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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第二章:サレス、春の冒険祭り。
33/36

大天才魔術師ディーバちゃん、死す!?




「「死んだ…」」


強キャラ感と厨二秒全開な

自称大天才魔術師は

出会って数秒でリスキルされてしまった。


「ディーバ…イイ奴だったよ…」


とカリンバが思い出を振り返っていると

虎が喋り出した。


「勝手に人を殺すんじゃあない…

 ましてこの大天才のディーバちゃんをな〜!」


いや、喋り出したのは虎ではなく

虎の口の中のディーバちゃんだったのだ。


「「生き返った…」」


「そもそも死んでねぇし」


ディーバちゃんの足元を見ると

虎の長大な犬歯と

先程の板切れが数枚落ちていた。


「出会い頭に人の頭を齧るなんて

 礼儀知らずな奴だ…

 あの世で反省してな」


怯んでいる虎に向けて

ディーバちゃんが板切れを投げつけると

板切れはそのまま地面を滑り光出した。


そして何かの印を結ぶと同時に

虎の足元から無数の光の槍が突き出し

礼儀知らずなモンスターの肉体を

穴だらけに抉った。


「流石S級冒険者…『結界術のディーバ』ね。

 インサヌマン・タイガーを魔術で一捻りなんて」


「これが、S級冒険者…」


抉られた虎からは血飛沫が雨となって

辺りに降り注いだが、

透明な光のバリアに包まれ

誰一人濡れる事はなかった。


ローズブロンドの肩まである髪の毛先は

円を描くように丸まり

双眸はそれぞれが

シアンとマゼンタの輝きを放っており

俗にいうオッドアイである。


何処かアレキサンドライトという

昼と夜で違う色になる宝石を思わせる。


背は私とカリンバより低く

140cmあるかないかくらいだが

ローブと帽子のおかげで若干大きく見える。


「これで終わりか?」


「「ッグアアアアアアア!!」」


「ディーバ、後ろ!!」


「!?」


新手の虎が二匹現れ、同時にディーバちゃんに

凶刃を突き立てようと飛び掛かった。


「勁刃…《双角重閃》」


「!?」


「なになにっ!?

 なにが起こったわけさ!?」


ディーバちゃんに飛び掛かっていた虎二匹は

空中で三(・)枚(・)お(・)ろ(・)し(・)にされていた。


いや、やったのは俺だが。


「な、いつの間に私の後ろに…」


「サレスちゃんが瞬間移動した!?」


「もしかしたら刀が折れるかと思ったが

 存外すんなり斬れたな」


「え、ディーバがやったんじゃないの??」


「私は何もしてないぞ…驚いたな。

 ダイヤ並みの表皮を持つモンスターを

 それも魔法も

 エンチャントされてない剣で斬るなんて…」


そんなに堅かったのか。


言われてみれば

かなりの手応えがあった気がする。


「何故魔法を使っていないと分かったんだ

 ディーバちゃん?」


両目を左手で覆ったかと思うと

指を開いて右目だけ見えるポーズをして

ディーバちゃんは答えた。


「フッフッフ…我が魔眼は魔力の流れを…」


「ディーバはユニークスキルで

 魔力の流れが知覚できるんだよ」


「そういうのもあるのか」


「コラ!カリン!!

 人がカッコつけてる時に割り込むな!

 あと『ちゃん』をつけろ!!」


ドミナはユニークスキルで瞬間的に

膂力を上昇させていた。


ユニークの名に違わず人によって

全く異なる能力を宿すらしい。


「アラサーでその喋り方はどうなのよ?」


「まだ24だ!!

 年中おっぱい丸出しの

 痴女に言われたくないわー!!」


「丸出しじゃねーし!!」


幼い顔立ちをしているので

てっきり年下かと思っていたが

10才も年上の大先輩だった。


「てか敬語使えやカリン!!

 いや、敬語なんてどうでもいいから

 『ちゃん』はつけろコノヤロー!!」


「5個上の人に『ちゃん』とかつけられねーよ!!

 大体見た目だけ12才で

 止まってるとか反則だろーが!!」


「なんだと~!?

 そうやってすぐ幼女扱いしやがって…

 オラぁ!!」


「ひはひ!?

 ほっへひっはははいへほっー!!?」


「んはっ!?

 ほはへほほはへほ~!!」


互いのほっぺを引っ張り合って

ますます口撃を重ね合っていく

ディーバちゃんとカリンバ。


大変仲がよろしくて結構だが、

今はそれどころではない。


俺は取っ組み合う2人に近づくと

カリンバの胸当てを外して

晒された左乳にビンタをかました。


「その辺にしておけ」


「いってぇえええええええええ~~!!?」


「うわぁ、えぐい」


ビンタされた左乳を抑えながら

地面を転がりまくるカリンバ。


「先輩は敬うべきだぞ、カリン」


「そうだそうだ(小声)」


「サレスちゃんはアタシが

 先輩だって事忘れてね!!?」


あっ…忘れてた。


「…」


「やめてぇ!?

 右のおっぱい見ながら平手を構えるのやめて!?」


「私にも『ちゃん』つけろー(小声)」


「まあいい、これでメンバーは揃ったのだろう?

