったと思うんだけど、、、」
と自信なさげに尻尾が垂れてらっしゃる。可愛い!
じゃなくてどうだったかなぁ。
記憶を辿ってみてもちっとも引っかからない。
果物も貰って来たとは言っていたけど誰とか何処からかはは言ってなかったと思う。
「覚えてないな、、、。流石にパパフェンリルとママフェンリルの話が出て来たら覚えてると思うんだけど、、、。」
私も自信がなくて、うんうん唸っていると
「フェンリル殿!国に降るかもしれない神罰は今すぐすぐに降るのでしょうか!?」
また殿下達の存在、忘れてた。