 はやくクエストをこなしてしまおう」


外された胸当てを抱き締めて

胸元を隠しながらカリンバは立ち上がった。


「ハイ、サレスさん…」


「『ちゃん』つけろー(小声)」


どうしてもちゃんづけで呼んで欲しいのか

小声で俺の背後から

カリンバに訴え続けるディーバちゃん。


帽子を持ち上げて頭を撫でてやると

ネコみたいな顔をして気持ちよさそうに

撫でさせてくれた。

毛並み?も悪くない。


カワイイなディーバちゃん…。


胸当てを着け直し

咳払いをしたカリンバは改めて

クエスト内容の確認と方針を決める。


「今回のクエストは

 この魔槍山脈一帯を覆う

 謎の濃霧の原因を調査し

 可能な限りこれを排除する事。


 健康被害は確認されていないが

 生態系の変化による人的被害が懸念されます。


 私とサレスちゃんは魔槍山脈の調査を、

 ディーバちゃんは村に張り巡らされた

 結界の調査と可能であれば修復を。

 村人からは魔除の効果だけでも

 維持されれば大丈夫との事です」


「任せておけ、この大天才が

 元の結界以上に強力な奴を

 張り直しておこう」


地図の1枚をディーバちゃんに渡すと

カリンは1つ深呼吸した。


「今回も誰も死なせないよ!

 私達も、村人も」


俺もディーバちゃんも頷き

それぞれの道へと歩みを進めた。




濃霧を割って山の中を進んでいくと

植物は青々と茂っているのに

生物の気配がまるでない事に気付く。


「ごめんね、サレスちゃん」


「どうした急に?」


「Eランク冒険者でも大丈夫だろうと

 思ってたんだけど、もしかしたら

 ドミナさんでも力足らずな

 クエストだったかもしれない…

 

 もし死んだら、アタシの事恨んでいいからね」


前を歩くカリンバの顔色は見えない。

だが声音が至って真面目な事は分かる。


「未知のドラゴンがいるからか?」


「…そっ。

 ドラゴンなんて本来は

 S級冒険者と拮抗するくらいのバケモノだからね」


「そうか…

 ではドラゴンを倒したらS級冒険者に

 なれるというわけか」


「え」


俺の発言に歩みを止め

此方を振り返るカリンバ。


「確かに君が強いのは分かるけど

 挑もうなんて考えない方が良いよ?

 それで何人も死んでるからね…」


視線を右下に向けるカリンバ。


「忠告ありがとう、だが…」


カリンバの両手を握って

真剣な眼差しで応えた。


「私も相手の実力が分かるスキルを持っている。

 本当に敵わないと思った相手には

 尻尾を巻いて全力で敗走してやるさ」


「…サレスちゃん」


「私は死なないから安心しろ。

 当然カリンも死なせない」


「…うん」


少しカリンバの瞳に涙が滲んだが

俺に背を向けて再び歩み始めた。


「…行くよ、サレスちゃん!

 早く解決してディーバとアタシとサレスちゃんで

 温泉にでも入りにいこ!!」


「あぁ、楽しみだ」
















「なあ、君。


 そろそろ起きたまえよ」


貴方は優しい女性の声で目覚めた。


貴方が辺りを見回すと


全身をゲーミングチェアに拘束され


壁一面が本棚で埋め尽くされた


書斎の様な場所にいる事に気付いた。


「〜〜!!」


声を出そうと思っても


何故か声が出ない。


それでも懸命に叫ぶ貴方に


背後から女性の声が響いた。


「無駄な事だ、君は君だけど君ではない。


 この世界で君が出来る事は1つだけだからね?」


そういって貴方の頬を撫ぜる柔らかい両の手。


彼女の温かな体温が伝わってきて


敵意が無いと直感する事が出来た。


続いて耳元で女性の囁く声と息遣いが


貴方の理性と鼓膜を震わせた。


女性から漂うキンモクセイの香りが


鼻腔を刺激し気分を落ち着かせる。


「私は…うん、チェシャだ。


 きっと長い付き合いになるよ」


何故だかチェシャの声を聞くと


脳みそが蕩けるような恍惚感に襲われる。


「早速だが、君にやって欲しい事がある。


 見えるかな?目次の左下のところ。


 パソコンから見てる”君”には右下だ」


世界に1人しかいないはずの貴方に対して


複数人に語り掛けるチェシャ。


彼女を信じて本当に大丈夫だろうか?


「『ブックマークに追加』ってあるだろう?


 まずはそれを押して欲しい…よし」


言われたままに操作すると


小窓が開き「ブックマークしました」と表示された。


「そうしたら、次は小窓の右上の✖︎を押して。


 これで元の頁に戻れる…そうそう。


 君は従順で本当に良い子だね…よしよし」


チェシャの小さな手に撫でられただけで


偉業を成し遂げたような充足感が得られる貴方。


もっと欲しい…!もっと満たされたい…!!


心に渇望が満たされていく。


「次で最後だよ、安心して簡単な事だから?


 そもそも身動きの取れない君に酷な真似を


 強いたりはしないよ?」


早く!どうか頭を撫でてくれ!!


「焦らないで?目次の真下に


 『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』


 って⭐︎が並んでいる部分が見えるだろう?」


見える、5つの星が並んでいるのが!!


「1番右端の⭐︎を押すだけだ、それだけ」


貴方は何の疑いもなく右端のボタンを押した。


そうするとチェシャは嬉々とした様子で


貴方の頬にキスをした。


「…ヒヒ、本当に素晴らしいよ、君は!!


 でもそろそろ時間かな…」


全身が沸騰するような


熱さと高揚を感じたのも束の間


貴方の意識は段々と遠のいて行く。


「…また会えるよ…私の物語の為に…」


チェシャの漆黒の髪が見える。


待って、君は一体…??



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